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ニュースレターNo.24/2003年7月発行

IPレジストリ訪問記

2003年1月から3月にかけ、JPNIC職員がIPアドレス関連業務調査および情報収集を目的に、世界各地域の地域インターネットレジストリ(RIR)、および国別インターネットレジストリ(NIR)を訪問しました。訪問時の様子および他国のIPアドレス管理の状況について簡単にご紹介します。

◆RIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)

2003年1月27日にRIPE NCCを訪問しました。RIPE NCCは、ヨーロッパ、中近東、北アフリカ、アジアの一部を受け持つRIRで、オフィスはオランダのアムステルダムにあります。

RIPE NCCは会員数が多い(約3,200会員)ことと、管轄地域が広範囲にわたることからか、会員のトレーニングには特に力を入れており、オフィスにはトレーニング専用の部屋も用意されています。

RIPE NCCではIPアドレス資源管理そのものというよりは、情報公開や各種ツールの作成により力を入れており、「New Project Team」なる組織で各プロジェクトの推進にあたっています。

RIPE NCC
http://www.ripe.net/

◆ARIN (American Registry for Internet Numbers)

2003年2月20日にARINを訪問しました。ARINは北米大陸、カリブ海周辺、サハラ以南のアフリカ大陸を受け持つRIRで、米国ワシントンDC近郊にオフィスを構えています。

ARINが他のレジストリと大きく違う点は、アサインメントウィンドウ※1という概念がないというところだろうと思われます。従って、ローカルインターネットレジストリ(LIR)※2からエンドユーザーに対する割り当ての際、ARINに対してLIRからの割り当て審議申請は原則不要となります(ただし、/19以上の割り当てを行う際については、まずARINの許可を得る必要はあります。)

また、会員向けのトレーニング方法もRIPE NCCやAPNICとは違い、CD-ROMに収められた専用ソフトで実施しています。

ARIN
http://www.arin.net/

◆APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)

2003年2月6日にオーストラリア北部にあるクイーンズランド州の州都、ブリスベンに位置するAPNICを訪問しました。APNICはアジア太平洋地域を受け持つRIRで、マダガスカルやアフガニスタンからトンガまで広い範囲を管轄し、会員のトレーニングを域内の各地で行っています。JPNICはAPNIC会員であり、その中でも最も大規模な会員の一つとなっています。

今回APNICでは主にレジストリシステムについての調査を行いました。ウェブによる会員向け情報開示システムであるMyAPNIC、申請/問い合わせ追跡システムなど優れたシステムを見せていただきました。中核となるレジストリシステムがすでにIPv6対応となっているのが特色です。

APNIC
http://www.apnic.net/
図:RIRの管轄地域
RIRの管轄地域 ※APNICの資料を基に作成

◆KRNIC (Korea Network Information Center)

2003年2月4日に、韓国のNIRであるKRNICを訪問しました。訪問の前週にちょうどSQL Slammerが韓国のインターネットインフラに多大な影響を与えた事件がありましたが、韓国では同国のCERT組織であるKISA※3が同事件の対応を行っており、KRNIC内での混乱は特になかったようでした。

KRNICはアサインメントウィンドウの運用に特色が見られます。JPNICではアサインメントウィンドウはアドレス割り当て審議および割り振り審議が完了する毎に更新が検討されますが、KRNICでは更新は1年に1回となっており、運用の考え方の違いを実感しました。

KRNIC
http://www.nic.or.kr/

◆TWNIC (Taiwan Network Information Center)

2003年2月13日に、台湾のNIRであるTWNICを訪問しました。TWNICでは、新しくLIRになろうとする際の手続きに特色があります。新規にLIRになろうとする事業者は、自身のアドレス割り当てのポリシーや国内・海外との接続回線の帯域等の情報をTWNICに提出し、事務局ではなくIPアドレス委員会の審査を受け、同委員会からの承認を得る、という手続きを経る必要があります。

また、TWNICではAPNICとの業務を調整しやすいように、各種申請フォームは英語のみの提供となっていることも、他のNIRとは異なる点と思われます。

TWNIC
http://www.twnic.net.tw/
写真:KRNICにて
TWNICにて

◆所感

アドレス資源管理のやり方は各地域毎に微妙に異なっており、JPNICの運用の方が優れているものもあれば、逆に見習わなければならない事項についても知見を得て、JPNIC内へもフィードバックすることができ、非常に有益な訪問となりました。今後ともこのような交流、情報交換は継続して行っていくべきと強く感じています。

この経験を通じ、より適正、円滑な資源管理業務を目指してJPNICのサービス品質向上へつなげたいと思います。

(JPNIC IP事業部 穂坂俊之 ※「APNIC」のみJPNIC 技術部 山崎信)

写真:ARINにて
ARINにて。前列左が山崎。右が穂坂

※1 アサインメントウィンドウ:
LIRがその接続組織に、上位レジストリの審議を受けることなく、自主的に割り当てることができる最大のアドレス空間の大きさを示すものです。
※2 ローカルインターネットレジストリ(LIR):
主として自分が提供するネットワークサービスのユーザーにアドレス空間を割り当てる事業者で、JPNICではIP指定事業者がこれにあたります。
※3 KISA:
Korea Information Security Agency

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