2001/12/06 総会 資料 4-1 JPドメイン名登録管理業務の移管およびICANNとの契約について 2001年11月16日 社団法人 日本ネットワーク インフォメーションセンター 目 次 1. はじめに 2. 「JPドメイン名登録管理業務移管契約」について 3. 「ccTLDスポンサ契約」について 4. 移管完了までに必要な手続き 5. 契約文書等の概要 5.1 覚書(JPNIC <-> JPRS) 5.2 再委任および契約手続き開始要請文書(JPRS -> ICANN) 5.3 ccTLDスポンサ契約(JPRS <-> ICANN) 5.4 JPドメイン名登録管理業務移管契約(JPNIC <-> JPRS) 6. 移管にともなう登録者、指定事業者の位置づけの変更 7. スケジュール(予定) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1. はじめに (社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は、昨年12月 の第11回総会の決議を受け、JPドメイン名の登録管理を行う会社である株式会 社日本レジストリサービス(JPRS)を設立し、業務移管に向けた作業を漸次進 めてきております。 この業務移管のために、JPNICとJPRS間における「JPドメイン名登録管理業務 移管契約」、並びに、JPRSとICANN間における「ccTLDスポンサ契約」の締結を 行う予定です。 この度、JPNICとJPRSは、これら2つの契約を結ぶにあたって、業務移管の基本 的事項に合意し、「JPドメイン名登録管理業務の移管に関する覚書(以下「覚 書」)」を締結いたしました。 今後、この覚書の内容を基本として、JPRS、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)および関係者(政府、JPNIC会員、国内イ ンターネット・コミュニティ、JPNIC/JPRS各指定事業者、JPドメイン名登録者 など)と連係をとりながら作業を進めて参ります。 現在、JPNICはIANA(Internet Assigned Numbers Authority、現在はICANNの 一機能)からの委任によりJPドメイン名の登録管理業務を行っています。「JP ドメイン名登録管理業務移管契約」は、JPNICが行っているJPドメイン名登録 管理業務をJPRSに移管するための条件を明確に規定するものです。また「cc TLDスポンサ契約」は、この登録管理業務の責任をICANNがJPRSに対して委任す ることについて明確に規定するものです。 今回の一連の契約の締結によって、JPRSへのJPドメイン名登録管理業務の移管 が完了するとともに、JPRSはICANNからJPドメインのccTLDスポンサ組織として の承認を正式に受けることになります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■2. 「JPドメイン名登録管理業務移管契約」について 2000年12月22日の第11回総会では、次の事項が決定されました。 - 汎用JPドメイン名の登録管理業務を行う新会社を設立し、汎用JPドメイ ン名の登録管理業務を移管する。 - JPNIC会員制度・会費制度を改めた上、新会社に属性型(組織種別型)・ 地域型ドメイン名登録管理業務を移管する。 この背景には、JPドメイン名ユーザーの利便性を向上させることを大きな目標 と位置づけ、汎用JPドメイン名を導入するとともに、予測される登録者の増加 に対応できる信頼性の高い登録管理業務体制を作る必要性があったということ があげられます。 JPNICは、上記の総会決議をうけ、同年12月、JPRSを設立しました。本年2月よ り導入された汎用JPドメイン名は、その方針策定機能をJPNICに置きながらも、 登録開始当初より登録管理業務はJPRSがJPNICの代行をするという形をとって おります。また、属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名についても、 JPNICからJPRSへの業務移管を見据えて、方針策定機能および登録料・維持料 徴収機能を除く登録管理業務の大きな部分をJPNICがJPRSに業務委託するとい う形をとっております。 この状況は、上に示した総会決議を具体的に実現するための措置と位置づけら れますが、これを法的な観点から有効なものとするのが、JPNICとJPRS間で締 結される「JPドメイン名登録管理業務移管契約」ということになります。 「JPドメイン名登録管理業務移管契約」は、JPドメイン名登録管理業務を JPNICからJPRSへ移管するための契約であり、移管にあたっての条件や移管後 のJPドメイン名の公共性を担保するための両当事者の責任などを規定するもの です。 なお、JPNICがこれまで担ってきた「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」 の策定、および、JPドメイン名紛争処理機関の認定の役割は、今後も引き続き JPNICが責任をもって維持していく方針でおります。他方、JPRSは、自らが登 録管理するJPドメイン名登録者に紛争が発生した場合、JP-DRPによる紛争処理 の裁定結果に基づきドメイン名移転等の処理を行うという位置づけになります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■3. 「ccTLDスポンサ契約」について 現在、IANAの機能を継承しているICANNは、ルートサーバ(ルートゾーン)を 管理する機関として、ccTLDを含むすべてのTLDのオーソリティとなっています。 各ccTLDを管理するスポンサ組織は、IANAの承認によりそのccTLDの委任を受け、 ルートゾーンに必要な情報が登録される形となっています。ccTLDスポンサ組 織は、ccTLDの登録管理とそのDNS運用の責任を持ちます。 これまで、IANAのccTLD委任は、地域コミュニティの合意とそれに基づく安定 的な業務運用を基本に実現されてきましたが、ICANNはこの関係を公式な契約 という形にすることを目標としており、各ccTLDに対して、「ccTLDスポンサ契 約」の締結をすることを推進しています。この契約により、ICANNそして各ccTLD スポンサ組織の責務と権限が明確になります。 現在JPNICは、IANAからの委任により、JPドメイン名の登録管理業務を行って いますが、業務移管をするという総会決定に伴い、ICANNとの「ccTLDスポンサ 契約」は、移管先であるJPRSが締結するものとの方針でいます。これを実現す るためには、IANAに対する再委任(redelegation)の要請も合わせて行う必要 があります。 これまで、ccTLDの委任やスポンサ組織の役割については、RFC1591やICP-1など で示されるように、その国や地域のインターネット・コミュニティの合意と利 益を基本に検討が行われてきました。他方、インターネットの社会基盤として の責任が増すにしたがい、政府が担う役割の明確化が求められています。その ような中、ICANN政府諮問委員会(GAC:Governmental Advisory Committee)は、 「政府諮問委員会(GAC)の提案によるccTLDの委任と管理のための原則」を2000 年2月に発表しました。GACの権能はICANN理事会への勧告ということになってい ますが、本年9月にICANNから公開された「モデルccTLDスポンサ契約書」は、GAC の原則を基本として構成される形となっています。 JPNICは、従来のインターネット・コミュニティの伝統を尊重しつつ、その中 で政府の役割と位置付けを明確にした「ccTLDスポンサ契約」の策定を進める という方針でいます。 この契約を締結することで、文書によって、JPドメインのccTLDスポンサ組織 としての責任と権限が明確になります。また、ルートサーバのJPドメインに関 する情報管理、安定したルートサーバの運用に努めるICANNの責務が明確にな ります。安定的なJPドメイン名の登録管理業務のためには、このICANNとの契 約が不可欠です。 なお、「ccTLDスポンサ契約」が発効するためには、JPNICとJPRS間の「JPドメ イン名登録管理業務移管契約」の締結が必要条件となります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■4. 移管完了までに必要な手続き ここでは移管に必要な手続きの流れについてステップごとに説明します。 1) ICANNへの意思の通知(JPNIC -> ICANN) JPNICは、JPドメイン名の登録管理業務をJPRSへ移管すること、並び に、JPRSとICANNとの契約を進める意思があることをICANNに対して通 知しました。(2001年2月1日) 2) 覚書の締結(JPNIC <-> JPRS) 今後の契約の基本的事項を合意するために、JPNICとJPRS間で「JPド メイン名登録管理業務の移管に関する覚書」を締結しました。 (2001年11月9日) 3) 覚書締結の報告(JPNIC/JPRS -> 政府) JPNICとJPRSは、政府に対して、JPNICとJPRS間で前項の覚書を締結し た旨の報告をしました。(2001年11月12日) 4) 再委任およびccTLDスポンサ契約締結手続き開始要請(JPRS -> ICANN) JPRSはICANNに対して、JPNICからJPRSへのJPドメインの再委任の承認 と、ccTLDスポンサ契約締結にむけての手続き開始を要請します。 (2001年11月予定) 5) 政府への確認(ICANN -> 政府) ICANNは前項の要請を受け、政府(ICANN政府諮問委員会日本代表)に 対して、その事実確認を行います。 6) 政府のエンドースメント(政府 -> ICANN) 政府は、前項のICANNの要請を受け、事実確認をした上、JPRSへの委 任およびccTLD契約の締結のエンドースメント(支持)をICANNに対し て表明します。 7) エンドースした旨の通知(政府 -> JPNIC/JPRS) 政府は、JPNICおよびJPRSに対して、前項のエンドースメントの表明 をした旨の通知を行います。 8) ccTLDスポンサ契約の締結(JPRS <-> ICANN) JPRSとICANNとの協議に基づき、JPドメイン名に関するccTLDスポンサ 契約の締結を行います。(2001年12月予定) 9) JPドメイン名登録管理業務移管契約の締結(JPNIC <-> JPRS) JPNICとJPRSとの協議に基づき、JPドメイン名登録管理業務に関する 移管契約の締結を行います。あわせて、JPRSは、データエスクロウ・ エージェントとの間でデータエスクロウ契約を締結します。 (2002年1月予定) 10) 移管完了通知(JPNIC -> 政府、JPRS -> ICANN) JPNIC、JPRSは、それぞれ政府およびICANNに対して、移管の完了を 知することにより移管作業が終了します。(2002年4月予定) 上記手続きを図示すると次のようになります: JPNIC JPRS ICANN 政府 │ │ │ │ ├────────→│ │ 1) ICANNへの意思の通知 │ │ │ │ │←──→│ │ │ 2) 覚書の締結 │ │ │ │ ├─────────────→│ 3) 覚書締結の報告 │ ├────────→│ │ │ │ │ │ ├───→│ │ 4) 再委任/契約締結手続き開始依頼 │ │ │ │ │ │ ├───→│ 5) 政府への確認 │ │ │ │ │ │ │←───┤ 6) 政府のエンドースメント │ │ │ │ │←─────────────┤ 7) エンドースした旨の通知 │ │←────────┤ │ │ │ │ │ │←──→│ │ 8) ccTLDスポンサ契約の締結 │ │ │ │ │←──→│ │ │ 9) JPドメイン名登録管理業務移管 │ │ │ │ 契約の締結 │ │ │ │ │ ├───→│ │ 10) 移管完了通知 ├─────────────→│ │ │ │ │ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■5. 契約文書等の概要 ここでは一連の文書の概要を説明します。覚書以外の文書は、契約交渉過程に おいて内容が変更となる可能性があります。 5.1 覚書(JPNIC <-> JPRS) 「JPドメイン名登録管理業務の移管に関する覚書」です。 「ccTLDスポンサ契約」および「JPドメイン名登録管理業務移管契約」を締 結するにあたって、あらかじめ関係者間で基本的事項の合意内容を確認する もので、以下のような項目が記述されています。 ・移管の目的 ・スケジュール ・移管対象 ・JPRSの責任 ・JPドメイン名の公共性の担保 日本のインターネット・コミュニティおよび全世界のインターネット・コミ ュニティの利益に適うようにJPドメイン名の登録管理業務を運用するという 原則が明記されています。また、JPNICが政府と協調して、JPRSの業務が適 切に行われているかを監視し適切でない場合には改善勧告や再移管ができる こと、JPRSがその責任を果たさない場合や破産・支払不能になった場合、新 たな移管先を選択することも明記されています。 5.2 再委任および契約手続き開始要請文書(JPRS -> ICANN) JPドメインの委任当初から今回の再委任の要請に至るまでの背景と経過を説 明し、現在JPNICに委任されているものをJPRSへ再委任することをICANNに対 して要請するとともに、あわせてJPRSとICANNとの「ccTLDスポンサ契約」の 手続きの開始を要請するための文書です。これを受けてICANNは関係者のヒ アリングを行い再委任の妥当性を検証するとともに、政府に対してエンドー スメント(支持)する意思があるかどうかの確認をとることになります。こ の要請が正当であるとICANNが判断した場合、再委任が承認されるとともに、 「ccTLDスポンサ契約」の手続きが進められることになります。 5.3 ccTLDスポンサ契約(JPRS <-> ICANN) JPRSとICANNとの間で取り交わすもので、JPRSとICANNそれぞれの責務と権限 が規定されます。今回の契約は、ICANNが公開している「モデルccTLDスポン サ契約書」がベースとなりますが、モデル契約書で示されているような三者 間関係(ccTLDスポンサ組織 (JPRS)、ICANN、政府当局)を規定するだけでは なく、この中でJPNICの役割・責任も明確に規定する方針でいます。具体的に は、覚書の第七条で示されている「JPドメイン名の公共性の担保」を政府と JPNICが協調しながら実現していくという方針で契約書(JPRS-ICANN間)の作 成が進められることになります。 主なポイントは次の通りです。 ・ICANNの責務 - JPRSをJPドメインのccTLDスポンサ組織として承認する - ルートサーバシステムの安定的な運用 - ネームサーバ情報を含むJPドメインに関する情報の更新 ・JPRSの責務 - 安定的かつ安全なネームサービスの提供 - 登録情報の第三者機関への預託(データエスクロウ) - ICANNポリシーの遵守 ・契約終了の条件 - 契約条件に違反したとき - JPNICと取り決めた遵守事項に違反したとき □ 参考資料 モデルccTLDスポンサ契約書 -三者間関係- 原文:http://www.icann.org/cctlds/model-tscsa-02sep01.htm 和訳:http://www.nic.ad.jp/jp/intl/organization/icann/20010902-model-tscsa.html 5.4 JPドメイン名登録管理業務移管契約(JPNIC <-> JPRS) JPNICがJPRSに対してJPドメイン名の登録管理業務を移管するための契約書 です。 この契約書には、業務移管に関する基本的な事項のほかに、覚書に記載され た「JPRSの責任(第六条)」や「JPドメイン名の公共性の担保(第七条)」 などの内容が盛り込まれます。他方、紛争処理方針の策定や紛争処理機関の 認定など移管後のJPNICの役割も記載されます。 また、移管に伴う資産の譲渡については、固定資産の価格は簿価を原則とし て、JPNIC-JPRS間の合意によって定めるものとなります。なお、JPドメイン 名の登録管理業務は公共からの付託に基づいて実施されるものであり、JPド メインそれ自体に関する財産権については、JPRSは主張しないという方針で 移管契約が進められることになります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■6. 移管にともなう登録者、指定事業者の位置づけの変更 JPNICと登録者の関係、並びに、JPNICと指定事業者の関係は、今回の移管とと もに変更されることになります。これに伴い、これらの関係を規定している以 下の文書を見直し、必要な改訂を実施することになります。 ・属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録等に関する規則 ・属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録申請等の取次に関する規 則 ・属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録申請等の取次に関する業 務委託契約書 ・汎用JPドメイン名登録等に関する規則 ・汎用JPドメイン名登録申請等の取次に関する規則 ・汎用JPドメイン名登録申請等の取次に関する業務委託契約書 ・JPドメイン名紛争処理方針 ・JPドメイン名紛争処理のための手続規則 JPドメイン名登録者は、移管後のスポンサ組織であるJPRSが制定する方針・規 則に準拠する位置づけとなります。また、申請窓口、お問い合わせ窓口および 登録料・維持料の支払口座などが、JPNICからJPRSへ変更となります。 登録申請等の取次をする指定事業者は、現在契約対象が2つに分かれておりま す(属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名の取次契約はJPNIC、汎用JP ドメイン名の取次契約はJPRS)が、これはJPRSに集約されることになります。 一連の改訂作業は、移管作業の一環として今後進められます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■7. スケジュール(予定) 一連の移管作業は次のようなスケジュールで進めることを計画しております。 2001年11月 9日 覚書締結 2001年11月16日 「JPドメイン名登録管理業務の移管およびICANNとの契約 について」ご意見募集開始 2001年11月30日 ご意見募集の終了 2001年12月 6日 JPNIC総会 - 移管計画の承認 2001年12月 ICANN・JPRS間のccTLDスポンサ契約締結 2002年 1月 移管契約締結 2002年 3月 JPNIC総会 - 移管契約締結についての報告 - ccTLDスポンサ契約締結と業務移管についての報告 2002年 4月 1日 業務移管の実施 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━