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                                                                  1993/11/16
                                                                  資料 3-4

このメモの status                                               JPNIC

このメモは、JEPG/IP Address Task Force が IP address の割り当て業務を
行っている JPNIC と協力し、申請者が IP address の申請を行う場合の参考
にまとめたものである。本メモは JEPG/IP が作成したものである。JPNIC で
のアドレス割り当て作業もこのメモに沿って行われる。

このメモは発行時における技術的動向などを考慮してまとめられている。諸般
の状況により随時改定されるので、IP アドレスの申請に当たっては、最新版
を参照されるように注意されたい。なお、少なくとも6ヶ月に一度は改定が行
われている。この文書の最新版は、nic.ad.jp:pub/jepg-ip/ip-adddr-tech.txt
で anonymous ftp あるいは mail-server@nic.ad.jp 宛の電子メールにより入
手することができる。

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                IP アドレス取得に関する技術ガイド
                           1993年11月12日版

                               JEPG/IP


この文書は、変更を行わない限り自由に複製、配布を行うことができます。ま
た、この文書に対するコメントは JEPG/IP Address Task Force

                address@crimson.kek.jp

まで電子メールでお送りください。


1. 前置き

この文書は、IP アドレスの取得にあたって、どのような申請を行ったら良い
か、申請者の立場に立って技術的な指針を JEPG/IP として示すものである。

世界的な IP インターネットでは、1993年に、IP アドレスの割当て方式が大
幅な変更となった。新しい方式は CIDR (Classless Inter-Domain Routing)
と呼ばれる。CIDR については、本稿末尾の文献を参照されたい。現在、JPNIC
等の IP アドレス割当て機関は、CIDR に対応した割当て方針をとっている。
より詳細に言うと、現在は以下の状況である。

i) RFC1466 では、「太平洋地域は 202.0.0.0 から 203.255.255.255 まで」
というように、地域によってアドレスの範囲が決まっている。日本では、
JPNIC にその一部が配分され、国内でのアドレス割当てに使われている。

ii) アドレス割当ての方式は RFC1466 に従っている。この詳細は 4. で述べ
る。

iii) インターネット(日本の、または国際的なインターネット)における、
経路制御技術が CIDR 方式に対応するようになるのは 1993年中頃と予定され
ていたが、実施は遅れている。これが実現するまでの間、この方式により割当
てられた IP アドレスを使ってインターネットに接続する場合、若干注意すべ
き点がある。これについては、5.  で述べる。

なお、さらに将来(3 - 5 年後)には、現在のプロトコル (IPv4) から新しいプ
ロトコル (IPng) が採用される。それがどのようなプロトコルになるかは決定
していていないが、いずれにせよ、現在の IP アドレスとはかなり異なる取り
扱いとなることが予想される。


2. 一般的な事項

2-1. IP アドレスは世界的に共有する有限の資源である。申請にあたっては、
本当に必要としているものだけとし、使う予定のない IP アドレスを予備とし
て申請することは厳に戒めるべきである。

2-2. 国内外の IPインターネットに参加するネットワーク、それらと何らかの
意味で IP 接続するネットワークなどでは JPNIC 等から正式に割当てられた
IP アドレスを使うべきである。そうでないネットワークにおいては、外部に
迷惑をかけない限り、私的に割当てた(JPNIC が正式に割当てたものでない)
IP アドレスを使っても構わない。その場合、私的な IP アドレスの経路情報
等の管理には十分気を付けなければならない。もちろん、IP インターネット
に直接参加しない組織であっても、正式な IPアドレスの割当てを受けること
はできる。

2-3. IPアドレスは、大学や企業などの単位で、取得することが原則である。
複数の大学、企業などからなる組織でひとつの IP アドレスを取得することは
可能ではあるが、ネットワーク団体等への参加の際に問題になることがあるの
で、参加予定のネットワーク団体と事前に相談しておくのがよい。


3. 将来予測

現在、IP アドレスの割当ては、申請者(組織)自身が将来のホスト数等の予
測を自己申告して、それに基づき割当てる、という方式を取っている。予測の
責任は申請者にある。Internet は世界中の人々が協調して作りあげている世
界であるので、自分だけのことを考えて、多目にアドレスを取ることは許され
ない。

ただし、予測はあくまでも予測であり、将来のホスト数等があらかじめ正確に
わかるものではない。現在、インターネットで取られている割当て方式では、
2年後という比較的正確な予測ができる将来について、その予測値に応じたア
ドレスを今割当てる、というものである。従って、2年後には、たいていの組
織では、IP アドレスが足りなくなるので、足りなくなりそうな時点で、再び
申請をしてアドレスを要求することになる。予測よりホスト数の伸びが小さく、
新規アドレスを必要としないケースもあるであろう。


4. アドレスの Class と個数の選択

IP アドレス(ネットワークアドレス部分)は、ネットワークに接続される計算
機類の将来的な台数や部局の分散状況等を予測して、Class および個数を選択
する。以下にのべるのは、RFC1466 に述べられている割当て方式である。

注意したいのは、CIDR 方式では、Class C アドレスの「たちのよい連続した
ブロック」*を 1 つのネットワークアドレスと見なすことができるため、イン
ターネット全体の経路制御方式が CIDR 対応になった時点では、複数個数の
Class C アドレスでも、不自由なく使えることになることである。この点を誤
解して、「Class B アドレスを取得しないと、インターネット接続ができなく
なる」という誤解に基づき、Class B アドレス申請する例があるようなので、
注意されたい。

* 注: 単に「連続している」だけでは駄目で、「2のべき乗個」であって「た
ちの良い境界」を持つ必要がある。N 個(N は 2のべき乗)の連続した Class C
アドレスのブロックが、たちの良い境界を持つとは、一番若いアドレスの第3
オクテットが、N で割り切れることである。たとえば、
192.47.210.0-192.47.211.0 の 2個のブロックは「たちがよい」が、
192.47.210.0-192.47.213.0 の 2個のブロックは、210 が 4 で割り切れない
ので、たちが悪い。


4-1. Class A アドレス

Class A アドレスの新規割当ては原則的には行われない。新規割当てを受ける
ためには、インターネットコミュニティ全体を納得させるだけの十分な根拠を
示す必要がある。

4-2. Class B アドレス

Class B アドレスの割当て基準は

        24か月後(2年後)の予測で、32 個を越える個数のサブネットを作る
        計画があり、さらに、
        必要アドレス数が 4096個以上のこと

である。

Class B アドレスの割当を受けようとする場合は、 Class B アドレスがどう
しても必要であることを示す技術的なプランを提出しなければならない。また、
この条件以外の理由で Class B アドレスを必要とする場合は、その理由を十
分に説明することによって割当てを受けることが原理的には可能であるが、実
際に割当てを受けることは困難である。


4-3. Class C アドレス

Class C アドレスは、2 のべき乗の個数ずつ割当てられる。従って、1, 2, 4,
8, 16個などというように割当てられる。

Class C アドレスも 24か月後(2年後)の予測ホスト数に基づき、割当てられ
る。RFC1466 には、24か月後の必要アドレス数を 256 で割った個数だけの
Class C アドレスを割当てる(たとえば、500個のホストアドレスがほしけれ
ば、Class C 2個分が割当てられる)と書いてある。

しかし、実際のアドレスの利用効率を考えると、たとえば、2年後に 500台の
規模になるネットワークでは、Class C 2個で運用するのは難しい場合がある。

そこで、一応の目安としては、2年後のホスト数を 60で割り算した個数を必要
な Class C アドレス数と考えることにする。これを、2のべき乗に合わせるた
め切り上げる。この 60 という数は、Class C アドレスの利用可能な部分の利
用効率が 25% 以上となるための目安である。

たとえば、現在 100台の TCP/IP で通信する計算機がネットワークに接続され
ている場合、年率 30% でホスト数が増加するという仮定のもとで、2年後には、
170台となる。この場合、Class C アドレス は(切り上げられて)4個が目安
となる。


4-4. 補足

上記の割当て基準は新規取得の場合だけである。既に取得した IP アドレスが
ある場合は、それと合わせて上記基準が適用される。

なお、CIDR は、2のべき乗個の連続した(しかも良い境界を持つ)Class C ア
ドレスのブロックを 1つのネットワークアドレスと見なす方式である。たとえ
ば、200.1.8.0 から 200.1.15.0 という 8つの Class C アドレスは見なせる
が、不連続なものや、2 のべき乗個でないブロック、また、200.1.10.0 から
200.1.17.0 のように良い境界を持たないものは、1 つと見なせない。JPNIC
は、現在、この条件を満たすよう、Class C アドレスを割り当ててているので、
JPNIC から新規に取得した Class C アドレスについてはこの条件を心配する
必要はない。しかし、過去に取得した Class C アドレスのブロックを使う場
合や、2回に分けて取得したアドレスの場合には注意が必要である。

既に IPアドレスをいくつか持つ組織が追加してアドレスを申請する場合、既
取得分を返却して、連続した大きなブロックを割当てるよう JPNIC に依頼す
ることもできる。この場合、既取得のアドレスを変更する手間はかかるが、管
理が楽になるし、経路情報も1つにまとめることができる。

特に、過去に Class B を取得したがその利用率の低い組織が、追加申請する
場合は、Class B アドレスを返却して必要な個数だけの Class C アドレスを
取得するような工夫をすることが望ましい。

また、同一のネットワーク団体に接続予定の組織の IP アドレスはなるべく連
続していることが経路制御上、望ましい。このため、それらの組織が同時期に
申請するときは、とりまとめて一括して申請することが望ましい。


5. インターネットへの接続

前置きで述べたように、CIDR 方式により割当てられた IP アドレスを使って、
日本または国際的なインターネットに接続する場合には注意すべき点がある。

現在のインターネットの経路制御方式は CIDR に対応していない。従って、
16個の連続した Class C アドレスのブロックを割当てられた組織が、そのま
まインターネットに接続すると、16個の経路情報を流す必要があり、これは、
インターネット全体の経路表管理に負担を与える。そこで、実際にインターネッ
トに接続する前に、どの程度の個数の経路情報を流してよいか、接続相手のネッ
トワーク団体とよく相談する必要がある。

ただし、JEPG/IP は、現在のルータの能力、経路情報交換に要するバンド幅、
及び経路情報の増加速度から見て、当面、一組織から流される経路情報の数に
制限を課す必要はないと考えている。しかしこのことは無論インターネットに
とって不要な経路情報を無闇に流してよいということを意味するものではない。
この判断は、当然、今後の状況の変化に従って変化し得る。

今後の状況の変化として考えられる最大のものは経路情報交換の方式の変更で
ある。すなわち、経路情報交換方式が CIDR に対応したものに変更になれば、
経路表管理にかかる負担は大幅に緩和される。その実現の時期はまだ流動的で
あり、日本国内で実施される時期は未定である。


6. サブネット

大きな組織においては、サブネット技術を適切に用いる(⇒文献 RFC950)こと
により、1 つのアドレスのみですませることができる。1 つのネットワーク内
では、サブネットもまた有限な資源であり、その効率的な管理が重要である。
サブネットの有効な管理のためのネットマスクの適切な設定方法は RFC1219
を参考にすると良い。

特に、3 つ以上の階層(たとえば、大学における学部、学科、研究室)を持つ
組織の場合、管理を容易にするため、各階層ごとにサブネットをまとめたブロッ
クを割当てることがあるが、このようにすると無駄なサブネットが多くなり、
必要以上のアドレスを必要とすることになる。従って、IP アドレスの管理に
おいては、組織内では2階層のみ(サブネットを集中管理するトップレベルと、
サブネットの割当てを受け、個々のホストにホストアドレスを割り当てるレベ
ル)として、割当てを行うことが強く要請される。


7. テスト用のアドレス

192.0.2 というネットワークアドレスは、IPインターネット上で「テスト用」
とされている。IPパケットの中継においては、このネットワークアドレスを含
むパケットは全て捨て去ることが望ましい。

ルータやワークステーションの製造会社は、出荷時設定の IP アドレスのまま
ネットワークに接続されて事故を起こす危険を減らすため、出荷時に、そのルー
タ等の全てのインターフェースの IPアドレスを、このネットワークアドレス
の1つ(192.0.2.1 など)にすることが推奨される。



* JEPG/IP (Japanese Engineering & Planning Group/IP)は、日本における、
IP インターネットの円滑な運用と発展を目的とし、そのために必要な技術的
な調査・検討と必要な事項の勧告を行なうグループである。1991年12月に発足
した。JEPG/IP は個別の技術的問題については、Task Force を生成し、各
Task Force が専門に検討を行う。Address Space Task Force は IP アドレス
に関する技術的問題について討議する場である。


付録 CIDR に関する文献

CIDR については、RFC1519, RFC1518 が基本的な文献である。また、RFC1466,
RFC1467 には CIDR による割当て方式と移行のスケジュールが詳述されている
ので一読されたい。

なお、日本語資料としては、IP meeting '92 の資料 (ホスト
ftp.riec.tohoku.ac.jp の pub/net/address-taskforce/CIDR*)がある。

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