━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 1 】特集 「JPNIC DRP検討委員会の取り組み シンポジウム『ドメイン名紛争のガバナンス~JP-DRPの現状と課題~』 開催報告」 JPNIC インターネット推進部 高山由香利 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2006年11月1日(水)、東京・田町のキャンパス・イノベーションセンターで JPNIC主催、立教大学ビジネスロー研究所協力にて、シンポジウム「ドメイン 名紛争のガバナンス~JP-DRPの現状と課題~」を開催しました。 2007年4月1日のADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)施行を 前にADR(Alternative Dispute Resolution)が注目される昨今、ADRの一つと言 えるJP-DRP(*1)に則り実施されているJPドメイン名に関わる紛争処理につい て、第一線の専門家の方々をお迎えし議論の場を持つことができました。 朝10時から夕方18時までと長時間にわたるイベントでしたが、活発な議論があ り大変盛況のうちに幕を閉じました。 ドメイン名登録に関係するJP-DRPですが、詳しくない方もいらっしゃるかもし れません。本稿では簡単にJP-DRPについてご説明します。 JP-DRPとは、不正の目的によるJPドメイン名の登録・使用があった場合に、権 利者からの申立に基づいてそのドメイン名を取消または移転するための紛争処 理手続のことです。 JP-DRPは、1999年10月にICANNにおいて策定された統一ドメイン名紛争処理方 針(UDRP)(*2)をモデルとしています。UDRP策定の背景には、インターネットが 飛躍的に発展・普及し、ドメイン名が識別子としての機能だけではなく商業的 な価値を有すると見なすユーザーが増えてきたことに伴い、.comや.netなどの gTLDの利用において、ドメイン名と商標を巡る紛争が国際的な問題に発展する ケースが見られるようになった状況があります。それらの問題に、裁判と比べ て低費用・短期間・簡易な手続きで対応するため、UDRPが策定されました。 その頃のJPドメイン名の状況は、「一組織一ドメイン名」や「ドメイン名の移 転禁止(*3)」の原則を採用してきたこともあり、ドメイン名紛争は顕著化して いませんでした。しかし一方で、これらの原則の緩和・撤廃を求めるユーザー の声が出てきたこともあり、それらに応えて移転の自由化や一組織が複数のド メイン名登録を可能とするためには、ドメイン名紛争の処理体制の整備を急務 とする認識が高まってきました。 そこで、JPNICでは1999年12月に「ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタ スクフォース(DRP-TF)」を結成し、JP-DRPの策定が進められました。途中、パ ブリックコメントの募集や理事会承認を経て、2000年10月より実施され今日に 至ります。(なお、このJP-DRPの策定に伴い、ドメイン名の移転は原則自由化 (*4)されています) 2004年11月には、それまでの裁定例を法学的見地から検討する専門家チームを 結成し、活動の成果を2006年3月にJP-DRP裁定例検討最終報告書(*5)として JPNIC理事会に提出すると同時に、JPNICのWebで一般向けにも公開しました。 この活動は、裁定例の検討のみならずJP-DRPの在り方を考えるきっかけとなり 、2006年8月にはDRP検討委員会を設立し、JP-DRP改訂などについて目下議論し ています。 このような背景の元、本シンポジウムの第3セッションでは、DRP検討委員会よ りJP-DRP改訂についての中間答申案を報告させていただきましたが、参加者の 皆様と活発な意見交換を行うことができました。同委員会ではシンポジウムで のフィードバックを反映した答申案を策定し、11月下旬にJPNICのWeb上に公開 して意見募集を行う予定です。より良いJP-DRPとするために、皆様からの忌憚 のないご意見をお寄せください。 ---------------------------------------------------------------- シンポジウム「ドメイン名紛争のガバナンス~JP-DRPの現状と課題~」 日 時 : 2006年11月1日(水) 10:00~18:00 会 場 : キャンパス・イノベーションセンター 国際会議室 プログラム (以下敬称略): Opening Remarks: 後藤滋樹、松尾和子 第1セッション: 「JP-DRPとは何か」 座 長 : 植村昭三 報 告 : 早川吉尚、島並良 コメント: 山田文、佐藤恵太 第2セッション: 「JP-DRPを巡る手続的諸問題」 座 長 : 花水征一 報 告 : 山内貴博、上野達弘 コメント: 矢部耕三、田中正治 第3セッション: 「JP-DRPの改革」 座 長 : 久保次三 報 告 : 丸山直昌、早川吉尚 コメント: 松尾和子 、道垣内正人 ---------------------------------------------------------------- (*1)ドメイン名紛争処理方針(DRP) http://www.nic.ad.jp/ja/drp/index.html JPドメイン名紛争処理方針 http://www.nic.ad.jp/doc/jpnic-00816.html JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則 http://www.nic.ad.jp/doc/jpnic-01055.html (*2)統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP) http://www.icann.org/dndr/udrp/policy.htm (*3)JPNIC NewsLetter No.8 「JPドメイン名の譲渡禁止」 http://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No8/sec022.html (*4)JPドメイン名紛争処理方針の新設および登録規則の改訂について http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2000/20000719-01.html (*5)JP-DRP裁定例検討最終報告書 http://www.nic.ad.jp/ja/drp/JP-DRP_team_finalreport.pdf