ニュースレターNo.18/2000年12月発行
1 巻頭言: JPNICの広報、教育活動について English Page
理事 坂田 信夫
私がJPNICの理事を務めさせていただくようになってから、早いものでもう3年半経った。今年からJPNICの運営体制が変わって、新しい部会組織と担当理事制が導入されることになり、私は広報教育検討部会を担当することになった。広報、教育、何れも会社の中では自分の担当外の分野であり、これといった専門知識や経験がある訳ではないが、企業人の視点からJPNICの広報・教育活動に対し何か助言できればと思い、お引き受けすることにした。この半年間の活動を通じて感じたことを以下に述べてみたい。
今年はJPNICの長年の活動の中でも、とりわけ重要なイベントが目白押しの年といえる。JPドメイン名紛争処理方針(DRP)や汎用JPドメイン名の導入など、広くインターネットの利用者に影響を与える方針が決定され、運用されることになっている。また、今年の夏にINET2000,ICANNなど、インターネット関係の重要な国際会議が相次いで日本で開催されたことは記憶に新しい。
従来、JPNICはISPなどインターネットの専門家には認知された存在であっても、ISPの顧客である一般のインターネット利用者にとっては必ずしも知名度の高い存在ではなかった。そのため、JPNICの広報活動も、ISPが大半を占めるJPNIC会員や企業のネットワーク運用管理者に照準を当てたものが多かった。しかし、上述のDRPや汎用JPドメイン名は、エンドユーザである一般企業や個人のビジネスにも大きな影響を与えるものであり、JPNICの活動をより広く世の中一般の人々に知ってもらうことが、これまで以上に重要になってきた。このような意味で、JPNICの広報活動は大きな転換期を迎えているといえる。
先日ある企業の広報担当課長を講師としてお招きし、事務局スタッフと一緒に広報についての勉強会を行った。その時に、「広報」と「宣伝」との違いは何かということが話題になった。私は長年の会社勤めで「広報」と「宣伝」の違いについては何となく分かっていたつもりであったが、今回初めて両者の本質的な違いを教えていただき良い勉強になった。その違いとは、「広報」はあくまでもマスメディアに対する情報発信で、マスメディアによって公衆に伝えられる情報の責任の所在はマスメディアにあること、一方、「宣伝」はマスメディアを媒体とする公衆への直接的な情報発信で、その情報に対する責任は情報発信源である企業・団体にあるということである。
このような意味から考えると、JPNICの広報活動は、一般企業の場合の広報、宣伝、両方の要素を含んだものとして捉えなければならないし、またそれを効果的に行うための戦略も必要になってくる。しかし、現在のJPNICには組織的に広報、宣伝を専任で担当する部署はなく、予算も潤沢にある訳ではない。また、広報や宣伝の専門的スキルを持ちあわせた職員もいないという状況である。
現在、他の業務も兼務している事務局スタッフとボランティアベースの広報教育検討部会メンバーが中心になって、ホームページでの情報発信の充実、ニュースレターの効果的な配布方法の検討、広報に関するポリシー策定などに取り組んでいるが、今後のJPNICの活動を考えると、広報・宣伝に関する組織体制の確立が急務といえる。
広報教育検討部会のもう一つの大きなミッションである教育については、商業ベースの各種セミナー等とは違った特徴を出すようにしている。
昨年に引き続き本年8月に開催したSummer Forumでは「危機管理」を取り上げ、専門家による講演と参加者によるディスカッションを行った。参加者の数自体は必ずしも多いとはいえないが、参加者の意識は高く、充実した内容の会合であった。この他に、年間恒例の行事としてはInternet Weekがあり、最後にこのイベントの紹介をして筆をおきたい。
今年の Internet Week 2000 は12月18日から21日までの4日間、大阪国際会議場で開催される。JPNICは昨年に引き続きこのイベントを主催することになり、円滑な運営を目指して準備を進めてきた。今までJPNICは教育活動の一環としてこのイベントに参加しており、今年も以下に記すようにJPNICからチュートリアルの講師を派遣したり、JPNIC自身によるセミナーを開催する予定である。
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JPNIC職員によるチュートリアル
- IPv6入門
- 3時間でわかるドメイン名とIPアドレス
- インターネットの基礎知識
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JPNIC自身によるセミナー
- 新JPドメイン名概説
- DNSミーティング- 汎用JPドメイン名とDNS-
- DOMAIN-TALK オフラインミーティング
- IP-USERS オフラインミーティング
Internet Weekは技術者向けの非営利イベントとして、商業ベースのものとは一線を画した存在となっている。このイベントを今後益々発展させ内容を充実していくために、JPNICは力を注いでいきたいと考えている。これ以外にも、更に多くの方々に参加していただけるイベント作りを目指していくので、皆様のご理解とご支援をお願いする次第である。
※ Internet Week 2000に関する詳細は 第5章 「トピックス」5-4「Internet Week 2000開催のお知らせ」をご覧ください。