JPNIC 大阪セミナー(第 6 回 インターネットガバナンス研究会)議事要旨 日時: 2000 年 7 月 11 日(火)14:00-17:00 場所: 大阪 WTC ビル 20 F ソフト産業プラザ iMedio プレゼンテーションルーム 司会:NTT コミュニケーションズ(株) 長尾麻美 参加者:88 名 議事次第: 1. 開会挨拶 JPNIC 国際関係検討部会 主査 堀田博文 (財)大阪市都市型産業振興センター ソフト産業プラザ iMedio 所長 富永順三 2. 講演 JPNIC 国際関係検討部会 主査 堀田博文 資料「ICANN と私たち」に基づき以下について講演した。 ・インターネット資源管理の変遷 ・噴出してきた問題-資源枯渇、商標問題、体制組織 ・ICANN の誕生とその組織 ・現在のドメイン名に関する課題 ・gTLD 登録業務のオープン化 ・統一的紛争解決ポリシーの制定 ・.com に続く gTLD の導入 ・著名商標の扱い ・ASO, IPv6 ・ICANN の活動の特徴と一般会員制度 ・ICANN 理事の現状 ・JPNIC の紹介とその活動 ・ジャパン ICANN フォーラム ・グローバルな方針と国内施策の強調 ・ICANN 横浜会合 質疑 Q. 勝手に gTLD 登録を行っていた業者があったが、あれは何か。 A. gTLD は ICANN が一括して管理しており、業者が勝手に行っている ものできちんと使用できているものはないはず。 Q. DNSO, ASO, PSO は何の略か。 A. The Domain Name Supporting Organization、The Address Supporting Organization、The Protocol Supporting Organization の略。 Q. At Large Membership への日本、外国の登録状況は。 A. 世界全体で約 25,000人、アメリカで約 9,000 人、ドイツ約 5,000人、 日本約 4,000人。日本は世界で 3 番目の登録者数である。 なおこの人数は登録完了人数で、登録処理中の人数をいれればもっと多い。 3. パネルディスカッション「なぜ ICANN が必要か」 コーディネータ:NTT コミュニケーションズ(株) 荒野高志 パネリスト発表: 「一般会員成立の経緯」~なぜ「一般会員」が必要なの? アジアネットワーク研究所(ANR)代表 会津泉 「ICANN 理事選出の重要性とその取り組み」 JPNIC ICANN タスクフォースチャア 堀田博文 「ボトムアップ的アウトリーチとその意義」 (株)三和総合研究所 高橋明子 「市民活動と ICANN」 市民コンピュータコミュニケーション研究会(JCAFE) 浜田忠久 ディスカッション: ・JPNIC による日本のインターネット管理ルール作りは日本でどれだけ 支持を受けているのか - JPNIC のルール作りは、専門家がルール案を作成し、意見を受け 付ける場を用意し、その意見を反映させた案によってまた議論し、 決定している。この意見を募集するプロセスをいかにオープンに するかは現在検討中である。(堀田) - 昨年大きなルール変更を行った折には、東京、大阪で公聴会をひらいた。 また APNIC ではルール案に対する意見募集ではなく、ルールそのものの 提案を募集したところ、さまざまな提案があった。 このように各種ルール決定については、どんどんオープン化が進められて おり、JPNIC もその流れにのっていくことが必要と考えている。(荒野) ・cc セカンドレベルドメインの開放は、日本では行われないのか。 - 検討中である。今まで一社一ドメインに制限することで各種権利を 守ろうとしていた。これまではそれでうまくいっていたが、企業の 合従連衡、多様なサービスの提供などに不都合が生じてきている。 そこで jp セカンドレベルドメインの開放を検討しているところであり、 意見の募集なども行っている。(堀田) ・インターネットガバナンスにおける日本と外国との利害対立というのは、 具体的には何があるのか。 - とにかく理事としての立場を確保しておかないと後々困るだろう、という 立場はあるが、同時に理事を出して何をするか、ということが当然重要である。 アジア各国の国別 At Large 登録状況と、それぞれの国におけるインターネット ユーザ数とは比例していない。アジアで協力して一人の理事を出すことが 肝要であるが、現状では各国の意向を考慮せずとも選挙においては日本が 圧勝可能である。これでは禍根を残す恐れがある。(会津) - 欧米では企業のトップなどが ICANN の活動に出てきているが、日本では 企業からの参加が極めて少ない。そこでジャパン ICANN フォーラムを 作り、企業側の ICANN への参加を促した。しかし指摘の通り選挙人を 増やすことそのものが目的化してしまっていることは否めない。 これから、選挙人の質を上げる活動が必要と感じている。(堀田) - たとえば ICANN の登録ページは英語だけであり、これは英語圏に有利な 状況である。また IPv4 で世界を席捲している米国企業は IPv6 の普及に 消極的であり、日欧が本格的に IPv6 の普及に乗り出せば国益のために これを妨害してくる事態すら考えられる。 このように国々よって利害の対立は具体的に実存・潜在している。(荒野) - インターネットのルール作りは国別の対立という構図もあるが、それよりも 「コミュニティ」とよばれる狭い範囲の人々で恣意的にルール作りが 行われるという問題がある。これこそ問題にすべきではないだろうか。(会津) ・一般の人にとっては IP アドレスの割り当て方法など関係のない問題であり、 JPNIC の存在すら知られているものではない。 このようなことについて一般ユーザを啓蒙しなければ、ICANN の重要性を 認識してもらえないだろう。 - そういうことはきちんとやらなくちゃいけない、と考えている 社団法人としての JPNIC の責務であろう。(堀田) - エキスパートはエキスパート同士でわかるようにしか話さない。 今どんな問題があり、解にはどんな選択肢があり、一般ユーザに どのような影響があるのかということを、一般の人にトランスレータ として伝える義務がエキスパートにあるのではないかと考えている。(荒野) ・問題を把握し、日本の意見として何を伝えていくかを認識し、集約する場が インガバ研である。この研究会を通して、是非継続的にインターネット ガバナンスに取り組んでいきたい。(高橋) ・アジアのベンチャーが、アジア各国と協調して日本語や中国語などの ドメイン名を使えるようにした。これは各国の利害を調整しながら インターネットを発展させることができた例である。 このようにアジアで共同しながら問題を解決していくというスタンスを 日本もとっていくべきである。(会津)