2011/11/11 第4回DRP検討委員会 資料5 2011.11.11ドラフト gTLDにおける商標権保護に関してICANNにおいて施行中、及び検討中 の種々の施策を「.jp」に適用することの是非 (1) Sunriseとは、Trademark Clearinghouse(以下TCと略)に登録されている商 標権者が、一般登録より前に優先的にドメイン名を登録できる期間を設け るものである。 これに関しては、 .jp はすでに稼働しているので、Sunriseを改めて行うこと は意味を成さず、適用できないとの結論に達した。 (2) Trademark Claimsとは、申請ドメイン名がTCに登録されている商標と完全 一致する場合、登録者及び該当する商標権者へ通知が送られるサービスで ある。 UDRP, JP-DRPなど、ドメイン名空間における従来の権利保護の仕組みが事後 的な審査であったことに比べ、Trademark Claimsは事前審査の仕組みであり、 本検討委員会において検討する価値が充分あると認識された。しかしながら、 検討の結果、以下の諸理由により、導入は非現実的であるとの結論に達した。 - ICANNが予定している TCは世界中の国の商標を対象としているの対して、 JPドメイン名は日本居住要件を課し、日本における商標権等を保護対象とし ているので、ICANNのTCをそのまま使うことは適切でないと考えられる。 ICANN の TCの利用許諾条件の面から考えてみても、JPドメイン名用に使う ことがうまくできるとは考え難い。 - 日本独自のTCが必要となるが、ICANNの TCがすべての新gTLDで共有して使 うのに比べて著しく効率が落ち、レジストリ側の負担が過重になることが考 えられ、メリットに見合わない。 - TCに商標を登録する側から見ても、.jp だけのために料金を払うことはメリッ トに見合わないと考えられる。 - 既存のJPドメイン名登録者と、Trademark Claims採用後の登録者に不公平感 が出る。 - JPドメイン名の登録件数、紛争件数をICANN のgTLDの登録総件数、紛争総件数 を比較すれば、JP独自のTCの有用性は極めて低いと考えざるを得ない。 - 主要な企業は既に「.jp」下にドメイン名を確保しており、TCが提供する完 全一致の情報がどれだけ有効か疑問である。 (3) Uniform Rapid Suspension(URS)とは、商標権を侵害するドメイン名に対 して、UDRPよりも迅速に対応できる手段として策定されたシステムである。 UDRPが係争中のドメイン名に対してレジストラでの現状変更禁止措置を取るの に対して、URSはレジストリーでの現状変更禁止措置を採用する。このため、 UDRPで問題となっていた、提訴から現状変更禁止となる短時間内でのレジスト ラ変更による逃亡(いわゆる "Cyber flight")が、URSでは不可能となっている。 この点はURSのメリットであるが、JP-DRPにおいては元々現状変更禁止措置は レジストリで取られており、この観点からはJP-DRP改良の余地はない。 UDRPにはないURSのもう一つの特徴として異義申立の仕組みがあるが、これに 関しては、URSが未だ計画段階であること、ICANNとしてもURS導入から一年後 に評価を行うとしていること、URS導入についてのWIPOの動静も明確でないこ とから、現段階でURSのJPドメイン名への適用の結論を出すのは時期尚早であ るとの結論に達した。 (4) Post-Delegation Dispute Resolution Procedure (PDDRP)とは、不正な行 為を組織的に行うレジストリに対し、商標権保有者が当該レジストリを訴 えるための仕組みである。 ICANNにおいて多数の新gTLDが承認され稼働してゆく過程では、複数の不良レ ジストリが出現するおそれがあり、そのための PDDRPであると考えられるが、 一個しかない.jpのレジストリのためにPDDRPを制度化することを検討する必要 性は乏しいと考えられる。 (5) Thick whois(レジストリ集中型whois)の採用 従来のICANN gTLDでは、Thick whois、 Thin whois(レジストラ分散型whois) が混在していたが、今後の新gTLD募集ではThick whoisが義務付けられる。 しかしながら .jp は元々 Thick whois なので、この事項は検討の対象外であ る。 以上