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ニュースレターNo.28/2004年11月発行

第49回RIPEミーティング

Renaissance Hotel-Manchester, United Kingdom
会場となったRenaissance Hotel-Manchester, United Kingdom

1.全体会議報告

◆概要

第49回RIPEミーティングが、2004年9月20日から24日までの日程で英国・マンチェスターにて開催されました。RIPEミーティングは、議論・意見交換を主とする、テーマ別に分かれた10個のワーキンググループ(以下、WG)と、それぞれのWGからの報告が行われる総会(Plenary)から構成されます。

◆ワーキンググループ(WG)

RIPEでは特に挙手によるコンセンサスの確認を行いません。提出された提案は、今回のような直接顔を合わせてのミーティングで議論されますが、その場で議論が収束しない場合、その議論はメーリングリスト(ML)上に引き継がれ、論点が出尽くし、収束するまで続けられます。提案時点でポリシー文書のドラフトが用意されていることはなく、提案内容そのものに関する議論が先に行われ、その後にポリシー文書ドラフトが用意され、再度議論が行われ、コンセンサスを形成していく、というプロセスを経ます。

RIPEではAPNICと違い、提案の様式や提出期限などの定めはありません。その分提案することに対する敷居は低いとも言えますが、コンセンサスを得て実際の運用に入るまでの過程はAPNICよりも長くかかるということが言えそうです。後述しますが、アドレスポリシーWGに提出されているポリシー策定プロセスの提案などは、最初に提出されてから既に1年が経過しているにもかかわらず、ドラフトはこれからという状況がそのことを端的に表していると思われます。

◆総会(Plenary)

総会では、WGからの報告の他に、APNICなどの他RIRや、ICANN/IANAからの報告が行われます。今回はこれらに加え、RIPE地域のICANN ASO理事選出選挙も行われました。選挙の方法は、RIPE事務局員を除く出席者全員に1枚ずつ投票用紙を配り、回収するというものです。今回の改選枠は1名で、開票の結果、現職のHans Petter Holen氏が再選されました。

ICANN/IANAからは、IANAからRIRに対するIPアドレスの割り振りに必要な日数の報告がなされています☆1。前回のAPNICミーティングでは同様の報告はありませんでしたのでここで紹介しますと、IPv4(/8単位)は7日、IPv6(/23単位)は最短で7日、最長で20日かかっているということでした。IANAからは今後も納期短縮に努めるとのコメントがなされています。

2.アドレスポリシーWG報告

本WGは、その名の通りAS番号及びIPアドレスの管理ルールについて議論するWGです。今回は、以下の4点が議論の対象となりました。

(1)IPv6初期割り振り要件の見直し

現在RIPE地域で適用されているIPv6ポリシー中の初期割り振り要件である、「2年以内に少なくとも200の/48の割り当てを行う計画がある」という項目を削除する、という提案がなされました。

WG出席者からは本項目削除に賛同する意見が大多数を占め、WGとしては本項目を削除する方向でポリシー改定のドラフトをMLに提出し、詳細はそちらで議論する、という結論となっています。

(2)ポリシー策定プロセスの整備

コンセンサスの定義、提案提出の期限・様式など、現在特に定めのない事項について文書で規定することが提案され、WGの賛同を得ています。今後具体的な文書ドラフトがMLに提出され、詳細はそこで議論されることになります。

(3)IANAからRIRへのIPv6割り振りポリシーに関する提案

IANAからRIRへIPv6アドレスを割り振る際の基準、手続きについて定めようとする提案ですが、追加割り振りのサイズ等の具体的な基準値について意見がまとまらず、MLで継続して議論することとなりました。

(4)IPv4追加割り振り基準へのHD-ratio適用

IPv4の追加割り振り基準(現在は既割り振り空間の80%を使用していること)を変更する提案で、前回のAPNICミーティングで提出された提案と同一です。今回は正式提案の位置付けではなく、APNICミーティングでの提案の紹介ということで案内されましたが、WGからは特に反対の意見が出なかったため、今後正式提案としてMLで議論することとなりました。

ここでは、特に(1)のIPv6初期割り振り条件の見直しに関する議論の今後が注目されます。RIPE地域で「2年以内に少なくとも200の/48の割り当てを行う計画がある」という項目が削除されれば、世界4RIRのうち、同項目をそのままの形で残しているのはAPNICだけとなります。このため、早晩APNIC地域でも見直しの機運が高まっていくのではないかと予想しています。JPNICとしては今後の議論の動向を適宜ご紹介していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

(JPNIC IP事業部 穂坂俊之)

3.データベースWG報告

本WGはRIPE NCCのレジストリシステムとwhoisやRPSLに関する議論を行うWGです。

(1)データベースの運用報告

  • IPv6の割り振り
    統計上の大きな動きとして、inet6num(IPv6アドレスブロックの割り振り情報)が7400あり、年間でみると100%以上の伸び率(倍増以上)であること、そのうち85%が割り当て済みであることなどが紹介されました。統計資料は下記のWebサイトにあります。

    RIPE Database Usage Statistics
    http://www.ripe.net/projects/dbconstat/stats.html
  • whoisサーバの性能向上
    whoisサーバの性能向上の為、問い合わせ/参照のみのサーバを増加してロードバランシングを行い、update等の操作を行うためのサーバをバックエンドにする構成にするようです。
  • 旧来の認証方式の削除
    RIPE DBMにおけるmntnerオブジェクトのセキュリティモデルの変更です。現在はだれでもこのオブジェクトを作成することができますが、ハイジャックを防ぐための対策として、セキュリティモデルを変更し、認証方式のmail-fromやnoneを削除すること、mnt-lowerフィールドをデフォルトではmnt-byにすることを行うとの報告がありました。
  • RPSLng(Routing Policy Specification Language next generation)
    今までは対応していなかったRPSLngに対応したこと、IETFのInternet-DraftがRFC Editorの編集待ちになったこと(すなわちIESGの承認は既にあり、RFCになることが決まっている)などが報告されました。
  • Afritrans
    Afiritrans(AfriNICへのアドレスブロックの移転)を進めるプロジェクトが進行中であるという報告がありました。
  • KEY-CERT/MNTNER LIR Portal Integration
    第46回RIPEミーティングで提案された、X.509証明書のデータベースへの登録手続きの改善に関する報告です。これまでは証明書の発行とデータベースへの登録が別の手順で利便性が低い状況でした。新たに導入された方法では、RIPE NCCの認証局を使って証明書を発行すると、自動的にkey-certオブジェクトが生成されるようになりました。

(2)ERX(Early Registration Transfer project)レポート

RIPE NCCにおけるERXの進行状況の報告です。AS番号の移管は2002年8月に始まり、IPv4アドレスの移管は2002年12月に始まっています。2004年4月までにクラスBのブロック(48(/8))の移管が終了し、既にAS番号の移管も終了しました。クラスCのブロックは196/8と198/8が2004年7月に開始、合計で1964の移管が終了したようです。

クラスCの移管は、192/8、196/8および198/8で、あと3000以上が残っています。これらの移管を進めるフェーズ3では、メールの送信の必要がないWebのシステムを使い、レスポンスを早くするようです。このシステムやプロジェクトについては下記のWebサイトから資料を入手できます。

[erx-ip]Project Web Page
http://www.ripe.net/db/erx/erx-ip/

(3)IRRToolSetソフトウェアメンテナンス

whoisのプログラムセットであるIRRToolSetは、もともとISI(Information Sciences Institute)によって開発されたもので(当時RAToolSetと呼ばれていた)RIPE NCCに移管されたものです。ソフトウェアの質の向上とソースコードの公開の為、ISCに移管しオープンソースプロジェクトとして進めることになりました。

現在既に、この移管はほとんどが済んでおり、ソースコードのリポジトリ、ML、Webなどの移動は終わっているそうです。またこの機会にRPSLngへの対応、各種バグフィックス、パッチの適用、gcc 3.x でのコンパイル対応などを済ませたと報告されました。

(4)Routing Registryコース

IRR☆2の利用法の説明会の実施報告です。2004年には16回行われました。2005年は、ドイツ、スペイン、ロシア、オランダ、イギリス、フランスで開催される予定のようです。資料などは下記のWebサイトから入手できます。

[training-rr]Material & Info
http://www.ripe.net/training/rr/

(5)CRISP☆3関連報告

IETFで策定作業が進んでいるCRISP(Cross-Registry Information ServiceProtocol)に関する状況報告です。CRISPに関する簡単な解説のあと、CRISPのIRIS(Internet Registry Information Service)では、mntner、irtオブジェクトといった情報が記述できなかったり、import:、export:といった経路情報の方針の記述ができなかったりする問題点が指摘されました。

このプレゼンテーションを行ったShane氏は、IETF CRISP WGでIRISのIPアドレスとAS番号の書式の標準化作業に取り組んでいます。

(6)IRT / Abuse-c議論のまとめ

データベースにおけるIRTオブジェクト/abuse-cの追加に関する議論のまとめです。inetnumとinet6numオブジェクトにabuse-c:を加えること、inetnum,inet6num,person,roleオブジェクト等にabuse-mailbox:を加えること、changed:にメールアドレスではなくNICハンドルを入れること、の比較検討が行われました。

このセッションでは、irt、personおよびroleオブジェクトにabuse-mail:を加えることとabuse-email: がある場合にはその他のメールアドレスをデフォルトでは返答しないというサーバの挙動について、コンセンサスが得られました。

(JPNIC 技術部 木村泰司)


☆1 http://www.ripe.net/ripe/meetings/ripe-49/presentations/ripe49-plenary-iana.pdf
☆2 IRR:
BGP-4(border gateway protocol)を用いてルータ間で交換する全インターネット上の経路情報を1ヶ所にまとめたデータベースシステム
☆3 CRISP:Cross Registry Information Service Protocol
CRISPは、IPアドレスやドメイン名などインターネットリソースが登録されているレジストリの情報を照会するための新しいプロトコル

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