ニュースレターNo.15/1999年12月発行
3.最新トピックス English Page
3.4 IPv4 アドレス新ルール施行及びドキュメントの改訂について
(IPアドレス、AS 番号割り当て検討部会)
前回のニュースレターでインターネットの急激な成長とそれにともなうIANA、地域レジストリのポリシ変更によるIPアドレス割り振り・割り当ての世界的動向について少しお話しさせていただきました。APNICもポリシドキュメントが理事会で承認され、当面の方針として採用されることになりました。そこで、JPNICでも前号で少し触れましたように世界の動向に合わせる必要からポリシの改訂とドキュメントの書き直しを行ないました。これらのドキュメントは10月1日にドラフト公開され、10月15日まで会員の方々のご意見を伺い、そのご意見を反映させました。これをJPNIC運営委員会にかけ、承認されたところで10月29日に、2000年1月28日から施行される正式ドキュメントとして公開致しました。
今までの手順と大きく変わるのは以下の2点です。
- 顧客に対しての割り当て前にJPNIC審議を行なう適用条件として新たにAW(アサインメントウインドウ)という概念を取り入れたこと
- 会員のインフラストラクチャに割り当てるアドレス審議が割り振り申請時に行なわれるなど割り振り申請時の審査、提出情報が変わったこと
AWについて
AWはAPNICなどの地域レジストリが採用している会員の割り当て経験と知識に応じて任せる度合いを増やしていくしくみといったものです。各会員にそれぞれAWが決められますが、これは会員がJPNICに審議を依頼せず、独自の判断で割り当てを行なっても良い最大のアドレスブロックのサイズのことです。このしくみの導入時(2000年1月)のAWサイズは既会員は/25、新会員はゼロとしてスタートします。これは既会員は /25以下の割り当てを行なう場合には自身の裁量ででき、それを超える場合にはJPNICに審議依頼を送って承認をもらうという意味です。新会員は全ての割り当てにおいてJPNICの承認が必要となります。そしてJPNICは提出される情報から割り当て時に顧客から集める資料の妥当性などを検討し、その会員がJPNICの定めるポリシを理解し、それにしたがって割り当て方をしていると判断されれば、このAWサイズを広げていきます。つまり会員が自分の判断で割り当てができる量が多くなっていき、JPNICがその会員をより信頼して任せるようになるというしくみです。
今までの審議は割り当てをする組織が使用するアドレスの総量が/21を超える場合は全て審議が必要でした。しかしながらこれからは総量ではなく、申請時に割り当てる量がAWサイズを超える場合のみの審議となります。ということはJPNICがある程度以上の大きさのネットワークは全て審議を必要とするという考え方から、会員が割り当ての経験を積んでいくにしたがってJPNICが任す量が増えていくということになります。ですから始めはたいへんですが、慣れていけばどんどん楽になるというしくみといえると思います。
このAWサイズは審議のたびに見直されることになっています。JPNICでは会員の皆様にAWに慣れていただくには、JPNICポリシーの背景を十分理解していただくことが大事と考えており、事務連絡担当者会議、出版物、イベントでのセミナーなどの際に少しずつお話するように心がけております。
レジストリとしてはまず、有限である IPv4のアドレス空間をいかに無駄なく有効に使用できるか、ということがあげられます。これを具体的に言えば、クラスレスの割り当てをすること(クラスCを1個、2個といった単位での割り当てをしないこと)などがあげられます。その他の考慮点として、グローバルルーティングテーブルの項目をなるべく増やさないように割り当てること、コミュニティの中で公平な割り当てをすることなどがあげられます。
これらのことを念頭において割り当てを行なっていただくことにより、AW のサイズが大きくなり、 JPNIC のその会員への信頼も厚くなっていきます。そしてこれらのポリシを全ての会員が守っていくことは 何よりもインターネットコミュニティ全体にとって良いことであることは疑う余地もありません。
割り振り申請
今まで割り振り申請は今までに割り振られたアドレスブロックの80%以上の割り当て報告がされていることを示せば、次の割り振りが行なわれていました。しかしながら、これからは会員自身に割り当てるインフラストラクチャの部分の情報は割り振り申請時に審議することになりました。そして割り当て報告からJPNICの方でその会員が割り当てたアドレスのサマリを作成し、その割り当てパターンなどから会員のパフォーマンスを調べます。また、割り振り申請時にも審議が発生するため、AWサイズの見直しが行なわれます。このように審議が行われる度にAWは見直され、タイムリーにサイズを広げることができるように考慮致しました。
それからインフラストラクチャの分の割り当て報告にはネットワーク情報の詳細を記述する必要がなくなりました。割り振り申請時に情報提出をすることで、審議が通っているのと同じこととみなされ、膨大なネットワーク情報を何度も書く手間を省きました。
とくにインフラストラクチャの情報では「十分な情報」を提出していただくためにJPNIC ではなるべくわかりやすい形でどのような資料を必要としているのか、それはどのような理由なのか、といったことを折りにふれてお話しして参りました。日本のインターネットビジネスの中で構築されるネットワークはひとつひとつ違っており、全てを網羅的にご説明するのは極めて困難です。しかしながら、目安としてこのような情報の提出が割り当てを承認する側にとっては役に立つということを少し書いてみようと思います。
ダイアルアップの場合は、POP(アクセスポイント、支局)毎にアクセスサーバの種類、ポート数、これからの機器設置プラン帯域(PRI)の数、トポロジダイアグラム、どこのPOPがどの部分のアドレスをどれくらい割り当てられているか、といった情報が書かれていることが望まれます。
バーチャルホスティングの場合はアドレスの使用を示す資料有用な情報と言えます。例えば、顧客リスト(名前、住所等は隠して良い)、シリアル#と使用者のリスト(名前は隠して良い)、HTTP/1.1 の使用をしているか、していなくても検討しているか等です。
これらはあくまでも参考情報で、これで完璧だとはいえませんが、この情報を読めば、そのネットワークが理解できるだけの情報を提出するということを考えながら情報の提出をしていただけるとよろしいと思います。
JPNICの新ドキュメント
JPNIC はこのポリシ変更に合わせて全面的なドキュメントの改訂を行ないました。これは単に今までのドキュメントを書き直しただけでなく、ドキュメント構成もできるだけわかりやすく、と心を配りました。カテゴリーをポリシ、プロシージャ、フォーム、と分類し、全21個のドキュメントが完成致しました。これらはドラフト公開後のご意見募集でいただいた点を反映して皆様にとって、少しでも使いやすいものになったら、と願っております。JPNIC では会員の方々にとってより良い、また世界のインターネットコミュニティににとって益となるような形でのサービスを心がけていきたいと思っております。
皆様のご理解とご協力をどうぞよろしくお願い致します。