ニュースレターNo.27/2004年7月発行
ICANNローマ会議
3月2日~6日にかけてイタリア・ローマでICANNローマ会議が開催されました。最終日に行われた理事会での決議事項の中から主なものをご紹介します。
◆VeriSignによるWait Listing Service(WLS)導入提案
Wait Listing Service(WLS)とは、VeriSignが以前から導入を提案しているドメイン名の予約サービスのことで、希望する.com/.netドメイン名が既に他者によって登録されている場合、レジストラを通して予約を行うことで、そのドメイン名が削除され次第直ちに登録できるようにするというものです。
ドメイン名の予約については、すでに複数のレジストラがそれぞれ個別のサービスを提供していますが、レジストラレベルで提供される予約サービスの場合、レジストリによって削除され、誰もが登録可能なオープンな状態になったドメイン名を各レジストラが競って獲得しようとするため、顧客は一つのレジストラを通してドメイン名の予約をしたとしても、確実にそのドメイン名を入手できる保証はありません。
一方、VeriSignが提案するWLSは、レジストリレベルで単一の予約リストを管理するため、複数のレジストラ間で予約が重複するという事態が発生せず、顧客は100%の確率で予約したドメイン名を入手できるようになります。しかし、こうしたサービスがレジストリレベルで導入されると、健全な競争環境が阻害され、レジストリによる不当な独占状態を招くとして、複数のレジストラやリセラがWLS導入への反対運動を起こしており、一部では訴訟も発生しています。
ICANNでは、こうしたコミュニティの反応も考慮の上、2002年8月に条件付きでWLSの導入を承認しましたが、以降、この条件の中身についてICANNとVeriSignとの間で交渉が繰り返され、これまで未解決の状態が続いていました。
今回のローマ会議では、2日間にわたるPublic Forumで、WLSに関して賛成・反対の表明を行うレジストラが続出し、また、会場ロビーで「WLS反対」のステッカーを参加者に配布するグループも見受けられるなど、この問題についての関心の高さがうかがえました。最終日の理事会では、ICANN-VeriSign間での最終的な交渉結果が承認され、今後は、WLSの実施に向けて、.com/.netレジストリ契約改定の承認を米国商務省に対して要請することになります。
◆国コードドメイン名支持組織(ccNSO)の結成
ICANN改革の議論の結果、新たに設立されることになった国コードドメイン名支持組織(ccNSO)は、30名のccTLD管理者(世界5地域それぞれから4名以上)が参加した時点で結成されるという規定により、その結成にまで至っていませんでした。
2004年3月1日、これまでccNSO結成に向けて活動してきたccNSO立ち上げグループより、30名を超えるccTLD管理者の参加をもってccNSOが結成された旨の発表があったことから、今回の理事会でccNSO結成の承認が決議されました。ccNSOでは、これよりccNSO評議会メンバーの選出に取り組むことになり、次回7月のクアラルンプール会議までに作業を終えることが期待されています。
◆.netの後継レジストリ指名プロセスの開始
現在、ICANNとVeriSignとの間で締結されている.netレジストリ契約の有効期限が2005年6月30日で終了することから、ICANNは、契約終了の1年前(2004年6月30日)までに.netの後継レジストリを指名する必要があります。今回の理事会決議により、後継レジストリ指名のためのプロセスが事務総長によって開始されることになりました。
(JPNIC ドメイン名事業部 入交尚子)