ニュースレターNo.23/2003年3月発行
Internet Week 2002
1.全体概要
2002年12月16日(月)から20日(金)までの5日間にわたり、パシフィコ横浜にてInternet Week 2002が開催されました。Internet Weekの形態になって今回で6回目を迎え、年々12月の恒例行事として定着化してきているのは運営している側として、大変うれしくまた励みになります。
ご参加いただきました皆さま、どうもありがとうございました。またこの記事を読んで「Internet Week」がどのようなイベントかがなんとなくつかめた、という方、ぜひInternet Week 2003にご参加ください。
総合受付。大変な盛況ぶりです |
●チュートリアルの充実
全体的な印象としては、チュートリアルが大変好評であったことが挙げられます。やや初心者向けのビギナーズ5セッション、一般のチュートリアルが23セッションの計28セッションが行われ、うち3つのセッションが満席になりました。セキュリティ関連はチュートリアルに限らず他のプログラムでも事前申込の段階でほぼ満席の状態で、技術者の意識の強さを感じました。また、DNSに関するプログラムも前回に引き続き大変好評でした。
参加者のニーズに応えた内容のセレクトはとても難しいものですが、今回はプログラム委員会が時間をかけて議論した甲斐があったのではないかと思います。今後も皆さまに「参加してよかった」と実感していただける内容を提供してまいりたいと思います。
なお、今回はチュートリアル資料の販売数も非常に多かったことも特徴の一つです。資料はJPNICのWebページに掲載しておりますのでご覧ください。
- Internet Week 2002チュートリアル資料
- http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2002/proceeding/index.html
●受付システムの一新
今回から受付システムを、ICチップ内蔵のネームカード形式に変更しました。受付用端末をカードに近づけるとカード持参者がプログラムに申し込んでいるかどうか、受付を済ましているかどうかなどのデータが読み取れるようになっているものです。これによって名簿との照合の必要がなくなり、受付時間が短縮されるとともにスムーズになりました。また、以前は参加プログラムごとのネームカードを参加者に送付してましたので、参加プログラムが多い場合は混乱を招く元となっておりましたが、これも1枚のカードで済ませられるようになりました。
●無線LANの導入
今回初めて会場内に無線LANを敷設しました。従来は有線のアクセスコーナーでしかインターネット接続ができませんでしたが、現状の接続利用状況から検討して無線も導入しました。皆さまご利用いただけましたでしょうか。
眺めのよいアクセスコーナー |
●次回の予告
2003年は 12月1日(月)~5日(金)の5日間、同じくパシフィコ横浜にて開催する予定です。詳細は2003年9月頃にWebなどでお知らせいたします。次回も多くの方のご参加を心よりお待ちしております。
さて総括はこの程度にとどめ、次にJPNICが開催した3つのプログラムの報告をいたします。
(JPNIC 広報教育課 岡部ちぐさ)
2.メインプログラム報告
●第3回JPNIC Open Policy Meeting
日時:2002年12月16日(月) 9:30-17:00参加者数:98名
JPNIC Open Policy Meetingは、参加者からのプレゼンテーションをもとにIPアドレスの管理・運用について議論を行い、日本国内でのコンセンサスを形成していくミーティングです。また、このミーティングでは上位組織であるAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)での状況等も紹介しています。
今回のミーティングでは提案が2件、報告が4件行われ、また「IPアドレス管理コミュニティから見たICANN改革」および「IPv6ポリシー」についてのパネルディスカッションも行われました。会場からは家電等、従来のISP事業ではないサービスへのIPv6アドレスの割り当てについて特に多くの質問やコメントが寄せられました。今後も継続してさまざまな方のご意見をいただくため、JPNICはワーキングループの設立を検討してまいります。
また、LIR(Local Internet Registry)による再割り振りの実装方法や課題については、IP-USERSのメーリングリストで議論を行うことが決定し、日本のアドレスコミュニティの皆様にポリシー実装までの過程に参加していただくことになりました。
今回のミーティングでのIP指定事業者の業務に直接影響を及ぼす決定事項としては、以下の2点が挙げられます。
・AS情報におけるAS-IN/AS-OUTの項目の公開について
JPNICによる「第14回 APNIC Open Policy Meetingのご報告」後、APNICと異なったポリシーでJPNICが運用していることについて議論となりました。
【結論】
APNICとポリシーを合わせ、AS情報におけるAS-IN/AS-OUTの項目を登録時には空欄とします。
・JP地域でのダウンストリームアロケーション
APNICでは2002年12月より、LIRがその配下のISPに対して割り振りを行うことを可能とするポリシーを適用しています。ポリシーの概要、IP指定事業者へのアンケート結果、実装に伴う課題等がJPNICより紹介され、今後の方向性について参加者の意見が求められました。
【結論】
実装に伴う課題をIP-USERSのメーリングリストで継続議論を行い、課題が解決したら実装します。
その他決定事項および議論の詳細につきましては以下のURLをご参照ください。
- JPNIC Open Policy Meeting on Internet Week 2002
- http://www.nic.ad.jp/ja/materials/ip-users/200212/ip-users-index-2002.html
なお、ポリシーについての議論はJPNIC Open Policy Meetingのみではなく、IP-USERSのメーリングリストでも行っています。興味のある方は是非ご登録ください。
- IP-USERSメーリングリスト
- http://www.nic.ad.jp/ja/profile/ml.html#ip
また今後のミーティングでは、たとえば事前にプレゼンテーションを公開する等、より多くの参加者からコメントをいただける仕組みを継続して検討していく予定です。
(JPNIC IP事業部 奥谷泉)
会場入口の看板 |
●ドメイン名に関する最新動向
日時:2002年12月16日(月) 9:30-17:00参加者数:140名
Internet Week 2002の初日、JPNICによるメインプログラムである「ドメイン名に関する最新動向」が開催されました。朝早くから多くの方に参加していただき、会場からは多くの質問が寄せられて、プログラムは活気のあるものとなりました。以下、プログラムの内容について、簡単にご紹介いたします。
1)ccTLDの動向
JPNICの是枝祐から、ICANNと各ccTLD管理組織との間で締結されるccTLDスポンサ契約の形態やその契約状況についての説明が行われ、続いて株式会社日本レジストリサービス(以下、JPRS)の長谷川早苗氏から「.JP」の動向として、JPドメイン名の現状や地方公共団体向けに新設された「LG.JP」についての解説が行われました。
2)国際化ドメイン名(IDN)について
JPRSの森健太郎氏および宇井隆晴氏から、IDNのプロトコルに関する議論やその標準化、アプリケーションの対応、活用事例などについての説明がなされました。日本語JPドメイン名の登録数は全JPドメイン名の10%を占めており、会場からの質問も、その標準化に対する期待の高さがうかがえるものでした。
3)WHOISによる情報提供
引き続いて宇井氏から、WHOISによる登録情報公開の原則と情報公開による弊害、個人情報保護に対する社会的要請など、各国での議論や法制化の情勢を交えての解説が行われました。各国のインターネットユーザーから利用されるWHOISだけに、情報公開および情報保護に関する国際的コンセンサスと各国の実情とのバランスが今後の課題といえそうです。
4)ICANN改革の動向
このプログラムの前日、ICANN年次総会理事会で新付属定款の移行条項が採択され、ICANN改革も大きなマイルストーンを迎えました。そのICANN改革の経緯や新体制についてのJPNICの大橋からの説明に続いて、JPNIC IPv6担当理事の荒野高志から、IPアドレスコミュニティから見たICANN改革に関して、地域IPアドレスレジストリ(RIRs)からの提案内容を含めての説明がなされました。ドメイン名の側面からインターネットを見ている人にとっては、IPアドレスの側から見たICANNの姿に触れるよい機会でした。
5)gTLDの動向
Duane Connelly氏(PSI-Japan)によるgTLD全般の解説に続いて、Jeongjun Seo氏(VeriSignGRS)からVeriSignのIDNに対する取り組みについて、Roland A.LaPlante氏(Afilias)からgTLDのマーケット情勢や「.INFO」「.ORG」について、Allan Van Buhler氏(Global Name Registry)からは「.NAME」の特色についてなどの説明がなされました。各gTLDレジストリの取り組みや着眼点の違いにそれぞれの特色があり、比較的なじみの薄い「.NAME」については、多くの質問が寄せられました。
6)ドメイン名紛争処理の動向
ドメイン名紛争処理の歴史やJPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)の現状など、JPNIC DRP担当理事の丸山直昌からの解説に続いて、ドメイン名紛争の事例紹介として、「IYBANK.CO.JP」事件の被告側訴訟代理人弁護士である下河邊由香氏と、「MP3.CO.JP」事件の原告側訴訟代理人弁護士である小倉秀夫氏から、それぞれの事件の経緯や判決に至るポイントについての解説がわかりやすく行われました。
このプログラムは、以上のようにドメイン名に関連のあるさまざまなテーマを取上げて行われました。JPNICでは、アンケートで寄せられたさまざまなご意見を参考にさせていただきながら、今後もこのような情報提供の場を設けていきたいと思います。
(JPNIC ドメイン名事業部 大橋徹)
ドメイン名に関する最新動向の様子 |
●DNS DAY
日時:2002年12月19日(木) 9:30-17:00参加者数:212名
2001年に開催した「DNS meeting」は大変ご好評をいただきました。そこで2002年はプログラム名を「DNS DAY」とし、午前・午後の2部制による終日開催といたしました。
【午前の部(司会進行:森下泰宏)】
- 1)DNS関連最新トピックス
- ・ENUM(Telephone Number Mapping) 藤原和典氏(JPRS)
- ・IDN(国際化ドメイン名) 米谷嘉朗氏(NTTソフトウェア(株)/JPNIC IDN-TF)
- 2)DNS運用レポート
- ・Root DNS update 加藤朗氏(WIDE Project/東京大学)
- ・JP DNS update 佐藤新太氏(JPRS)
- ・DNS measurement 白井出氏(JPRS)
- 3)活動報告
- ・DNSQC-TF(DNS運用健全化タスクフォース)report 石田慶樹氏(メディアエクスチェンジ(株)/JPNIC DNSQC-TF)
午前の部ではまず、DNSに関連する技術であるENUMおよびIDNについて、それぞれの分野の専門家の方々に発表いただきました。ENUMについては、その背景・動機、実際のENUMで使用されるNAPTR(Naming Authority Pointer)やDDDS(Dynamic Delegation Discovery System)に関する技術解説、およびENUMが実際に運用された場合にDNSに与える影響範囲について解説いただきました。IDNについては、IDNを実現するための技術解説と標準化の現状、およびRFC発行後に必要となる、DNSサーバの設定の並行運用の手順について解説いただきました。
続いてルートサーバ、JPサーバ等の重要なDNSサーバに関する技術運用レポートを、各サーバを管理運用されているオペレータの方々に報告いただきました。ここでは、各サーバにおける最近のトラフィック量やその傾向の現状、2002年1月から2月にかけて起こったBIND 8.3.0によるDNS storm、10月に起こったroot serverへのDoS攻撃、11月のJ root serverのIPアドレス変更等が話題となりました。またJP DNS serverのトラフィック傾向から読み取れる各種事項、および世界各地からみたJP DNSサーバの見え方の現状について解説いただきました。
その後、DNSQC-TFの活動報告が行われました。本タスクフォースはJPドメインに関するDNS運用の健全化を目的として、2002年5月にJPNIC、JPRS、WIDE Projectの3者が共同して活動を開始したものです。活動内容の詳細については以下のWebページもご参照ください。
- ネームサーバの適切な設定に向けて
- http://www.nic.ad.jp/ja/dnsqc/
【午後の部(司会進行:石田慶樹氏)】
- 1)特集「よりよいDNS運用のために」
- ・DNS再入門 森下泰宏(JPRS)
- ・DNS設定におけるよくある間違い&DNS設定チェックリスト 伊藤高一氏((株)インターネット総合研究所)
- ・DNSを「きちんと」設定しよう 民田雅人氏(WIDE Project/松井証券(株))
午後の部では「よりよいDNS運用のために」と題し、DNSQC-TFの目的でもあるDNS運用の健全化に向けて、DNSの管理運用を長年にわたって経験されている専門家の方々に、チュートリアル形式でご発表いただきました。
まず、普段何気なく行っているDNS設定が実際にどういうことを意味しているのかについて解説し、現在のDNSの運用・実装上におけるいくつかの問題について解説しました。そのうえで、DNSを設定するにあたってのよくある間違いやチェックすべき注意点についてQ&A形式で解説し、最後に実際にDNSサーバを設定する場合の適切な設定方法について、実際の設定ファイル例を示しながら具体的に解説いただきました。
今回のDNS DAYでは、2001年のDNS meetingを大幅に上回る大変多くの方々のご参加をいただき、午前・午後を通じて大変活発な議論・質問をいただきました。当日ご参加いただいた方々には、この場を借りて再度お礼を申し上げます。今後もこのような、実際に最先端の研究や大規模サーバの運用にかかわっている担当者の方々と情報交換ができる機会を積極的に開設していければと考えています。
((株)日本レジストリサービス 森下泰宏)