ニュースレターNo.30/2005年7月発行
第12回ICANN報告会レポート
2005年5月18日(水)、東京都千代田区の東京グリーンパレスホテルにて、JPNICと(財)インターネット協会の共催による第12回ICANN報告会が開催されました。以下に、報告会の内容を項目別にご紹介します。
ICANNマルデルプラタ会議概要報告
JPNICの穂坂俊之より、2005年4月4日~8日にアルゼンチン・マルデルプラタにて開催されたICANN会議の概要報告がありました。会議スケジュールの紹介の後、主要トピックスであったICANN戦略計画(ICANN Strategic Plan)や.net次期レジストリ選定について、会議での議論の様子や会議後の動きが報告されました。また、ICANN会議の新しい傾向として、ICANN理事や参加者すべてがフリーに議論する場としての「パブリックディスカッション」がテーマ別に複数回設けられたとの報告がありました。
詳細は下記をご参照ください。
本誌「ICANNマルデルプラタ会議」
本誌「ICANNマルデルプラタ会議報告 ~初めてのICANN会議~」
ccTLDの動向
(株)日本レジストリサービス(JPRS)の大橋由美氏より、マルデルプラタでの国コードドメイン名支持組織(ccNSO)会合で話し合われた議題、およびその後の議論の状況が報告されました。会合では、ccNSOからICANNへの資金拠出方法が議論され、各ccTLDが複数の料金帯の中から自由に選択して支払う方式が概ねの合意を得たということです(その後もメーリングリスト上で継続議論中)。
また、以前より検討が続いているAccountability Framework(各ccTLDレジストリとICANNとの関係を契約とは別の形で明文化する取り組み)に関しては、ccTLDとICANNそれぞれの責務について項目出しが行われたとの報告がありました。その他、ccNSOの定義や責務をより明確にするため、ICANN付属定款の関連条項を改訂する件についても検討が進められているということです。
gTLDの動向
JPNIC理事の丸山直昌より、マルデルプラタ会議のパブリックディスカッションで議論されたテーマとして、まず削除ドメイン名の再登録に関する問題が紹介されました。これは、有効期限切れなどにより削除されたドメイン名をレジストラが再登録する際の仕組みを検討しようというものであり、入札制などの案について話し合われたということです。
次に紹介されたドメイン名の強奪事件は、第三者が不正にレジストラ変更を行うなどしてドメイン名を登録者から奪い取るという問題であり、パブリックディスカッションでは、参加者による問題意識の共有が行われたとの報告がありました。
ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省の加藤博司氏より、政府諮問委員会(GAC)についての報告がありました。徐々に加盟国を増やしているGACでは、現在メンバー数がようやく100に到達し、マルデルプラタでの会合にはこのうち32メンバーが参加して各種の議論がなされた模様です。
gTLD政策(WHOISや新gTLD導入など)およびccTLD政策(ccTLDの委任に関するベストプラクティス的文書「GAC ccTLD原則」の見直しなど)に関する議論の他、IPアドレスポリシーについては、政府としてどうかかわっていくかをアドレス支持組織(ASO)と継続して話し合っていくことになったとの報告がありました。
ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)報告
At-Large諮問委員会(ALAC)の活動に関して、(財)ハイパーネットワーク社会研究所 副所長の会津泉氏より報告がありました。会津氏は、ALACがこれまで限られたリソースで、ICANNのポリシー策定活動への参加とAt-Large自体の組織化に同時並行で取り組んできたことの困難さに触れ、今年中にはALACを含めたAt-Large活動そのものの見直しをする予定であると話しました。
報告の終わりには、マルデルプラタ会議のビデオ録画を紹介する一幕があり、AfriNICの正式承認を祝う様子や、レセプションでのタンゴショー、会議参加者によるフットサル大会の様子などが次々と映し出され、参加者の目を楽しませていました。
伊藤ICANN理事からの報告
(株)ネオテニー代表取締役社長の伊藤穰一氏より、ICANN理事会における各種議論の様子などが報告されました。ICANN戦略計画については、理事会メンバーからも作成プロセスなどへの批判があったとし、特にICANN地域事務所の設置提案に関して意見が割れているということです。これはICANNの予算拡大に大きく影響する問題でもあることから、なるべく早急に一般からも意見を寄せてほしいとの要請がありました。
また国際化ドメイン名(IDN)については、フィッシング問題への危機感もあり時間をかけて議論が行われたとのことで、IDNの実装を拡大させるには、ある程度言語が限定できるccTLDにまず注力することとし、その後にgTLDへと展開させていけばよいのではないかという提案もメンバーから出たようです。
その他、.net次期レジストリ選定に関して、第三者機関による評価結果に批判が出たことを受けて、今後理事会としてどういう決定をするかが大きな課題となっているという話や、専門家向けgTLDの「.pro」が、当初の登録資格要件から逸脱した形で運用されていることを問題視しているという話など、タイムリーな情報が詳細に紹介され、参加者の関心を集めていました。
(JPNIC インターネット政策部 入交尚子)
第12回ICANN報告会資料
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20050518-ICANN/