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【 1 】特集 「世界情報社会サミット(WSIS)報告」
                                       インターネット政策部 穂坂 俊之
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◆はじめに

2005年11月16日から18日まで、チュニジア・チュニスで世界情報社会サミット
(WSIS)のチュニス会合が行われました。新聞等マスコミでも取り上げられた会
合で既にその結果についてはご存じの方も多いとは思いますが、改めて会合の
結果についてインターネットガバナンスのトピックを中心にご報告いたします。

◆これまでのいきさつ

結果報告の前に、これまでの経過を簡単に辿っていきたいと思います。2003年
に行われたWSISジュネーブ会合に端を発したインターネットガバナンスの議論
は、2004年に国連事務総長配下のワーキンググループ(WGIG)を作り、そのWGIG
がインターネット資源管理を含むインターネットガバナンスの現状と問題点を
まとめた文書を発表し、その後2005年7月に最終報告書を上程するという一連
の作業を経ました。

この最終報告書の中では、現在ICANNが行っているルートサーバ、ドメイン名、
IPアドレスの管理の監視形態を今後どうしていくかについて複数の提案が行わ
れました。

そしてこの最終報告書を基に、サミット前の準備会合を経て最終文書の内容に
関する交渉が各国間で行われることとなったのです。

◆サミット本会合寸前の合意

準備会合では、米国が現在の管理体制を支持する主張をし、これに対しEUは政
府の責任・関与を高めるべきという提案を行います。一方途上国側は米国一国
がICANN監督機能を握っていることへの強い問題意識から、この状態を解消す
るよう求め、意見を一致させるのは非常に難しい状況となりました。参加者の
中には、決裂を覚悟した方もいらっしゃったようです。

しかし本会合前夜の最後の2時間でなんとか各国が最終文書に合意し、無事文
書を発表できることとなりました。

◆サミット最終文書とその内容

サミットの最終成果物として、情報社会の実現に向けた基本原則などを記述し
た「チュニスコミットメント」と、前回持ち越しとなった論点の議論の結果を
記した「チュニスアジェンダ」という2つの公式文書が採択されました。イン
ターネットガバナンスについて記述があるのは後者の「チュニスアジェンダ」
です。

これら2つの文書は、総務省から参考訳が提供されています。関心のある方は
一読することをお勧めします。

http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/051119_1.html

この「チュニスアジェンダ」では、以下の部分に注目すべきと思われます。
(総務省参考訳より)

  72. 我々は、国連事務総長に対し、開かれた包括的なプロセスにより、2006
      年第二四半期までに、マルチステークホルダーの政策対話のための新し
      いフォーラムの会合を開催することを求める。これをインターネットガ
      バナンスフォーラム(IGF)と呼ぶ。

  73. インターネットガバナンスフォーラムは、その作業と機能において、多
      国間、マルチステークホルダー、民主的、及び透明であるべきである。

  77. IGFは監督権限を持たず、既存の取極め、仕組み、機関や組織を置き換
      えることは行わない。しかし、それぞれを包括し、その能力を活用する
      ものである。IGFは中立で、重複することなく、拘束力のないプロセス
      に基づいて進められる。ここにはインターネットの日常的又は技術的運
      営は含まれない。

要約・解釈すると、以下のようになります。

・国際連合管轄でインターネットガバナンスフォーラム(IGF)を設立し、マル
 チステークホルダーアプローチで最低5年間維持する。

・IGFは既存の組織や取り決めなどを置き換えるものではなく、対話のための
  場である。

・議論の対象となっていたICANNの体制は、米国政府の関与を含めて当面現状
 のまま維持される。

実質は、WSISジュネーブ会合に引き続いて再度先送りされたということができ
るでしょう。ただ、米国一国支配という批判に対しては、次の文を入れること
で合意したので、ある程度途上国側としても納得できる結論になったというこ
とは言えると思います。

  63. ~各国は、他の国の国別ドメイン名(ccTLD)に関する意思決定に関与し
      てはならない。~

 69. 我々は、インターネットに関する国際的な公共政策課題に関して、各政
      府が同等の立場でそれぞれの役割や責任を果たすことを可能にするた 
      め、将来、拡張した協力の必要が生じることを認識する。

◆今後の展開

インターネットガバナンスフォーラム(IGF)は、2006年6月を目処にギリシャの
アテネで開かれることがほぼ決まっています。この初会合のアジェンダをどう
するか、参加の形態はどうするか、議長は誰が務めるのかなど、決めなければ
ならない事項は目白押しです。WSIS準備会合議長のKarklins氏、WGIG議長の
Kummer氏は先日行われたICANNバンクーバー会合の中で、「6月に第一回会合を
行うためには、その準備のための会合を3月くらいに行わないと間に合わない
だろう」との見通しを述べています。次の動きが出てくるのは、そう先の話で
はないようです。

実質的に先延ばしとなったインターネットガバナンスに関する議論は、今後
IGFに場を移して続けられます。来年も引き続き要注目の話題ですし、JPNICと
してもIGFでの議論に何らかの形で関わっていきたいと考えています。

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