『インターネットと教育』に関する現状の認識と課題およびその解決方法
千葉大学教育学部附属中学校
ネットワーク管理者/情報教育非常勤講師
芳賀高洋
http://www.jr.chiba-u.ac.jp/
jtaka@jr.chiba-u.ac.jp
1.学校のWWW開設やガイドライン
1-1 現状
現在6500校程度の学校にてWebが開設されている。 教育委員会のサーバで一律に開設するケースが激増している。 1週間で100校以上程度のペースでWebが公開されている。 今年度中には1万校を越えることが予想できる。 7月初旬に調査した段階では、 全学校が公開しているページ数は40万ページ前後、 HTMLの容量は2Gbyte程度である。
1-2 課題
リンクを張ったサイトに許諾の連絡をおこなったり、逆に、 リンクを張られる場合に許諾を求める「リンクの許諾」を義務づけしている公立学校等があり、 将来、学校のWebの作成および公開上、 コストの増大等支障をきたす事態が予想できる。
リンク許諾も含め各学校や委員会で策定したガイドラインに勘違いや行き過ぎたものも見られる。 個人情報の保護も大事であるが、 過敏になりすぎてネガティブな対応にせざるをえない状況を改善し、 活発なWebの活用を推進する必要がある。
1-3 解決方法
組織としての体裁よりも子どもへの教育(校則のように子どもがガイドラインを理解できるレベルに押さえる)を考慮にいれ、 ガイドラインの見直しを1年に1度おこなうなど柔軟な対応をする。
今後ガイドラインを作成する必要がある学校や委員会向けに、 注意するべき点を抽出して提案する。
2 教員のスキル、教員の情報収集
2-1 現状
例えば、当校にて運営しているスクールテックMLは、 国内最大規模の初等中等教育関係者向けMLで、 現在約1000名ほどが加入している。 このうち約6割程度が現場教員と思われる。 月間約100名程度の加入者がある。 現在のところ教員と、企業、一般、 大学の方などが気軽にコミュニケーションを図り、 教員の疑問等にも、一般の方が優しく解答してくださっている。 昨年の10月から加入者が激増し、メール投稿数も増加している。 年内中に登録者は2000名を越えると考えられる。
某大企業のメールマガジンには数千名の学校教員と思われる登録があるようである。
また、最近簡単におこなった調査から、全国的には約1万名程度、 各種教育系のMLを利用している教員が存在するようである。 各地域の教員のコミュニケーションと興味は高まりつつあり、 現場も環境も整いつつある。
2-2 課題
環境が整っていても、現状では、 情報教育やインターネットに対する教員の興味の差が激しい。 人によっては「担当になってしまった」と悲しむ教員もいる。 インターネットの利用は、あまり使わない学校と、 とても使う学校の差が激しく、教員のスキル、知識の差も激しい。
現状では、 技術的な面でも興味をもっている教員が一人でもいる学校は、 その教員が、技術を磨き、工夫してコストをかけず、 ボランティアで対応し、高度な教育実践の成果をおさめている。 反面、 そのような教員がいない学校では情報教育や学校の情報化は全く進んでいない。 教育の内容面においても、学校間で、 かなりの格差が生じていると思われる。
前者の場合には、疲れがでていない現状では運営できているが、 ボランティアでの対応のため、将来、 疲れて実践をやめてしまう可能性もゼロではない。 また、外部組織等とのトラブルに巻き込まれた場合には、 対応できる体制は、現状では全くできていないと予想される。
2-3 解決方法
校内で委員会をつくるなど、身近な教員同士の協力をする。
全国レベルでの教員間の情報交換をますます推進させる。 手段はメーリングリストでもよい。
専門の教員を配置するようつとめる。
セキュリティ面では、 素人ではすでに手に負えないレベルにあるので、 できるだけ専門業者等と協力する。
ファイアウォールなどはとても高価である。 学校では手がでないため、 かなり割安のアカデミックプライスがないと難しい。 学校の市場規模は大きいはずであるので価格低下は不可能ではないはずである。
業者にも向き不向きがあるのでチェックをおこなう。
業者等に委託する仕事と、 学校がおこなう仕事の切り分けを早急におこなう。
3 情報教育について
3-1 現状
例えば、 中学校の技術科では、 ソフトウェアの使い方を覚える教育が中心となっている。 またプログラミング教育等で作品を作る作業が中心である。
3-1 課題
インターネットについては、教員は全くの手探り状態である。 インターネットに関連して、 生徒と学校の外との問題が発生した場合には、 学校の対応はとても遅れることが予想できる。 生徒達が、 将来情報化社会に対応できる力を身につけられる教育が必要である。
3-2 解決方法
他教科(他教員)との連携を鑑みた教育をおこなう。
- 教育で解決を図る部分とガイドライン(校則のようなもの)等で対処する部分、 企業や業者等に委託する部分を明確に区別する。 教育で解決する部分とは、シンプルに言えばユーザ教育であり、 そのためのカリキュラム開発をいそがねばならない。
当校の情報教育の例: ソフトウェアの使用等は最低限にとどめ紹介程度とし、 情報倫理教育を中心としてカリキュラムを組んでいる。 1台のパソコンを共有する上で、また、 自分がWebページを作成して情報発信する場合の「モラル」についても検討するが、 どちらかといえば、 ネットワークを利用する上での「安全教育」に近い内容を情報倫理教育として実践している。 対象は中学1年生である。
パスワードの取り扱いと自己管理が授業の導入となる。 その後、SPAMメールをうけとった時の対処方法であるとか、 被害をうけた場合の対処方法などについて、 インターネットに公開されている情報の判断等について検討する。
まとめ
以上のような現状の問題認識と、課題の解決をおこなうための、 現場教員を中心とした大規模なコミュニティ、研究会の発足を、 全国の教員の協力を得て準備中である。
参考URL
- 「インターネットと教育」
- http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/
- スクールテックメイリングリスト
- http://st.jr.chiba-u.ac.jp/
- 学校検索
- http://sagasu.jr.chiba-u.ac.jp/
- ちばふの情報教育
- http://tech.jr.chiba-u.ac.jp/