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JPNICチュートリアル IPアドレスとドメイン(超初級)

1997年12月16日(火) 10:00 -- 12:00 JPNIC運営委員 後藤邦夫(南山大学)

概要

そもそもIPアドレス、ドメイン名、 DNSとは何かについて解り易く解説します。 これからインターネットの技術を学ぼうする方むけの入門コースです。

  1. IPアドレスとは
  2. ドメイン名とは
  3. DNS(ドメインネームシステム)とは
  4. (付録) 良く聞かれる質問とその答え(FAQ)

0. はじめに(追加)

パケット交換の概念

インターネットなど広く使われているコンピュータネットワークでは、 電話と違い、うまく通信できない、遅くなる場合がある。 その理由はパケット交換という、 宅配便にも似た方法で通信回線を有効利用しているからである。 (高速基幹ネットワーク部分では、 パケット交換以外の技術も用いられている。)

例えば図0-1のように、 コンピュータAからC、 BからDに送りたいデータをパケット(小包)と呼ばれる単位に分け、 中継しながら、同じ通信路を共有して目的地に届ける。 個々のパケットの先頭には、発信元(ソース)、 目的地(デスティネーション)のコンピュータなどの通信機器のアドレスが入っていて、 インターネットの場合は、IPアドレスである。 中継ノード(ルータ)では、その目的地IPアドレスに基づいて、 次にどの回線に送り出すか決める。

図:パケット交換の概念
図0-1. パケット交換の概念

もう少し詳しく見ると、図0-2のように、 各中継ノード(交換機、あるいはルータ)には、 一時的にパケットを蓄える待ち合室があり、混雑すると列が長くなり、 端から端まで届けるのに遅れが生じる。 混雑がひどいと列に入れずにパケットが消えてしまい、 送り直すことがある。

図:パケット交換による遅れ
図0-2. パケット交換による遅れ

一方、 電話のような回線交換方式では通信中は相手までの回線を独占使用するため、 混雑しても遅れはないが、接続できなくなる。

1. IPアドレスとは

インターネット上でノード(ホスト)を特定するために設定する世界中で唯一の番号。 通信相手の計算機を識別し、どこからどこに送るかを示すもの。 そのため割当を受ける必要がある。 WWWブラウザとWWWサーバの通信などでは、さらにTCP/UDPの別、 ポート番号の組合せで通信相手のプロセス(動作中のプログラム)を区別する。

  1. ノード(インターネット用語でのホスト)
    インターネットに接続する機器で、パーソナルコンピュータ、 ワークステーション、メインフレーム、 ルータなどのすべてを意味する。
  2. IPアドレスはどこに入っている?
    LANを流れるフレーム(隣のノード間の通信の単位)のデータとしてIPパケットが含まれている。 ルータでは、 フレームの中身のIPパケット中のIPアドレスにより次にどこに送るか決める。(図1)
  3. IPアドレスの表記
    現在のIP version 4で使用するIPアドレスは32ビットで、 8ビットずつ10進数で、 ドット(ピリオド)で区切って表記することが多い。 (例: 210.154.64.130は2進で11010010 10011010 01000000 10000010)
図:IPアドレス
図1. Ethernetを流れるデータの中のIPアドレス
  1. ホストのIPアドレスは1つだけ?
    ルータなど複数のネットワークインタフェースを持つ機器は、 インタフェース毎にIPアドレスをつける。(図2) (一つのインタフェースに複数のIPアドレスをつけることもある。)
  2. ダイヤルアップの時のIPアドレスは?
    外部との直接の通信をする計算機のIPアドレス(グローバルアドレス)は、 組織単位でその組織だけが使用できる範囲の割当を受け、 計算機毎にソフトウェアで設定する。 (DHCPによる自動設定も可能。 ダイヤルアップPPPのときは普通接続相手から与えられる番号を使用する。)
  3. プライベートアドレス
    LANでのみ使用するIPアドレスはプライベートアドレスと呼ばれ、 定められた範囲のものを使う。割当を受ける必要はない。 (図3の使用例、表1参照)
図:IPアドレスの使用例1
図2. 組織におけるIPアドレスの使用例その1
  1. 現在の割当はクラスC
    IPアドレスにはクラスA, B, Cがあり、 JPNICあるいは会員ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)への業務委託により2の冪乗(1, 2, 4, 8...)個のクラスC、 または小規模な利用者(組織)用に一部分を割り当てている。
  2. クラスCとは?(やや難)
    クラスCのアドレスは、最初が110(2進)で、10進ドット表記では、 192.0.0.0から223.255.255.255までで、 続く21ビットを含めて24ビット部分をネットワーク部、 最後の8ビットはホスト部と呼び組織内で自由に利用でき、 256個(一部ホストには割り当てない)の番号が使える。
  3. IPアドレスはソフトウェアで設定
    計算機をLANに接続する場合は、 LAN管理者に聞いてIPアドレスとサブネットマスクをソフトウェアで設定する必要がある。 (Ethernetアドレスは、購入時に設定されている。)
  4. サブネットマスク
    組織内でルータを用いLANを複数のサブネットに分割する場合は、 クラスCの場合、 自然な24ビットより長いサブネットマスクを設定し、 その長さまでのビットをIPアドレスのネットワーク部と解釈する。 クラスCの一部分(8や16個単位)だけを割り当てられた場合は、 必ずサブネットマスクを正しく設定する必要がある。
  5. 図2の例
    サブネットマスクを28ビットとして、 1サブネットあたり16までのアドレスが使用できるようにしている。 その16のうち最後の4ビットがすべて0のもの(ネットワークアドレス: 202.13.AA.0, 202.13.AA.16)とすべて1のもの(ブロードキャストアドレス: 202.13.AA.15, 202.13.AA.31)は、 ホストには割り当てられないので、 ルータを含み各サブネットに接続できるホストは14台までで、 サブネットは16定義できる(AAには実際には数が入る)。
  6. サブネット
    サブネットは通常は隣接するが、 離れたところに置くことも不可能ではない。 また、サブネット毎にマスクを変えて可変長サブネット(VLSM)で運用することもできる。
図:IPアドレスの使用例2
図3. 組織におけるIPアドレスの使用例その2(プライベートアドレス利用)
表1. プライベートアドレスとして予約されているIPアドレスの範囲
クラスA: 10.0.0.0 -- 10.255.255.255
クラスB: 172.16.0.0 -- 172.31.255.255
クラスC: 192.168.0.0 -- 192.168.255.255

2. ドメイン名とは

まず、ドメインは直訳すると領地、領土である。 組織や団体、 あるいは個人によるインターネット接続の単位がドメインで、 その中で共通に利用する名前をドメイン名と呼ぶ。

ホストに人間が覚えやすい名前(server, www, ns) をつけ、 それをホスト名と呼ぶが、 他の組織でも同じ名前をつけることがあり得るので区別するためにドメイン名を利用する。 すなわち、JPNICのWWWサーバには、ドメイン名nic.ad.jpをつけて、 ホストのフルネームにあたるwww.nic.ad.jpを定義することで、 簡単に世界で唯一な名前をつけることができる。 このフルネームを「完全なドメイン名」(Fully Qualified Domain Name)と呼ぶ。

図:ドメイン名の構造
図4. ドメイン名の構造(JPの場合)
  1. 大文字と小文字
    区別はない。漢字は使用できない。
  2. IPアドレスは覚えにくい
    通信データ中のアドレスは前述のIPアドレスであるが、 人間が使用する時は覚えにくいので、telnetやWWW(HTTP)利用では、 完全なドメイン名で接続相手を指定することがほとんどである。
  3. サブドメイン
    さらに、www.ip.nic.ad.jp(実在しない)のように、 登録されたnic.ad.jpのより細かい区分として、 サブドメインを必要に応じ定義できる。
  4. 通信処理はIPアドレスで
    利用者が使う(クライアント)プログラム内では、 後述のDNSを使用して、 完全なドメイン名からIPアドレスを調べてから通信処理を行なっている。
  5. 電子メイルアドレスとドメイン名
    query@nic.ad.jpのような電子メイルアドレスの「@マーク」の後には、 完全なドメイン名またはドメイン名、サブドメイン名を使用する。
  6. 別名の定義
    あるIPアドレスと対応する正式なドメイン名は1つだが、 DNSで別名を定義することができる。 例えば、moon.earth.ac.jpをWWWサーバにして、 www.earth.ac.jpという別名をつける。

ドメイン名の使用例

  1. WWW.NIC.AD.JP (JPNICのWWWサーバの完全なドメイン名)
  2. http://www.nic.ad.jp/ (完全なドメイン名を用いてURLを書く)
  3. http://WWW.DOMAIN.NIC.AD.JP/ (もしドメイン関係のWWWサーバを別に設けるとしたら)
  4. query@jpnic-u.ac.jp (ある大学の一般問い合わせ電子メイルアドレス)
  5. query@admission.jpnic-u.ac.jp (ある大学の入試関係問い合わせ)

3. DNS(ドメインネームシステム)とは

DNSは汎用の分散、複製、データ問い合わせサービスであり、 主にホスト名からIPアドレスを調べるために使う。 現在インターネットで使われているホスト名の形式はDNSで調べるのに使われる形式であるために、 「ドメイン名」と呼ばれる。 .US, .JP, .UKなどで終る国の符号(ISO 3166)のドメインの他に.COM, .EDU, .NETなどがあり、 他に新しいトップ階層ドメインも提案されている。 JPNICで登録を行なうのは.JPでおわる「JPドメイン」だけである。

  1. 知らないうちに使っているDNSの機能
    通常はプログラム内で自動的に問い合わせるため、 一般利用者は意識しないが、 重要な機能であり管理者は自組織の情報を正しく他のインターネット利用者に提供するように心がける。
  2. 電子メイル配送先
    user@subdom1.dom.dom.jpあての電子メイルの配送先指定(Mail eXchanger)にも使用される。

WWWブラウザがWWWサーバに接続する際のDNS使用例(図5)

  1. ブラウザで利用者がhttp://www.nic.ad.jp/を見る操作をする。
  2. ブラウザが近くのDNSサーバにwww.nic.ad.jpのIPアドレスを問い合わせ、(中略)、答が202.12.30.134であることを知る。
  3. ブラウザが202.12.30.134に接続する。
  4. WWWサーバである202.12.30.134では、接続してきたブラウザが動いているホストのIPアドレスがわかる。
  5. サーバは求められたデータをブラウザに返送する。
  6. サーバはブラウザのIPアドレスから、逆に完全なドメイン名を問い合わせ、答が得られれば、アクセス記録に書く。答が得られなければIPアドレスで記録する。

つまり、URLをhttp://202.12.30.134/としても同じホストに接続される。 ただし、 運用上の都合で別のホストをJPNICのWWWサーバにしてIPアドレスが変わることもあり、 その場合、 DNSで新しいホストのIPアドレスをwww.nic.ad.jpと対応付けることで、 利用者に不便をかけなくてすむ。

図:DNS利用例
図5. DNS利用例

4. (付録) 良く聞かれる質問とその答え(FAQ)

  1. ホストってなんですか?
    1. PCはホストですか? -- そうです。
    2. ホストとメインフレームの関係は? -- メインフレームはホストの1種です。
    3. ルータってホストですか? -- そうです。2つ以上のネットワークにつながっているところが他のホストと少し違います。
  2. IPアドレスとドメイン名の違いは?
    1. なぜふたつあるのですか? 統一はできないのですか? -- コンピュータでの高速処理のためには固定長の番号(IPアドレス)が向いているのですが、人間には覚えにくいので、ドメイン名を使います。皆が番号で覚えられるなら番号だけでもよいかもしれません。
    2. Ethernetアドレスとの関係は? -- 直接関係ありません。Ethernetフレームのデータ部分にIPアドレスが入っています。ただし、同じEthernetセグメント上では、通信相手を特定するためにARP(アドレス解決プロトコル)により、動的にEthernetアドレスとIPアドレスの対応がつけられます。
  3. ドメイン名ってなんですか?
    1. ドメイン名はだれが管理しているのですか? -- 国の符号を使うJPドメインなどは各国あるいは地域のネットワーク・インフォメーション・センターで、どこの国でも使用できるCOMなどのドメインはInterNICが管理しています。新しいトップレベルドメインについては、具体的に決まるのはこれからです。
    2. ドメイン名とホスト名の違いは? -- PC001などのホスト名は、世界中の大学にあり、それだけではどこのPC001か区別が付けられません。ドメイン名はある範囲(領地)を表すものです。ホスト名とドメイン名を合わせて、PC001.ABC-U.AC.JPとすると世界中で唯一の「完全なドメイン名」になります。
    3. ドメイン名・ホスト名とメイルアドレスの@の右との関係は? -- 色々な場合があります。@の右の部分は、完全なホスト名、サブドメイン名とドメイン名、ドメイン名のいずれかになりますが、メイルを受けとる側の都合で決めています。どうなっているかは、nslookupコマンドで、DNSにより提供されているMX情報を調べるとよいでしょう。電子メイルアドレスは短いほどよいという観点に立てば、組織に割り当てられたドメイン名のみを使用する。他部局で同じユーザ名の人がいるなら、部局毎のサブドメインをつけます。
    4. ドメイン名とURLの関係は? -- ドメイン名を含む「完全なドメイン名」を使ってURLを書きます。すなわち http://完全なドメイン名/WWWサーバでのパス名/
  4. IPv6っていつごろ使えますか?
    -- まだはっきりしていません。 基幹ネットワークから移行し、 一般利用者への影響はコンピュータのOSが対応してからになります。
    1. IPv6ってアドレスの枯渇はないのですか? -- 人類が銀河系に進出すれば足りなくなるかもしれません。
    2. IPv6の割り当てはだれが行うのですか? -- JPNICでも対応しますが、時期は未定です。
    3. 枯渇するとインターネットはおしまいですか? -- 次のバージョンができるので大丈夫でしょう。
    4. なぜ固定長なんですか? 電話番号のように可変長にすればいいのに.-- 現在のルータ等は、普通のCPUを使うディジタルコンピュータです。高速での処理を楽にするために、固定長になっています。
  5. WWW.XXX.CO.JP というドメイン名をJPNICに申請したら拒絶されました.なぜ?
    -- WWWが余計でした。割当は、XXX.CO.JPのXXXの部分までで、それより左の部分は各ドメインで自由に決めて下さい。
  6. COMドメインとCO.JPの違いは? 最近.COMをもっている日本人/日本の法人がいっぱいいますが,良いのですか? --
  7. ドメイン名は枯渇しないのですか?
    -- 単純に英数字をドットで区切った組合せとしては、簡単には枯渇しませんが、意味を持つ短い名前については、自分がつけたい名前がすでに利用されているか、また枯渇する可能性があります。そのため現在利用されていない名前の付け方も提案されつつあります。
  8. ひとつのホストにIPアドレスが複数つくという話しを聞きました.なぜホスト識別に複数のアドレスが必要なのですか? -- 複数のネットワークインタフェースを持っていて複数のネットワークに接続するホストは、インタフェース毎に違うアドレスをつけ、ルータにもできます。インタフェースが一つでもOSにより可能で、高度な設定を行なうために複数のアドレスをつけることができます。
  9. ほかの国のドメイン名をとりたいのですが,だれにいえばいいですか?
    -- その国や地域のJPNICにあたるネットワーク・インフォメーション・センターに問い合わせればよいでしょう。ただし、その国に事業所や登録がない組織にはドメイン名を与えないことになっているかもしれません。(.JPについてはそうです。)
  10. JPドメインって,COMにくらべて取りにくいと聞きました.なぜですか? 日本が独自というのはインターネット的ではないと思います?
    -- 新たにインターネットを利用するためにJPドメインをとるのは、難しいことではありません。ただしJPでは混乱を避けるために、組織での申請の場合はどのような組織であるかの審査があり、その意味では時間がかかるかもしれません。また1組織あたり1ドメインの原則を守っていること、個人の場合は地域型ドメインとなることから制約が強いといえます。審査なしでどんどん割り当てると、生じる社会的問題が大きくなり、混乱を招く可能性が強く、大多数の利用者が満足する方法の検討を進めています。
  11. ダイアルアップでインターネットを利用していますが,IPアドレスの割り当てはうけていません.問題ありませんか?
    -- 問題ありません。接続時にISP側でダイヤルアップ用に用意したアドレスが割り当てられます。
  12. なぜドメイン名/IPアドレスは国が管理しないのですか?
    -- JPNICおよびその前進となるボランティア組織が、利用者による自律管理というインターネット発祥以来の精神に従い管理してきたからです。

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