━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 1 】特集 「ICANNロサンゼルス会議報告」 インターネット推進部 高山由香利 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2007年10月27日から11月2日まで、米国ロサンゼルスにて開催されたICANN会議 に出席しました。 本稿では、今回の会議における主要トピックの内いくつかをご紹介します。 ◇ ◇ ◇ ◆WHOISに関するPDP 2007年3月のリスボン会議(*1)後に結成されたWHOISワーキンググループでは、 WHOISサービスに関する最終報告書(*2)内で提起された課題(OPoC (Operational Point of Contact)の役割や責任の明確化など)の検討を行い、8 月20日に報告書(*3)が提出されました。 また、GNSO評議会の要請により、ICANNスタッフからは10月11日に二つの報告 書(*4)が提出されました。一つは、WHOISワーキンググループの活動内容や各 部会のコメントと、ワーキンググループ以前のWHOISに関する活動についても 振り返る内容となっており、他方はワーキンググループによる勧告の実装を想 定した評価が記されています。この二つの報告書は、WHOISワーキンググルー プの報告書とともに、10月30日までパブリックコメントに付されました。 本会議中の10月31日に開催されたGNSO評議会では、前述の報告書の内容を受け て、WHOISのPDP(Policy Development Process:ポリシー策定プロセス)に関す る決議を行い、結果として、理事会に対してgTLDのWHOISに関する勧告を行う ことなくPDPを終了することとなりました。もちろん、WHOISに関する課題が解 決されたわけではなく、近い将来にPDPが必要とされるであろうことは認識さ れているため、WHOISにまつわる実情調査等が直ちに行われることとなりまし た。その内容によっては、新たなPDPを開始することも考えられます。 WHOISについては、登録者の情報公開を巡って意見が対立し、これまで長い間 議論が繰り広げられてきました。今回の決議でも、GNSO評議会内で三つの動議 が提出され、コンセンサスを得られることなく現在のPDPを終了するという決 議となっており、一筋縄では行かない議論であることを再認識させられまし た。 (*1)JPNIC News & Views vol.445 「ICANNリスボン会議報告」 http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2007/vol445.html (*2)Final Task Force Rreport on WHOIS Services http://gnso.icann.org/issues/whois-privacy/whois-services-final-tf-report-12mar07.htm (*3)Final Outcomes Report of the WHOIS working group http://gnso.icann.org/drafts/icann-whois-wg-report-final-1-9.pdf (*4)Final Staff overview of Recent GNSO Whois Activities http://gnso.icann.org/drafts/icann-staff-overview-of-whois11oct07.pdf Staff Implementation Notes on the Whois Working Group Report http://gnso.icann.org/drafts/gnso-whoiswg-report-staff-implementation-notes-11oct07.pdf ◆新gTLD導入に関するPDP GNSO評議会は、新gTLD導入に際しての原則、ポリシー勧告、実装に関するガイ ドラインなどを含む、新gTLD導入に関する最終報告書(*5)を2007年8月8日に提 出しており、この内容については、9月6日のGNSO評議会にて特別多数で採択 し、理事会に提出することを決議しました。 本会議の初日には、最終報告書に関する6時間にわたるワークショップが開催 され、内容について網羅的な確認を行った後に、コミュニティとディスカッ ションが行われました。参加者からは多くのコメントが寄せられましたが、中 でも、勧告6(新gTLDの文字列は、国際法の原則により認識されている公序良俗 に関して一般的に認められている法的規範に反するものであってはならない) と勧告20(応募のあった文字列に対して、当該文字列を登録するのに相応しい と思われるコミュニティから反対があると専門家パネルが判断すれば、その応 募は却下される)に対する否定的なコメントが目立ちました。反対意見が投じ られた理由は、公序良俗に関する判断は各国で捉え方が異なる問題であり、ま た文字列を選別することについては、ICANNが負っている技術的な役割を超え た、恣意的、政治的な判断を伴うため、これらが含まれる勧告は適当ではな い、という考えによるものです。 理事会は、ICANNスタッフに対して、勧告の実装に関する分析を進めるととも に、その内容を2008年1月の理事会までに、レポートにして理事会とコミュニ ティに提出するよう要請しました。 (*5)Final Report on the Introduction of New Top-Level Domains http://gnso.icann.org/issues/new-gtlds/pdp-dec05-fr-parta-08aug07.htm ◆ドメイン名テイスティングへの対応 ドメイン名テイスティングへの対応については、前回のサンファン会議(*6)に て、GNSOメンバーとICANNスタッフでアドホックグループを結成して情報収集 し、PDPを開始すべきかを判断することが決まりました。 その後、アドホックグループにより報告書(*7)が提出され、GNSO評議会にて検 討した結果、ドメイン名テイスティングに関するPDPを開始することが決議さ れました。是非が分かれる議論であるだけに、今後の展開が期待されます。 (*6)JPNIC News & Views vol.465 「ICANNサンファン会議報告」 http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2007/vol465.html (*7)Outcomes Report of the GNSO ad hoc group on Domain Tasting http://gnso.icann.org/drafts/gnso-domain-tasting-adhoc-outcomes-report-final.pdf ◆年次総会 - 人事について 3名の指名委員会選出理事が、本会議をもって退任することになりました。 2000年11月より理事会の議長を務め、インターネットコミュニティに多大な貢 献をしてきたVinton Cerf氏と、日本のコミュニティより選出された伊藤穣一 氏の退任はとりわけ印象深く、一つのエポックとなる会議であったと思いま す。新たな指名委員会選出理事には、Harald Tveit Alvestrand氏、Dennis Jennings氏、Jean-Jacques Subrenat氏が迎えられました。新理事メンバーの 経歴は、http://www.icann.org/general/board.htmlでご確認いただけます。 また、新体制となった理事会の議長には、ICANN創設時から関わりのあるPeter Dengate Thrush氏が選出され、Roberto Gaetano氏は引き続き副議長に選出さ れました。 ◇ ◇ ◇ ICANNロサンゼルス会議の報告会を、11月27日(火)13:30より秋葉原コンベン ションホール(東京都千代田区)にて、IAjapanと共催いたします。ぜひともご 参加ください。 □第20回ICANN報告会開催のご案内 http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2007/20071109-01.html