ニュースレターNo20/2002年3月発行
3 特集2:IPv6レポート
3-2 IPv6の普及・推進活動
次に、JPNICがオブザーバーとして参加しているIPv6普及・高度化推進協議会のこれまでの活動および今後の取り組みについてご紹介いたします。
IPv6普及・高度化推進協議会は、2000年10月に18の企業と大学を会員として設立されました。近年社会的にIPv6への関心やニーズが高まってきたことを踏まえ、さらに通信・放送機構(TAO)による情報家電インターネット実証実験が開始されたことがきっかけとなり、2001年10月に第三回総会を開催し、規約の制定、役員の選出などで機能拡充しました。この際に4000社以上へのDM配布、関係報道機関へのプレスリリース等を積極的に行い100会員以上の新規参加を得て本格的な普及推進活動をスタートしました。e-Japan戦略の目標である2005年度までに、以下のような活動成果をあげることを目標としています。
- わが国がインターネットにおける国際的なリーダーシップを発揮できるような存在となる
- 高度情報社会基盤を持続発展させるための豊富な人材が育成される
- ネットワークや端末などに関わるハード・ソフトおよびサービスに関わる多様な産業が新興・活性化する
TAOや総務省と連携して情報家電インターネット実証実験を推進する他、IPv6への移行期におけるアドレス管理の在り方の検討、IPv4アドレスの枯渇状況やIPv6アドレスへのニーズに関する調査研究、海外のIPv6普及プロジェクトとの協力、イベントへの出展やショールームの設置・運営など、IPv6普及促進を目的とした諸事業を展開しています。
その成果は、各会員と密接に連動しつつ積極的に報道機関等へリリースするとともに、協議会のwebページ(http://www.v6pc.jp/ )にて、一般に広く公開しています。
2001年11月の理事会では、IPv6関連の海外での活動が活発化していることを受け、海外戦略ワーキンググループが新たに設置され、中国を始めとするアジア地域やEU、北米地域とのIPv6に関する協議を積極的に展開していくこととなりました。海外との協議を行うためには後援会員であるJPNICやIAjapanとの連携を一層強める必要があり、協議会事業として最も重要なものの一つです。
2001年12月15、16日に開催された「Net.Liferium 2001」では、会員による展示を取りまとめた協議会ブースを出展するとともに、倉木麻衣さんらの協力を得て世界初のIPv6によるネットライブを成功させスポーツ誌を始めとして多くの方々の注目を集めました。展示ブースでは1400名からの入場者アンケートも寄せられ、別途行っている企業アンケート調査の結果等を含めて総合的な分析を行っています。
12月26日には、セキュリティ・ワーキンググループ設置に伴う、事前ミーティングを開催しました。セキュリティ・ワーキンググループとは、IPv6を議論する上で常に最も重要な論点としてあげられるセキュリティに関する問題に取り組むため、これらの情報交換とポリシーの研究を行う場として設置されたものです。事前ミーティングでは、
- 社会基盤となったときの問題整理
- セキュリティモデルの検討
- PL法関連と責任分界点の整理
- トポロジー研究
- 普及促進する上で早期に必要な製品の検討
などを主な論点として扱っていくことを確認しました。今後、本格的にワーキンググループを開催して具体的な検討を進めていく予定です。
2002年1月の理事会では、大規模IPv4アドレス空間実験における臨時IPv4アドレスの割り当て規則が決定されました。IPv6アドレスへの移行を前提として臨時のIPv4アドレスを通信事業者に割り当てるものですが、割り当て対象となるIPv4アドレスを管理しているWIDE Projectと協議会が覚書を交わすことで、協議会がアドレスの管理権限の委託を受け、臨時IPv4アドレスを付与される各通信事業者と協議会が指定事業者契約を締結する形式となっています。
また、この理事会では、アプリケーション・ワーキンググループの下にテレコン・サブワーキンググループの設置も報告され、
- IPv6によるテレコンシステムのプラットフォーム提供とライフライン分野への適用によるインターネットを意識しないインターネット利用の促進
- 上位接続へのアクセス系の柔軟性
- メータ等への下位接続にIEEE802系、RS485、電力線、無線等を活用したの低価格化
などを主な検討のポイントとして、コンソーシアム方式で推進していくこととなっています。
一方、2001年12月にIPv6技術の体験スペースとしてショールーム「GALLERIA v6(ガレリア・ブイ・シックス)-インターネット新体験ゾーン-」を設置し、段階的に展示機器や通信環境の整備を進めてきています。ショールームは協議会が通信・放送機構や総務省と連携して推進している情報家電のIPv6化に関する実証実験の成果を広く公開し体験していただくための場で、かつIPv6に関する普及・広報を幅広く展開することを目的とした常設展示スペースです。ショールームが設置されているのは東京都内の大手町と有楽町、大阪市内のなんばと大阪ビジネスパーク(OBP)および札幌の計5ヶ所で、有楽町、なんばおよび札幌については(株)ビックピーカン、大手町およびOBPについては(株)ダウンロードステーションの協力を受けて運営を行っています。実験に必要なサーバ類が収納されている大手町データセンターを中心として、各ショールームが100Mbpsクラスの高速回線で接続されており、それぞれIPv6→IPv4のトンネリングサービス等によってIPv6もIPv4も利用できる環境となっています。各ショールームではこれらの機器やサービスを自由に体験できるようになっているだけでなく、各機器の使用方法や簡単なIPv6技術の解説ができる説明スタッフを常駐させるなど、幅広い層に向けたIPv6のプロモーションに努めています。また、今後協議会を中心に企画を行っている小規模なネットライブやトークセッション等のイベントにおいて活用し、その成果も会員を始めとして広く公開していく予定です。
2002年2月からは、情報家電のIPv6化に関する実証実験の集大成ともいえる一般公募モニターによる実証実験が段階的にスタートしています。モニター実験とは、今年度の成果物であるIPv6対応機器のうち、7機種(情報家電コントローラ、“PlayStation 2”(ネットコミュニティーソフトウェア付)、IP電話ソフトウェア、IP電話機、VoIP電話アダプタ、モバイルビューア、ネットワークリモコン)のいずれかの機器をモニターに使用していただき、有効性や操作感などを調査するものです。
モニターはADSL、CATVあるいはFTTH上で、各ISPが試験提供(一部、商用サービス化済)するIPv6接続サービスを利用して接続しています(ネットワーク構成上必要な場合、IPv6対応のホームルータを貸与)。現在、各モニターに対し個別に接続支援作業および接続環境の調整を進めており、環境が整い次第モニター集会を開催したり、アンケートを実施したりして様々な意見を集約し知識の交流と蓄積を図っていきます。実験は3月一杯まで行われ、その後、5月中までに成果発表を行う予定です。
今後も、ITSや都市施設管理、医療福祉といったIPv6の応用分野の実証実験についての研究と普及推進活動を進め、IPv6によるインターネットが21世紀の新しい社会基盤として広く浸透していくよう、諸機関と密接に連携しながら積極的に活動を展開していく予定です。なお、2002年5月に北京で開催予定のGlobal IPv6 Summit 2002 Beijingには積極的に協力していくことが2月28日の理事会で議論されました。同理事会で新会員が承認され、現在の会員数は247会員となっています。