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第7回  インターネット・ガバナンス研究会  9/6(水)

・井田  昌之

・IDA  Masayuki
  ご自身のWEBサイト
                 http://www2.sipeb.aoyama.ac.jp/~ida/ 
  ICANN立候補に関して感じていること
                 http://www2.sipeb.aoyama.ac.jp/~ida/icann.html 

  *質問に対するご回答
----------------------------------------------------------------
          ・         氏名 井田昌之
          ・         国籍 日本
          ・         E-mail  ida@sipeb.aoyama.ac.jp 
          ・         URL      http://www.sipeb.aoyama.ac.jp/~ida/ 
          ・         現在の役職 青山学院大学国際政治経済学部教授
          ・         職歴と過去の業績 ホームページを見て下さい。
          ・          http://members.icann.org/nom/cp/AP.html 
                記載以外のことで、特に補足したいこと
          ・    自身をユーザー、技術、ビジネス、一般的意見、研究、政府、知識所有権
                など、どの立場からの代表と考えるか
                大学人として。
          ・         ICANN理事会にどのように貢献したいか
                又、その具体的なプランはあるか?
                   バランスと段階的な移行
          ・         インターネット全体に対して、理事として、どのように貢献していこうと
                するのか?:国際的な協調と調停の経験をいかしたい。
                    インターネット技術を育てるために技術サイドの要件と
                    利用者にとっての利益のバランスを重視する。
          ・         又、その具体的なプランはあるか?
          ・         そのほか、自己PRなど


・メモ:ICANN立候補に関して感じていること

  井田昌之 2000/08/28 (09/03追記)

                                   http://www2.sipeb.aoyama.ac.jp/~ida/icann.html より

技術を技術者のみが設計し、提供し、それを一般人が享受するというモデルでは、現在のインターネット
の諸問題の解決とそれに付随した時代の前進には対応できないことは多くの人が認めるところとなってい
る。インターネットはそれに関わるひとすべてが自主的に意志決定し、多くを決め、それにしたがってい
くということは喜ばしい新しい時代の先駆として大きな意味がある。これを推進していかなければならな
い。

同時に、インターネット技術は、ちょうど既にできあがった商品に対してのように、どのような流通をす
るべきか、どのような市場を形成するべきか、どのような競争をするべきか、という自由経済において必
須といえる原理の対象としてしまうには、まだ技術が未成熟である、いいかえれば、まだ過渡的である、
ことにも留意する必要がある。 技術者はその日常の中から素朴な夢と素朴な判断を持っている。これを無
視してはいけない。政府という単位での活動を越えたグローバルな枠組が重要であるが、同時にそれは非
政府という同次元の概念でとらえられるものでもない。

インターネットガバナンスは重要であり、達成すべきゴールだが、いきなり、自由の海としてしまうには
未整備のことが多すぎる。 いさんで、今献身をしようとしている人達が失速してはいけない。その意味で、
インターネットをベースにした知識の共有と人類の英知の結集を信じる一人として、急速な自由化は、か
えって好ましくないと考える。順次の導入と、概念の公知/普及が不可欠である。これには対象が広いだ
けに時間がかかる。ICANNでなそうとしていることには、生活者/消費者の意志とビジネスの可能性、
そして文化を創造しようとする各個人の意志、技術的な可能性、がそれぞれバランスされたものでなけれ
ばならない。このためのブリッジ機能なら私ができることである。


◎具体的なエピソードに関連して
上に述べた文章は、誤解をおそれずに、しかし、極力集約して一文一文つめたものである。全体的な私の
考え方を述べるには、大変に膨大な文を作成しなければならない、それにはHTMLだけでは難しいと感じ
たからである。また、2週間しか在宅していないというこの夏の状況では、すべてを記そうという試みは
中途半端になることは目に見えていたからである。しかし、具体例がなくては、個別の事柄にどんな関心
をもっているのかを紹介することができないので、その文脈で以下の文を追加したい。


2000年9月1日の朝日新聞の一面に、次のような見だしをもつ記事があった。

        「ネットの住所わかりやすく    アドレスに日本語OK」
インターネットアドレスは、英字や洋数字、特定の記号に限定されていた。新しく受け付けるアドレスは、
名称に最大15文字程度の漢字、ひらがな、カタカナが使えるようになる。「あさひ.jp」のように日本人に
もわかりやすく、より短いアドレスで登録ができる。(私抄)

これへの意見を書いてみたい。

  研究の仕事と同時に、約20年間、情報リテラシーの入門教育に従事して来た。コンピュータの具体的な
操作法と同時に、情報空間に関する「世界観」が非常に重要だと感じて、その仕事をしてきた。インター
ネットは個が全体に直接さらされる場であり、しかも、それが変化する技術の中で、純粋な希望に燃えた
好奇心と共に、普通に生活するすべての人、一人一人の持つ技術理解度の向上が重要だと考えて教育にあ
たってきた。

  登録の管理をする団体がそれぞれ、懸命に工夫をして、利用者拡大とそのためのサービスに努めるのは
大変良いことである。けれども、問題は、人がそれを使うということである。「あさひ。JP」とか、「あさ
ひ。JP」という表記がされる可能性が目に見えている。「あさひ」という名称だけの登録であっても、利
用者が利用にあたって「アサヒ.jp」と書き、それではどうしていけないのか?と文句をいってくる図な
どまでも充分想像できる。普通の利用者には、これらが「正しくない」ということは充分な教育がないか
ぎりわからない。結果的に英語のみの世界で技術を表記することの効果があったことも否めない。このア
ナウンスの実施とともにこうしたことにどれだけ対応できるのか?

  おそらく、まったく考えられていないといことはないだろう。なんらかの技術サイドでのフィルタリン
グあるいは変換操作による同一化、あるいはもっと賢い仕組みが組み込まれるだろうと推理する。しかし、
それは「すべて」に行き渡るか?

  私が問うているのは、インターネットの普及は大きな福音を多くの人にもたらすが、その「多くの人」
の理解ということが伴っている技術のみが普及という最終ゴールを達成できるということである。

  旅の中でしたためた文章であるので、充分に推敲され、意を尽くしているとは言いがたい。また、HTML
としてのフォーマッティングもとりあえず作ったものである。しかし、このような形で非同期に意見の表
明とやりとりができること自身がインターネットの恩恵であろう。

  最後に、多少宣伝になるが、9月26日に情報処理学会で「インターネットとビジネス」という連続セミ
ナー2000第3回を開くが、その原稿としてまとめた、私の略歴を以下につけさせていただく。


井田昌之略歴:1951年東京生まれ。青山学院大学国際政治経済学部教授、工学博士。青山学院大学大学院
理工学研究科修了。同理工学部、同情報科学研究センターを経て、1996年より国際政治経済学部へ移籍。
  学部では国際経営学科、大学院では国際コミュニケーション専攻ならびに、国際ビジネス専攻に所属し、
グローバル情報システムを担当。担当科目は「コンピュータとコミュニケーション」「社会情報論」(以上
学部)「情報システム論」「認知情報論」(以上大学院)。
  この間、1984年より10年以上に渡って、ANSI  X3J13正員として、人工知能言語であるCommon  Lisp
言語米国規格制定に従事、1988年より青山学院大学の3キャンパスネットワークとその統合利用環境を設
計製作し、実用化。90年より3年間IPAにて3層分散処理プロトコル研究を指導。1993年4月より1年
間、マサチューセッツ工科大学人工知能研究所客員教授。1995年より97年3月まで、Sun  Microsystems
Academic   Advisory  Council  メンバー。またJava言語仕様開発時レビュー作業に参加し、Java言
語仕様書においてAcknowledgeされる。ISO JTC1 SC22 Java SG JP, ECMA TC41各メンバとして活動。
情報処理98年4月号「Java特集」ゲストエディタ。同時に、フリーソフトウェア財団Vice President for
Japanとして Richard Stallman氏の活動を支援。
  著書には「UNIX詳説」「Common Lisp」「Java例題集」「Newはやわかり Java」「情報リテラシー教
科書」「HTML詳説」などがある。
            

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