ニュースレターNo.28/2004年11月発行
ENUMトライアルジャパン(ETJP:ENUM Trial Japan)の活動報告ならびに設置期間の1年間延長について
ENUMは、「電話番号」と「インターネットアドレス」との対応づけを行う仕組みです。具体的には、電話番号を用いてDNSを検索することにより、その電話番号に対応づけて登録されている、Webやメール等のインターネット上の通信アプリケーションとの呼応がURI形式で得られ、そのサービスへのアクセスが可能になるというものです。こういうとわかりにくいかもしれませんが、ENUMを利用すると、相手の電話番号さえ知ることができれば、その時点でその人が利用可能としているIPネットワーク上の電話やメール等のアプリケーションへの接続が可能になります。こうしたことから、インターネット電話を実現するための技術の一つだと言われています。
JPNICでは、このENUMという技術に注目し、2002年の9月には、「ENUM研究グループ」を事務局として立ち上げ、ENUMの技術や運用についての検討を始めました。しかしながら、その場での検討はあくまでも机上のものであったこともあり、1年後の2003年9月には、このENUMの「実証実験:トライアル」の必要性を感じ、任意団体である「ETJP」の立ち上げに、発起人の1人として参画することとなりました。
ETJPは、具体的には、以下3つの事項の検証と検討を行うと宣言しています。一つ目は、DNSによる基盤サービスから通信アプリケーション・通信サービスまでを含めた「基本機能の技術的検証」、二つ目は「実用性の技術的検証」、三つ目は「サービス化に向けた技術的課題の整理と検討」です。こうした目的に賛同したメンバーは設立当初は、20会員でしたが、1年経過した2004年9月末には、45会員に倍増しています。
ETJPでは、その3つの目的を達成する為、実験を3段階に分けて進めてまいりました。
- ■フェーズ1
- 通信アプリケーション接続実験(~2003年11月)
- 最小構成のENUM DNSを構築し、通信アプリケーションの動作検証を行う
- ■フェーズ2
- 通信サービス実験(~2004年4月)
- ENUM DNSを階層的に構築し、連携する通信アプリケーションの動作確認を行う
- ■フェーズ3
- 通信サービス間相互接続の実験(~2004年9月)
- ユーザのサービス契約から通信までの一連の動作検証、並びに諸外国のトライアルとの連携
フェーズ1に関しては、ENUM DNSを構築し、VoIP☆1ルータ・SIP☆2サーバ・ソフトフォン・FAX等のアプリケーションとの動作確認を行いました。フェーズ2に関しては、ENUM DNSのTier(階層)分割とDNSSEC☆3対応を行いました。また、RFID☆4を使ってのワンナンバー着信などの実験も行いました。但し、フェーズ3に関しては、通信事業者間のサービス実験は行ったものの、国際実験は未実施でした。
当初、ETJPは2004年9月末日までの1年間という時限つきで活動を行うとしていました。しかし、国際実験が未実施だったこと、また、ENUMは今後普及していく傾向にあり、技術の急速な展開やとりまく状況の変化なども考えられるため、その設置期間を2005年9月末日まで、1年間延長して活動を続けることになりました。
ETJPでは、2004年5月に前半の活動を終えたとして、「第1次報告書」をまとめています。また、この2004年11月には「第2次報告書」をまとめました。この第2次報告書には、アクティブに活動している2つのワーキンググループである「Privacy and Security WG」「DNS WG」が積極的に検討を行った、ETJP内でのセキュリティの考え方やDNSの負荷への取組み等についてが主に報告されています。ご興味のある方は、ETJPのWebサイト(http://etjp.jp/)で、是非ご覧になってみて下さい
(JPNICインターネット基盤企画部 根津智子)
参照URL
- インターネット10分講座/ENUM
- http://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No21/080.html
- ENUM研究グループ
- http://www.nic.ad.jp/ja/enum/
- ETJP第2次報告書
- http://etjp.jp/about/activity/20041111/ETJP_2nd_report1111.pdf
- ☆1 VoIP:Voice Over Internet Protocol
- インターネットやイントラネットのようなIPネットワーク上で音声通話を実現する技術のこと
- ☆2 SIP:Session Initiation Protocol
- 通話制御プロトコルの1つで、音声通話以外にもボイスメール、インターネットFAX等にも利用可能な技術
- ☆3 DNSSEC:
- DNSに関するセキュリティの強化を行うための拡張機能
- ☆4 RFID:Radio Frequency IDentification
- ICタグを使い、無線で人やモノを識別・管理する仕組み