ニュースレターNo.1/1994年4月発行
3. インターネットの現状とJPNICの活動
インターネット(The Internet)とは、 TCP/IP (Transmission ControlProtocol/Internet Protocol)と呼ばれるネットワーク技術によって全世界的に相互接続されたネットワーク全体をさす言葉です。
TCP/IPは元々アメリカ国防総省のDARPA (Defense Advanced Research ProjectsAgency)によって、1980頃から研究・開発がおこなわれ、 始めARPANETにおいて採用されました。 これが初期のインターネットだったわけです。 1980年代後半には全米科学財団(NSF, National Science Foundation)の財政支援のもとでこの技術を採用した学術研究ネットワークNSFNETが運用を開始し、 インターネットはアメリカで大きく発展してゆきます。 その後わずか2、3年の間に世界的にも広がり始め、 また商用のネットワークにも採用されてインターネットは爆発的な発展をし始め、 その動きは今も続いています。
日本においては、当初UUCP(Unix to Unix Copy Program)による相互接続ネットワークとして発足したJUNETにもTCP/IPが浸透し始め、 またWIDE(WIDEInternet), TISN(国際理学ネットワーク, Todai International ScienceNetwork), JAIN(Japan Academic Inter-university Network)など、 TCP/IPを表看板とするネットワークが1980年代の終りには出現しました。 これにより,国内組織の相互接続はもとより, アメリカともTCP/IPで接続され、 日本も本格的なインターネット時代に入って行きます。
インターネットの現在の規模を正確につかむことは簡単ではありませんが、 相当に大きくなっていることは確かで、 1993年9月の時点で世界で92箇国にIPアドレス登録が広がり、 接続組織は少なくとも28,000組織(1993年10月), 接続コンピュータ数は少なくとも200万台(1993年10月)、 電子メイル到達国数137箇国 (1993年8月)、 推定ユーザ数1500万人以上(1994年始め)と見積もられています。 (これらの数値はanonymous ftpでcnri.reston.va.usのisoc/gif/Internet_metrics内のファイルから入手しました。)
このように大きくなったインターネットを運営する上でドメイン名やIPアドレスなどのネットワーク資源の割当て及び登録管理の業務は極めて重要です。 それを行う機関をNIC(Network Information Center)と呼んでいます。 インターネットでは、1993年4月の時点でIANA (Internet Assigned NumberAuthority)の主導のもとで、InterNIC, RIPE(Reseaux IP Europeans)のNCC(Network Cordination Centre), それにJPNICの3つの機関が協力体制を取りながらNIC業務を行なっています。 RIPE NCCとJPNICはそれぞれヨーロッパ地域と日本のNIC業務を担当し、 これ以外の地域の分はInterNICが1993年の4月にDDN(Defense Data Network)のNICから引き継いでいます。 つまりJPNICはこの時点で世界にわずか3つしかない公認されたNIC機関の一つでした。
しかし、このような地域分担には当然無理があります。 実際、日本はもとよりアジア・太平洋地域の各国のインターネットの発展にも現在めざましいものがあります。 そこでこの地域を担当するNIC機関としてAPNIC(Asia Pacific NIC)の設立が検討され、 現在その実験プロジェクトが国際的な承認のもとに、 JPNICの財政的・技術的・人的支援によって進行しています。
JPNICのAPNICへの支援は、単に日本の国際貢献という面だけではなく、 アジア・太平洋地域の一員として日本が今後安定してネットワーク資源の割当てをうけるためにも必要不可欠なものといえましょう。