ニュースレターNo.27/2004年7月発行
新IPv6アドレスポリシーへの取り組み
IPv6の特徴の一つとして、そのアドレス数の多さが挙げられます。この膨大なアドレス空間を利用することで、パーソナルコンピュータが中心である現在のインターネット利用状況の枠を飛び越えた新たな応用への発展が期待されています。そのような利用方法の一つとして、製品のシリアル番号といった識別子、自動車・交通システムでの利用など、あらかじめ製品にアドレスを埋め込んでの利用が考えられます。JPNICにて、家電業界をはじめとする数社にヒアリングを実施した結果でも、
- IPv6アドレスをシリアル番号等の製品識別子に利用したい
- 利用の際には製品にあらかじめアドレス(識別子)を付与しておきたい
といったニーズがあることが確認できています。また、IPv6普及・推進協議会(http://www.v6pc.jp/jp/)より、センサー等の機器に対してIPv6アドレスを割り当てるニーズがあることも報告されています。
アドレスの割り振りについて考えますと、現在のIPv6アドレスは、IPv4アドレスと同様にISPを中心とした割り振りが実施されています。すなわち、上述したような、アドレスをシリアル番号等の製品識別子に利用する、といった新たなIPv6アドレス割り振りのニーズに対しては、現状のアドレスポリシーではIPアドレスの割り当てとインターネット接続性との関連が強く意識されているため、アドレスを割り振ることは難しい状況であると考えられます。
このような新たなニーズが具現化した際に即座に対応できるよう、JPNICでは「IPv6アドレスポリシー企画策定専門家チーム」を組織し、ISPを経由しないアドレス割り振りの技術的実現性の検討、IPv6アドレスポリシー改訂の要否検討を実施しました。検討の結果、製品の識別子等、機器固有のIDとしてIPv6 アドレスを固定的に割り当てて利用した場合でも、
- 技術的には、モバイルIPやVPNトンネリング等を用いることにより割り当てたIPv6アドレスに対する接続性を提供することは可能
- 現実に実装する場合には、
- モバイルIPなどのノードに事前にアドレスを割り当て、そのアドレスに対するインターネット接続性を提供する機構を実装するコストや、機器に組み込む際のプログラム量
- 対象物が膨大な数になることを考慮に入れた利用技術のスケーラビリティ
- 対象物に対するアクセスのセキュリティ、対象物所有者のプライバシー等を考慮する必要がある - アドレスポリシーの観点からは、接続性が提供できる前提に立つと、取得を希望する組織がサービスプロバイダとなるモデルであれば、現行のIPv6アドレスポリシーの範囲でも取得が可能と考えられるため早急な改変の必要性は低いが、今後の具体的な要求とあわせて検討していく必要がある
という結論が得られています。また、専門家チームからJPNICに対し、「JPNICとしてIPv6利用をさらに促進するという観点からも、IPv6アドレスの取得だけを目的とする組織がJPNICのIPアドレス管理指定事業者になれるような仕組みを検討すべきである」という提言を行いました。
このようなIPv6アドレスの新しい利用方法を可能とするアドレスポリシーに関しては、IPv6普及・高度化推進協議会のリモコンノードSWGにおいても検討されており、検討の報告が下記webページに公開されています。
http://www.v6pc.jp/jp/wg/remoteSWG/
今後も、新サービス市場の動向把握に努め、新たなサービスに対してその時々のアドレスポリシーが整合しているかどうかを時宜に応じて検証していきたいと考えています。
(JPNIC IPv6アドレスポリシー企画策定専門家チームチェア/NTT情報流通プラットフォーム研究所 藤崎智宏)
参照URL
- IPv6の新しいアドレス利用形態に関する報告書
- http://www.nic.ad.jp/ja/research/newusageipv6/