1993/11/16 資料 1-4 議題番号: 93-010-S 議題: 「JPNIC会員ネットワークによるIPアドレスの割り当てに 関するガイド」の承認 決議内容: 添付資料にあるガイドの承認(執行は APNIC/InterNIC から 本プロジェクト用のブロック取得後となる) 付帯決議: タイプ: 簡易vote 審議開始日: 93/10/29 承認日: 93/11/05 担当者: 吉村 伸 (IP WG) ---------- 添付資料 ----------- JPNIC会員ネットワークによるIPアドレスの割り当てに関するガイド 1. はじめに 近年、インターネットに接続される組織の数は、世界的に指数関数的な増大 傾向を示しています。それにともない、それらの組織に対して割り当てられる IPアドレスの数も急速な勢いで増加しつつあり、近い将来次のような問題に直 面することが予測されています。 1. クラスBのアドレス空間の枯渇 2. ルータのルーティングテーブルのエントリー数の急速な増大により、それ を処理するための、ルータのメモリ等のハードウェア資源やルーティング 管理に関わる人的資源の不足 3. 現在の32ビットのIPアドレス空間そのものの枯渇 これらの問題のうち、1 および 2 は、比較的短期間の内に深刻化すること が予測され、3 に対する根本的な解決(IPngの仕様決定および運用開始)がなさ れるまでの間、CIDR( Classless Inter-Domain Routing )[1]と呼ばれる方式 を採用し、これらの問題に対処していくことがIESG ( Internet Engineering Steering Group )で合意されました。これを受け、JEPG/IP( Japanese Engineering & Planning Group/IP )のAddress Space TaskForceでも日本国内 でのCIDRにのっとったIPアドレスの割り当て、ルーティングの実現に向けて、 各方面との技術的な調整を進めてきました。またJPNIC ( Japan Network Information Center )では、文献[2]や文献[3]に基づき、CIDRを意識したIPア ドレスの割り当てを現在国内で行っています。 今後さらに、CIDRに対応可能な形でのアドレスの割り当てや、文献[1]や文 献[4]に述べられているCIDRのもとでの階層的なルーティングの管理の実現を 促進するために、JPNIC運営委員会では次のような新しいIPアドレスの割り当 て方式を検討しています。 すなわち、各JPNIC会員ネットワークの運営するネットワークに接続される 組織(既に接続されている組織もふくむ)にIPアドレスの割り当てを行うために、 CIDRに対応した連続したIPアドレスのブロックをJPNICが各ネットワークに割 り当て、そのアドレスブロックの中に含まれるネットワークアドレスの割り当 て作業を各会員ネットワークに委任するというものです。 今回、このIPアドレス割り当てのJPNIC会員ネットワークへの委任をすすめ ていくための第一段階として、今後さらに割り当て方式や委任可能な範囲の妥 当性に関して具体的な検討、考察を進めて行くために、IPアドレスの割り当て 作業のJPNIC会員ネットワークへの委任を部分的に行うパイロットプロジェク トを開始することが決定されました。 以下では、パイロットプロジェクトの概要と、これに参加するJPNIC会員ネッ トワークに委任されるIPアドレスの割り当て作業の範囲、また実際に割り当て を行う際に従うべき手順およびその他の注意事項とを概説します。 2. パイロットプロジェクトの期間 このパイロットプロジェクトの期間は1993年11月1日より1994年4月30日まで の6ヵ月間とします。 JPNIC運営委員会は、この期間が終了するまでに、パイロットプロジェクト 参加ネットワークにおけるIPアドレス割り当ての進行状況や、実際の処理を通 じて明らかになった問題点等を考慮し、5章以下に述べる方式を再検討し、 1994年5月1日以降のIPアドレス割り当ての方式を決定するものとします。 また、パイロットプロジェクトの期間中でも、JPNIC運営委員会が必要と認 めた場合には、5章以下の方式の変更を行うことができるものとします。期間 中に方式の変更があった場合には、JPNICは、すみやかにパイロットプロジェ クト参加ネットワークに対してその旨通知するものとします。 なお、期間中に割り当てを行ったIPアドレスに関しては、パイロットプロジェ クト終了以降にどのような方式を採用するかに関わらず、正式に割り当てが行 われたものとみなし、パイロットプロジェクト終了後も有効なものとします。 注意:パイロットプロジェクトに参加しているネットワークへ接続されない 組織に対するIPアドレスの割り当てをパイロットプロジェクト参加組織が行う 事は、一切禁止します。 3. パイロットプロジェクトへの参加 パイロットプロジェクトへの参加は、1993年11月1日の時点におけるJPNIC会 員ネットワークのみ認めます。また、参加申し込みの受け付けは1993年11月30 日までとします。 参加の承認は、会員ネットワークからの申し出を受けて、JPNIC運営委員会 での審議を経た後に行います。パイロットプロジェクトへの参加申し込みは、 別途用意するフォーマットを用いて行うものとします。 なおパイロットプロジェクトの期間中であっても、プロジェクト参加ネット ワークが、文献[3]により定めるものから逸脱したアドレスの割り当てを行っ ていることをJPNIC委員会が認めた場合には、その会員ネットワークのプロジェ クトへの参加を即刻打ち切り、以後そのネットワークに関わるアドレスの割り 当ては全て JPNIC が引き継ぎます。 4. JPNICによる、会員ネットワーク用アドレスブロックの割り当て JPNICは、パイロットプロジェクトに参加するネットワークのそれぞれに対 して、アドレスブロックを割り当てます。このアドレスブロックは、CIDRブロッ クとして取扱うことができる連続した256個のClass C (以下1ブロックと呼ぶ) を単位とします。各会員ネットワークがパイロットプロジェクトに参加をした 時点で、JPNICはそれぞれのネットワークに対して独立したアドレスブロック を1つ割り当てます。以後、各パイロットプロジェクト参加ネットワークに接 続される組織に対するIPアドレスの割り当ては、そのネットワークに割り当て られたアドレスブロックの中から行われます。 割り当てられているアドレスブロックが残り少なくなった場合には、JPNIC に対して新たなブロックの割り当てを申請することができます。新たなブロッ クの申請をいつ行うかは、すでに確保されているブロックの4分の3の割り当て が完了した時点を目安とします。アドレスブロックの割り当て申請は別途用意 するフォーマットを用いて行うものとします。 5. パイロットプロジェクト参加ネットワークによるアドレスの割り当て方式 今回のパイロットプロジェクトでプロジェクト参加ネットワークに委任され るのは、プロジェクト参加ネットワークに接続される組織に対する、Class C 2個までのIPアドレス申請の審議と、各ネットワーク用に割り当てられたアド レスブロックの中からのIPアドレスの割り当てです。2章に述べたように、接 続されない組織に対するアドレスの割り当ては一切行うことはできませんので 注意して下さい。 プロジェクト参加ネットワークは、希望組織からのIPアドレス取得申請 を文献[3]に示される規準にしたがって審議して下さい。審議を行う際に注意 が必要なのは、その組織の既取得アドレスの種類と個数も審議の際に検討しな ければならないということです。単純に新規申請アドレスの種類と個数のみで 審議して、割り当てを行ってはいけません。 すなわち、プロジェクト参加組織がJPNICによる審議を待つこと無く割り当 てを行えるのは、既取得アドレスと新規に割り当てられるアドレスとをトータ ルしたものを、文献[3]に示される基準と照らし合わせ協議した結果 Class C 2個以下に収まる範囲まで、ということになります。つまり、既取得アドレス を持たない組織に Class C 1つまたは2つを割り当てる場合と、既に1つClass Cを割り当てられている組織に対して、Class Cをもう1つ割り当てる場合の2通 りということです。ですから、審議を行う前には必ずJPNICデータベースを参 照して、申請組織の既取得アドレスの種類と個数を確認して下さい。なお、後 者の場合、新規に割り当てるアドレスとして、既に取得しているアドレスと CIDRとして連続したアドレスを割り当てられない場合には、既取得のアドレス を返還して、改めてCIDRに準拠した2つのアドレスを割り当てる事を申請者側 に推薦して下さい。ただしこれはあくまで推薦であって、強要する事はできな いものである事に注意して下さい。 審議の結果 Class C 2個以下の割り当てが妥当と判断され、申請組織との間 で合意が取れた場合には、あらかじめJPNICから割り当てられているアドレス ブロックの中からIPアドレスの割り当てを行って下さい。それ以外の場合は、 全てJPNICが従来どおり申請内容の審議を行いますので、JPNICに対してその旨 を通知して下さい。JPNICが申請内容を審議した結果、割り当てられるアドレ スが Class C を含む場合は、割り当てるべき個数を通知しますので、各ネッ トワーク用のアドレスブロックの中から割り当てを行って下さい。 判断が難しい場合として、申請組織が2つ以上のネットワークに接続される 場合があります。その組織が一つのネットワークのアドレスブロックに含まれ るIPアドレスのみを使用する場合は、これまでに述べた基準で割り当てを行っ ても問題はないでしょう。それ以外の場合で、2つ以上のネットワークに接続 されるような組織からの申請があった時は、プロジェクト参加ネットワーク側 での審議を行わずに、JPNICにその旨通知して下さい。 なお、審議を行う際の規範となる文献[3]は、最新の状況を反映させるため に内容が変更されることがありますので、常に最新のものを手に入れて、それ に従ってください。 申請組織に対して割り当てられたアドレスの通知を行う際に必ず、JPNICの データベースの更新申請をして下さい。IPアドレスの割り当てがJPNICのデー タベースに反映された時点で、その割り当てプロセスは”完了”したと見なさ れます。但し、JPNICデータベースの更新申請を受け取った時点で、そのIPア ドレスの割り当てが技術的な問題を起こすと認められる場合には、JPNICはそ のアドレスの割り当てを差し止めることが出来るものとします。 また、パイロットプロジェクト参加ネットワークへ接続される組織が直接 JPNICへアドレスの申請を行った場合、アドレスの申請をした組織が同意した 場合にかぎり、JPNICではその申請に関する審議を行うことなく、一旦プロジェ クト参加ネットワークへ申請内容を転送し、以後の処理はそのプロジェクト参 加ネットワークが行うものとします。アドレス申請組織が複数のネットワーク へ接続される場合には、どのネットワークからアドレスの割り当てを受けるか、 もしくは、受けたくないかは申請組織が選択する事が出来るものとします。申 請組織がどのプロジェクト参加ネットワークからもアドレスの割り当てを受け ないことを選択した場合には、JPNICは従来どうりの手順でその組織に対して アドレスの割り当てを行います。その際、特定のネットワークに割り当てられ ているアドレスブロックには含まれないアドレスの割り当てを行うものとしま す。 6. アドレス割り当て状況の報告 パイロットプロジェクト参加ネットワークは、5章でも述べたように、アド レスの割り当てを行った場合はいかなる場合でも、速やかに割り当てた内容を JPNICデータベースに反映させて下さい。JPNICデータベースへの割り当て済み アドレスの登録は、現在JPNIC内部で使用しているフォーマットをそのまま利 用して頂きます。フォーマットの提出は電子メールで行ってください。また、 2ヵ月に1度それまでに割り当てを行った内容のサマリーを提出して下さい。こ ちらも現在使用しているフォーマットがありますので、そちらをご利用頂きま す。 7. その他 本パイロットプロジェクトの進め方に関するいかなる疑問、質問がある場合に はJPNICに相談するようにして下さい。 参考文献 [1] V. Fuller, et al., "Classless Inter-Domain Routing(CIDR): an Address Assignment and Aggregation Strategy", RFC1519, Sep. 1993. [2] E. Gerich, "Guidelines for Management of IP Address Space", RFC1466, May. 1993. [3] JEPG/IP, Address Space TaskForce, 「IPアドレス取得に関する技術 ガイド」, Feb. 1993. [4] Y. Rekhter, et al., "An Architecture for IP Address Allocation with CIDR", RFC1518, Sep. 1993.