ニュースレターNo.15/1999年12月発行
2.JPドメイン名の登録数 10万ドメインを突破 English Page
2.3 ドメイン名への新しい期待
1996年度 主査 佐野 晋(JPNIC運営委員長)
ドメイン名はインターネット上のリソースの識別子。というのが基本的な役割である。そのため、インターネットに接続する「組織」に対して、迅速にして公平な割り当てを行なうというのが、レジストリの基本的な役割であった。インターネットの利用の拡大は、このドメイン名に対する新しい期待を持つようになってきた。サービス、商品 そして ブランドの表示である。
それまではインターネットでは会社や学校などの組織同士が、または、その組織の構成員同士が通信することが主なサービスであったため、その「組織」を識別できれば事足りたのである。しかし、パソコン通信やWWWサービスなどのオンラインサービスが、そのサービス提供を目的にインターネットに接続するようになって、そのサービスそのものをドメイン名で識別したいという要請がでてくるようになったのである。また、商用のISPの出現により、個人がインターネットに接続できるようになると、個人を直接識別するドメイン名の要請もよせられるようになってきた。
この要請に対応するために新しいSLD(Second Level Domain)の新設の検討を開始した。ブランドドメインと個人ドメインである。検討を開始するとこれらのドメインには大きな問題があることがわかった。ブランドドメインの商標の問題、個人ドメインのスケーラビリティの問題である。ブランドドメインの新設にあたっては、既存の商標システムとの整合性、特に、類と呼ばれる利用範囲ごとにスコープが決まる名前空間をどのようにドメイン名空間に実装するかという点に集中的に検討が行なわれた。また、個人名についても、大量の個人が、名前でドメイン名登録することを前提に同姓同名をどのように扱うか、大量の登録をどのように運用管理するかが関心のポイントであった。
ブランドドメインについては検討を進めていたが、紛争や著名商標の扱いが大きな問題であるという商標関係者たちから指摘をうけるようになってきた。ブランドドメインを新設すると、商標に関する紛争が多発するというのである。実際に、そのころCOMドメインでも商標に関する紛争が具体的に発生するようになってきた。
この問題については慎重に扱うべきであるという認識から、ブランドドメイン名の新設は、当分の間見送ることになった。ただ、急増するネットワークサービスプロバイダのドメイン名については、そのプロバイダに参加する会員のためのドメイン名というNEドメイン名という形で、新設することになった。
個人ドメインについては、そのニーズが十分にわかっていないことや、実装に多くの問題があることから、現在まで検討が引続き行なわれている。