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                                          2009/06/19 第73回理事会資料
                                                                資料 1


               ICANNを巡る国際情勢とJPNICの基本的な姿勢(報告)

理事会の形式上、本件は「報告」となっているが、目的は「問題提起」であり、
次回以後の理事会での「審議事項」に発展することを想定している。

■1. 報告

  2009年4月24日、米国商務省電気通信情報局(NTIA)からのICANN共同プロジェ
クト合意書(Joint Project Agreement, JPA)に関する意見募集(添付資料5)が出
た。執行理事会ではこれに関して5月22日、29日、6月5日の3回にわたって審
議し(添付資料2)、結局添付資料3をJPNICの意見として送付した(6月9日 [jpnic
board 6311] にて報告済み)。執行理事会審議の過程で、

     この機会にJPNICのICANNに対する姿勢を再検討するための議論を
     行う必要がある。(2009年5月22日執行理事会)

という意見が出たこともあり、この理事会で問題提起を行ない、理事各位の議
論を喚起したい。

■2. 背景(添付資料4)

  米国商務省(DoC)は、インターネットの管理権限をICANNへ移管することを目
指した覚書(MoU)を1998年11月にICANNと結んだ。これは、その年の6月に米国
政府が出したいわゆるホワイトペーパー(*1)に示された民間主導によるインター
ネットの管理運営の思想の実現への一歩と見ることができる。JPNICはこれま
で一貫して民間主導によるインターネットの管理運営を支持する立場を取って
おり、その立場からICANNを支持して来たが、この立場をこれかも堅持するの
かどうか、再検討をしたい。また検討結果を理事会決議のような形で明確化し
ておくことが必要かも知れない。

註1 http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/domainname/6_5_98dns.htm
(日本語参考訳 http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/bunsho-white.html)

■3.問題提起

  議論のポイントとしては、次の諸点を挙げることができる。

3-1.民間主導によるインターネットの管理運営をJPNICは今後も支持するか?
    またその理由は何か。

説明:JPNICが民間主導によるインターネットの管理運営を支持する態度を初
      めて公式に表明したのは、ホワイトペーパー以前の1997年4月の
      gTLD-MoU署名であった(1997年4月16日開催理事会第17号議案)。それ以
      後この態度を変更する意見は出ていない。

3-2.「インターネットの最終的な管理権限は米国にある」とする米国政府の
    主張を認めるか?

説明:米国政府のこの主張はいわゆるホワイトペーパーの草稿であるグリーン
      ペーパー(1998年1月30日)で初めて現れた。根拠は、インターネット
      の発展の初期に米国政府の研究資金がインターネットの技術開発に投入
      されたから、というものであった。しかし、これらの研究資金は元々
      「ヒモ付き」ではなかったはず、と思っていた多くの人々にとっては、
      これは晴天の霹靂であった。インターネットの発展には、米国政府の研
      究資金によらない研究開発も多く貢献していたため、一部の人達はこの
      主張に怒った。多くの反論にも拘らず、この主張はホワイトペーパーで
      も変わらなかった。一方、当時IANA機能を担っていたJon PostelがDNS
      ルートゾーンの管理を一手に行なっていたことを独占禁止法違反で訴え
      ようとしている人々がいた。グリーンペーパーを巡る表の議論の裏では、
      アメリカ政府関係者とJon Postelを含むインターネットのパイオニア達
      が、この独占禁止法違反問題の対策にも頭を悩ませていた。米国の独占
      禁止法は非常に強いもので、一切の自然独占を認めず、連邦政府による
      委託事業のみを例外として認めているために、最終的にPostelを訴訟リ
      スクから救う唯一の手段は、「インターネットの管理権限は米国政府に
      あり、その権限を根拠にPostelに仕事を委託している、という枠組を作
      ることである」との結論に達したそうである(この話は、丸山は村井氏
      や当時.comの登録管理を担っていたNSIの上級幹部であった Donald
      Telage氏から聞いたもので、公開文書にはないが、多くの関係者の間で
      は公然の秘密らしい)。こうした事情もあったためか、結局多くの人は
      「インターネットの最終的な管理権限は米国にある」という主張を受け
      入れたかに見える。このような事情を考えると、JPNICの立場として

      (a)「インターネットの最終的な管理権限は米国にある」と認める
      (b)「インターネットの最終的な管理権限は米国にある」というのは米
         国独占禁止法を逃れるための便宜であるとの立場に立ち、本音では
         認めない、

      の二つの選択があると考えられる。どちらを取るのか明示的に議論され
      たことはない。

3-3.JPA(Joint Project Agreement)をどう考えるか?

  JPAは、「民間主導によるDNS管理についてICANNが充分な実績をあげれば、
ICANNに権限を移管する」という論理構造を持っている。この論理構造は「イ
ンターネットの最終的な管理権限は米国にある」という主張が前提になってい
る。先日の意見募集も、ICANNがJPAに定めるそれぞれの実績目標をどれだけ達
成したと思うかを問う設問も用意されていた。これらの設問に答えると、ある
意味で管理権限についての米国政府の主張を認める意味にもなりかねない。

3-4.ICANNはインターネットの管理運営を任せるに値するか?

  ドメイン名についてはgTLDに関する政策策定能力、各国ccTLD運用者との関
係構築、IPアドレスについてはNRO(Number Resource Organisation)との関係
維持、さらにルートサーバー運用者との関係などの諸問題に適切に対処できて
いるか、また民主的で効率的な組織運営ができているか、さらに組織としての
安定性、信頼性などの観点も含めて考える必要がある。

3-5.「乗っ取り(Capture)に対する懸念」をどう考えるか?

  ICANNが組織として乗っ取られて、期待される機能を果たせなくなるのでは
ないか、という懸念も時々話題に登る。外部の勢力、例えば特定の国の政府な
どによる支配と、特定の利害関係者が組織内部で過大な発言力を持つことによ
る実質的な支配、の二種の乗っ取りの可能性が議論の対象となっている。この
ような心配がICANNに無いと言えるか、考える必要がある。

3-6.「現実的な意味で米国政府が後ろ盾になっている方が安全」という考え方

  建前や理屈はともかく、現実問題として超大国米国が後ろ盾になっている今
の体制の方が安全、と考える人もいるようである。米国政府はこれまでのとこ
ろ、実害を及ぼすような影響力を行使してはいない、と考える人にとってはこ
れは意味のある主張である。しかし、本当に実害は無かったか?

■4.今後のスケジュール

  今日(6月19日)の理事会では、上記諸点を議論するには時間が不足してい
る。この問題を検討するための理事懇談会あるいは理事合宿を行なうことが必
要であろう。またJPNICとしてこの問題についての意思統一を図るためには、
理事会決議を行なう方が良いと考える。
            

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