ニュースレターNo.30/2005年7月発行
全体の動向と国際的なポリシー動向
JPNIC理事 IPv6分野担当●荒野高志
JPNIC IP事業部●穂坂俊之
2002年7月に、JPNIC主導により全世界共通のIPv6アドレスポリシーが施行となりました。以来3年間、そのポリシーは、世界中の数多くの組織がIPv6アドレスの割り振りを受けるベースとなっています。また、各地域ではその後もさまざまな議論が継続して行われ、いくつかの地域では制限が緩和されるような地域独自のポリシーが制定されるなど、ポリシーは徐々に進化を続けています。本章ではIPv6アドレスポリシー及びその割り振りに関する最近の動向について概観します。
1. アドレスポリシーの地域分化
当初、全世界共通として施行されたIPv6アドレスポリシーですが、時を経るにつれ、各地域の事情を反映し、地域ごとのポリシーに変化しつつあります。中でも初期割り振りの要件については各地域で見直し議論が盛んで、5RIRのうちARIN、LACNIC、AfriNICにおいては既に要件が緩和され、RIPE NCCでは緩和提案を議論中という状況となっています。ただし、今のところAPNICについては緩和提案はなされておりません。
2. 割り振り量の飛躍的増大
図1は、RIRがIPv6アドレスの割り振りを開始した1999年から、各年におけるIPv6アドレスの割り振り量を/32単位で集計し、グラフ化したものです。これを見ると一目瞭然なのですが、昨年来急激に割り振り量が伸びており、2005年4月末時点で既に昨年の60%を超える量が配布されていることがわかります。これは各事業者がIPv6アドレスの本格サービスに向け準備を整えていることの証左と言えるのではないでしょうか。
また、1事業者が大規模の割り振りを受けるケースも出てきました。IPv6アドレスの最小割り振りサイズは/32であり、多くの事業者がそのサイズの割り振りを受けていますが、/32を大幅に超えるサイズの割り振りを受けている事業者も見られます。表1は/32を超える割り振りを事業者種別にまとめたものです。
事業種別 | 割り振りサイズ | 割り振りRIR | 割り振り先(国コード) |
---|---|---|---|
国際通信事業者 | /19 | RIPE NCC | DE |
/20 | RIPE NCC | EU | |
/20 | APNIC | AU | |
/21 | RIPE NCC | EU | |
/24 | RIPE NCC | NO | |
地域通信事業者 | /21 | APNIC | JP |
/27 | RIPE NCC | CH | |
/30 | APNIC | JP | |
ISP | /23 | RIPE NCC | NL |
/27 | RIPE NCC | UK | |
/28 | APNIC | JP | |
/31 | RIPE NCC | NO | |
携帯電話事業者 | /31 | RIPE NCC | NL |
大学 | /31 | RIPE NCC | AT |
その他(RIPE IX用) | /29 | RIPE NCC | EU |
3. アドレス割り当てのサイズについて
上で触れたようにIPv6アドレスの配布量は増え続けていますが、果たして今の割り振りスキームを続けていて本当に大丈夫か、との懸念も一部にはあります。APNICのGeoff Huston氏は独自にIPv6アドレスの消費予測を行い、その結果を2005年4月のARINミーティング、及び5月のRIPEミーティングで紹介していました※1。それによると、現在の割り振りペースが続くと60年で全IPv6アドレス空間の最高50%(最低だと6.3%)を消費するだろう、ということです。
この結果に触発され、コミュニティの一部では割り振り・割り当ての抑制を検討すべきではという意見も出てきてはいますが、現在のところ早急に結論が出るようなものではありません。この他にも、IPv6アドレスのプロバイダ非依存アドレスの必要性や、ユニークローカルアドレスの仕様についても昨年来議論が続いておりますが、それは次章に譲りたいと思います。
参考URL
- IPv6アドレス割り振りおよび割り当てポリシー
(最終更新2005年6月9日) - http://www.nic.ad.jp/ja/translation/ipv6/20040714-01.html