資料2-3:
「j-phone-west.com」等4件に関するUDRP裁定事例の概要
(事件番号―WIPO:D2001-0786、「移転」裁定)
JPNIC:DRP検討委員会委員長
久保次三、2001年11月8日
-経緯-
- 申立人は、 日本において携帯電話ネットワークサービスを提供するとともに、 そのネットワークサービスに関わる製品を販売しているJ-Phoneグループを構成している日本法人である。
- 第二申立人は、1997年10月1日以降、 関係会社である第一申立人等に対して商標「J-Phone」の使用を許諾していた。 ただし、第一申立人の社名が現在の社名に変更されたのは2000年10月1日以降であり、 それ以前はJ-Phone Kansai Co Ltd、 さらに1999年9月まではKansai Digital Phone Coと名乗っていた。
- 商標「J-Phone」(本件商標)は、 2000年6月16日に第二申立人の名義で日本特許庁に登録されている。
- 登録者は、 本件ドメイン名を本件商標登録前の2000年1月11日に登録していた。 レジストラは、アメリカのNSI社である。
- 第一申立人がj-phone-west.comをドメイン名登録しようとしたところ、本件登録者により、 このドメイン名および「J-Phone」の綴りを含むその他のドメイン名が多数登録されている(申立人の主張によれば23件)ことに気付いた。
- 両当事者間で様々な交渉が行われ、その結果、 登録者は移転に同意したものの、 その後極めて高額の対価支払いを要求されたので、 申立人はその支払いを拒否し、 「移転」を求めてこのUDRP申立を行うに至った。
-裁定の概要-
- 登録者は、「J」は「Japan」の略称として「J-LEAGUE」、 「JR」のようにごく普通に記述的に使用されているものであり、 さらに本件ドメイン名を登録したときには、 「J Phone West Co., Ltd」という名称の会社は存在していなかったと主張した。 申立人は、 申立人が勝訴した2001年4月24日付の「j-phone.co.jp」ドメイン名に関する東京地裁の判決を引用し、 商標「j-phone」は日本国内で周知著名であると主張した。 パネル(3名構成)は、 本件商標登録および本件ドメイン名の登録以前に、 申立人が未登録商標「j-phone」についての権利を保有していたと認め、 さらに本件ドメイン名の要部は「j-phone」であり、 westは単なる付加に過ぎないので、 本件ドメイン名は本件商標に類似するものであると認定した。 この論点について引用された先行裁定例は、WIPO:D1999-0001、 D2000-0069、D2001-0645、 D2000-0339、D2000-0233の4件。
- 登録者は、本件ドメイン名を、 申立人の製品を取り扱っているCycle Plaza Shiaishiにrentingするために登録したものであると主張していたが、 パネルは、登録者がこのドメイン名に係る名称で取引を行っていた、 あるいはその準備をしていたとの形跡はなく、また、 この名称で広く知られていたとも認められず、 あるいは正当な非商用的使用・公正使用と思われる使用も無かったと認定し、 さらに、Cycle Plazaのこのドメイン名名称に係る権利についての立証も何らなされなかったとして、 登録者のこのドメイン名の名称に係る権利の存在・保有を否定した。
- パネルは、先行裁定例WIPO:D2000-0003、D2000-0869、 D2000-0615の3件を引用して、 不正の目的でドメイン名を登録した後に、 何らそれが使用されることがなかったとしても不正目的の使用と認定されうることがあること、 さらに、ドメイン名の登録と同時に不正目的の使用もなされているというふうに方針(UDRP)を限定解釈することは曲解であることを踏まえて、 本件の場合、申立人側から移転の申し込みがあったとしても、 2001年5月15日付の登録者代理人弁護士の書状において、 本件ドメイン名移転の対価として250万USドル、 またはドメイン名の使用を中止し今までの使用補償として80万USドルの要求を行ったことは、 ドメイン名登録に要した実費以上の対価取得を意図した転売目的のドメイン名登録であるとして、 不正目的によるドメイン名登録と認定し、 これら4件のドメイン名を第一申立人に移転するよう命じた。 3名パネリストの一致合意による裁定であった。
-裁定結果-
j-phone-west.com、j-phonewest.com, jphone-west.com、 jphonewest.comの4件の申立人への移転
以上