第11回IPアドレス管理指定事業者連絡会(東京会場)議事録
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会議名:第11回IPアドレス管理指定事業者連絡会(東京会場)
日時 :2004年2月17日(火) 10:00-12:00
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場所 :大手町サンケイプラザ
出席者:65名
議題 :1.IPアドレス事業料金体系の見直しについて
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1.いただいたご意見
・発表資料で、基本維持料のみではなく、特別維持料も含めた料金グラフを
提示するべきである
・維持料の料金設定をIPアドレス数と正比例したかたちにしてほしい
・会員/非会員に分けず、特別維持料は全体に対して課金されるべきである
・料金の値上げに伴ってJPNIC側でサービスの改善を行ってほしい
・公平性の観点から、歴史的経緯を持つIPアドレスも課金対象とするべきで
ある
・維持料はユーザに転嫁しにくいため、短期的にでも手数料による課金の制
度を維持してほしい
・値上げの段階数を増やし、もっと緩やかな値上げを行ってほしい
・大きなサイズの割り振りを受けている事業者の値下げ幅を落とすことによ
り、小さなサイズの割り振りを受けている事業者の値上げ幅を縮小するこ
ともできるのではないか
・本来であれば事業費はすべて基本維持料で賄うべきではないか
2.議事
[ご挨拶]
JPNIC IP事業部、佐藤晋(司会進行)よりご挨拶を行った。
本日ご説明を差し上げる内容は2月13日(金)のJPNIC総会と基本的に同様の
内容である。配布資料は総会の際に利用したものと同じであり、プレゼン
テーションは指定事業者様向けの内容に若干変更させていただいた。
[発表]
JPNIC IPアドレス担当理事、前村昌紀より、資料「IPアドレス事業料金体
系見直しの検討について」に基づき、説明を行った。
課金体系の変更実施の決議そのものはJPNIC総会で行われるが、指定事業
者の皆様に充分にご説明し、ご意見をお伺いした上で実施したいと考えて
いる。
また、本日ご意見をいただくことも非常に参考となるが、御社に持ち帰っ
てご検討いただいた上でご意見をいただくということも歓迎している。
その場合、query@ip.nic.ad.jpまでご連絡いただきたい。
[質疑応答]
・改定案は公序良俗に反する。段階的な値上げであればあれば賛成できるが
急激な値上げである。IPアドレスは使わざるを得ないものであるにも関わ
らずJPNICが独占的立場を利用して、一度に4倍も値段を上げるということ
はIPアドレスを人質に取った値上げ案である
→申請を1件でも受けた場合に発生する費用を現指定事業者数で割った、一
社あたりの基本支出が36万円である。しかし、現在の課金体系では、小さ
なサイズの割り振りを受けている事業者への維持料においてはそれをカバー
できていない。
また、アドレスの申請はAPNICからも行うことが可能であり、JPNICはアド
レス事業においてAPNICと仮想競争を行っている。小さなサイズの割り振
りを受けている事業者にとって現在の維持料はAPNICと比較しても非常に
安い価格設定となっている一方で、大きなサイズの割り振りを受けている
事業者はAPNICと比較して非常に大きなご負担をいただいている。JPNICと
してもできることであれば段階的な移行を行っていきたいと考えているが、
そのアンバランスを早急に是正したかったということが今回の料金体系の
背景である
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・スライドP.8の維持料比較はあくまでJPNIC会員価格でのグラフであるが、
JPNIC会員でなければグラフに示されているよりも倍以上の料金となるた
め、比較にならないものである。例えば/13であれば正会員であれば100万
円も金額が違う
→口頭で特別維持料を入れたものではない旨をご説明させていただいたが、
基本維持料のみを提示したグラフは誤解を招くというご指摘については検
討したい(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・IPアドレスを人質に取っている点についてどう考えるのか
→もしもJPNICがコストに見合わない金額の値上げを行っていればご指摘さ
れている状況に該当すると考えるが、今回は実際のコスト以上の課金は行っ
ておらず、それに該当するものではないと考えている
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・JPNICの理事が属している組織は値上げにならず、その他の組織が値上げ
の対象となることが問題である。また、値上げを行うのであればIPアドレ
ス数と正比例をするかたちにしていただきたい
→ご指摘の通り、現在の料金体系ではIPアドレス数に比例しているものでは
ない。また、理事が属しているのは指定事業者ばかりではないが、大きな
サイズの割り振りを受けている指定事業者にとっては大きな値下げになる
ことはすでにご紹介した通り、事実である。
APNICの会費は一番大きな課金レンジであっても400万円程度だがJPNICの
場合、上位10社からいただいている支払額の内訳を見ると4000万円、1億
円以上等の金額をお支払いいただいている事業者が存在する。こういった
観点から考えると大きなサイズの割り振りを受けている指定事業者が
JPNICからアドレスを受けることがコスト対効果に見合わない。これら事
業者にとっての費用負担を考えるとJPNICから割り振りを受けなければい
けない理由はなく、APNICに移管する可能性もある。
ご指摘の通り、課金体系を変更することにより、維持料をこれまでの4倍
ご負担いただく事業者が存在することになるが、一方で現状の課金体系に
より、本来の10倍お支払いいただいている事業者も存在し、そのようなバ
ランスを考えていきたい。また、現在ご提案している料金体系は不当に値
上げを行っているものではないが、より支出構造を合理化し、数年後には
料金の見直しを行いたいとも考えている(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・APNICの例を出してもらっても参考にならない。IIPアドレスあたりの単価
が事業者の規模によって異なってくる。その点についてはどう考えるのか
→ご指摘の通り規模に応じてスケーラビリティも発生するため、料金もそれ
に合わせたものとなっている。その適切性については検討の価値があると
考えるが、現時点で即答することは難しい
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・APNICに移管できるため、JPNICがIP事業を独占していないとのお話だが、
移管に伴いリナンバが発生するため、事業者としては移管を行うことが難
しい状況である。そういった観点から、実質はJPNICによる独占であると
考える
→リナンバを行わずにAPNICに移管することは可能である。また、逆にAPNIC
からJPNICにもリナンバを伴わずに移管を行うことも可能である。従って
ご指摘いただいているような状況ではないことを申し上げたい
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・特別維持料は本来であれば全体に対して負担を求めるべきであるにも関わ
らず、負担の方法が歪である。小さな割り振りを受けている組織の方が特
別維持料の負担額が不当に大きい。例えば/20の割り振りを受けている事
業者は特別維持料の占める額が50%であることに対し、/16の割り振りを受
けている事業者は30%である。
また、特別維持料をJPNIC会員でもある事業者に対しても適用した場合、
会員からの維持料は6690万円であることに対し、非会員から見込める維持
料収入は4747万円である。そう考えると会員である指定事業者にも応分の
負担を求めるべきなのではないか。
そして、会員であった方が安くなる事業者においては会員となる可能性が
あり、その場合特別維持料を当初の予定通り徴収できなくなるのではない
か
→ご指摘ありがとうございました。非常に参考となるご意見として詳細に検
討していきたい
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・4月1日から7月31日までは料金が二重取りになっているのではないか
→8月1日からは割り振り手数料は発生するが、その代わり、 割り当て手数
料は発生しなくなるので二重取りにはなっていない
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・維持料は4倍になるが、増額分を理由もなくユーザに転嫁することが非常
に難しい。料金の値上げに伴ってJPNIC側でもサービスの改善を行ってほ
しい
→ユーザに転嫁することが難しい状況は非常に理解できる。貴重なご意見あ
りがとうございます。サービスの改善はもちろん必要だと考え、料金の値
上げとはまた別に継続して取り組んでいきたい
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・歴史的経緯を持っているアドレス、例えば旧クラスB相当のアドレスを持っ
ている人が課金の対象になっていない。こういう人たちに対して課金を行
わないと本当に公平とはいえない。説明を求めても「歴史的な背景」とい
う説明を受け、あまり納得ができるものではない。この維持料案に入って
いない人に課金した場合の対象アドレスサイズと課金額を教えてほしい
→歴史的経緯を持つアドレスは複雑な背景があるため、扱いが非常に難しい。
現在のIPアドレスのポリシーは必要に応じて付与されているが過去におい
てはそのようなポリシーは適用されておらず、1組織に対して、例えば旧
クラスAアドレス等、非常に大きな空間が割当てられていた。このように
現在のアドレスと、歴史的経緯を持つアドレスは付与が行われた時点での
ロジックが異なるため、そのまま課金を行うことは難しい。
また、現在のポリシーは使用しないアドレスについて返却は求めているが、
その具体的なメカニズムは定義されておらず、非常に重い課題である。
現在、JPNICの管轄下にある歴史的経緯を持つアドレスは旧クラスAアドレ
ス3つ相当である。こういったアドレスは維持料の対象となるよりも回収
の可能性もあり、維持料として見込めるかは未知数である。
しかし、APNICにおいてはこの回収を実施する提案が行われ、そのような
動きが始まろうとしている。アドレスの有効利用ということよりも、イン
センティブとしてはDB更新が行われていないという問題意識から発生して
いるものであり、回収後の扱いについては未定義であるが、これは確実に
回収に向けて第一歩を踏んでいる。
JPNICでも問題意識を持って動向を追っており、APNICと足並みを揃えなが
ら検討を行っていく。もしももっと早く実施が必要であるということであ
ればAPNICに対して提案を行っていきたい。
公平性の問題は非常に貴重なご指摘であると考えており、もしも歴史的経
緯を持つアドレスの付与を受けている組織から維持料を回収することによ
り、コスト回収が見込めるのであれば検討していきたい
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・こういう機会でもないと歴史的経緯を持つアドレスの返却は見込めない。
一部の歴史的経緯を持つアドレスを付与されている組織は課金したら返す
意志があるとの話を聞いている。
枯渇問題が発生しているにも関わらず使っていないIPアドレスがたくさん
あり、アメリカは使っていないアドレスはすぐに返す仕組みになっている。
アメリカができるのであれば日本ができないわけがない。やろうと思わな
い限りは前に進まない
→ご指摘ありがとうございました(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・なぜこんなに値上げになるのか納得いかない。ソフトランディングとのお
話があったが、もっと値上げ段階数を増やし、値上げ幅をゆるやかにして
ほしい。/16以下の割り振りを受けている場合、JPNIC会員になったとして
も総合的にかかる金額は減らず、増額は免れられない
→JPNICもソフトランディングを意識した上でのご提案ではあったが、さら
なるソフトランディングが必要であるとのご指摘ということでご意見を
受け止めた(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・手数料はユーザに転嫁できるが、維持料は転嫁しづらい。RIRの料金体系
にあわせることに対して反対はしないが、維持料の増額分は事業者負担と
なる。割り振り維持料も転嫁しづらい点については同じである
→割り当て手数料は非常に転嫁のしやすい料金体系であることはもっともな
事情だと思う。ただし、割り当て手数料をベースとした課金制度は業務の
コスト構造とは相容れないことを汲み取っていただき、維持料をユーザに
転嫁する方法を工夫いただけると幸いです。JPNICでもできることがあれ
ば考えていきたい(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・課金体系変更の最終形については反対していないが、短期的には手数料の
仕組みは維持してほしい
→可能性として考えてみたいと思う。ご意見ありがとうございます
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・特別維持料を会員、非会員を分けずに、全体に対して適用した場合、基本
維持料45%を特別維持料とすれば回収できると思う。そう考えると、やは
り会員、非会員と区別をつけず、全体に対して特別維持料を課金していた
だければと思う。
総会で理解を得られないのであれば、理解が得られるように努力してほし
い。
新システムの機能改善、日本語によるサービスの提供等を考えると、これ
を適用することによりAPNICとの競争力が下がるものではないと思う
→JPNICのスタンスをご理解いただいた上でのご意見、ありがとうございま
す。
APNICとは仮想競状態という意識をもって料金体系、サービスの提供を意
識している。APNICへ貢献しながら指定事業者の皆様に対しては日本語で
のサービスに留まらず、IPアドレス管理業務の専業者としてお力添えをし
たいと考えている。
他の料金プランについても視野に入れながら検討していきたい
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・特別維持料が高すぎる。また会員であれば料金の割引があるということは
あまり公平ではない。会員、非会員と料金を分けることは一組織のなかで
契約が二つ存在しているようでバランスが悪い。
また、固定費は36万円であるにも関わらず、/10以上の割り振りを受ける
と250万というのは金額が高すぎるのではないか
→1件でもJPNICに対して申請が発生した場合のコストは確かに36万円である
が、事業者の規模、事業者数が大きくなるに従い、データベースのリソー
ス、審議の労務費もより多く発生することになる。従って、基本維持料と
大きなサイズの割り振りを受けている事業者に対して発生する維持料の差
額を比較することは必ずしも有効な議論ではないと考える。
特別維持料については、当初は会員ランクに応じて特別維持料の金額を変
更するという案も出ていたが、その場合課金制度が煩雑になるため、ご提
案には至らなかった。JPNIC会員は特別維持料が適用されないとした場合、
特別維持料をお支払いただく方と、会員になっていただける方、どちらも
発生するだろう。その辺の分散も配慮した上で、この特別維持料の案をご
提案させていただいている。
特別維持料は、およそ基本維持料の7割程度となるように設定している。
正会員からも特別維持料を徴収する課金方式については、
JPNICでもご提案前に検討済ではあるが、そのようなご意見をお持ちの方
が多い場合、考慮に入れていきたい。
時間に限りがあるため、すべてのいただいたご意見に対して可能性を検討
できるものではないが、現時点での提案に変更の余地も与えずに実施する
意図はない。いただいたご意見は考慮に入れながら検討を進めていきたい
と考えている(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・今回の課金体系の変更はソフトランディングとは言い難い。3000万円程度
維持料が安くなっている事業者はほとんどJPNIC会員なのだろうと考えると、
ますます不公平感があるのではないか。
また、3000万円支払っている事業者がまず1000万円程度安くなる方式がソ
フトランディングと呼べるのではないか
→有効なご指摘だと思います。可能性を検討して参りたいと思います
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・そもそも特別維持料の考え方が知りたい。基本維持料はそのままでやってい
くが、収支が合わなかった場合に特別維持料を付け足してしまえばいい、
という考え方であるように感じる。
また、会費の利用のされかたも本来とは異なる。本来すべての費用を基本
維持料で賄うべきなのではないか
→基本維持料はAPNICの維持料と基本的に同じような金額で設定した。ただ、
今後数年以内、それでは不足しているコストについては特別維持料で充当
する。今後収支が足りなくなる度に特別維持料を設けて収支をあわせると
いう趣旨のものではない。3年後にはなくしていきたいと考えている。
また、会費から充足する不足分はポリシー関連の事業に該当する。ポリシー
関連の調整については指定事業者に限らず公益性が非常に大きな事業であ
ると考えている(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
・考え方は理解できた。ただ、特別維持料は3年後になくなるということだ
が、もしもポリシー関連の事業にあてられるのではあれば、この分の費用
負担はなくなるべきではないのではないか
→2008年には基本維持料による費用の不足分も解消されており、ポリシー関
連の業務も維持料からまかなえるようになっていると思われる。もしも、
3年後に基本維持料でまかなえていないのであれば基本維持料を見直す必要
がある。きっと3年サイクルで課金の見直しを行っていくことになるだろう
(JPNIC IPアドレス担当理事 前村)
以上