ニュースレターNo.31/2005年11月発行
第13回ICANN報告会レポート
2005年8月8日(月)、東京都千代田区の秋葉原コンベンションホールにて、JPNICと(財)インターネット協会の共催による第13回ICANN報告会が開催されました。以下に、報告会の内容を項目別にご紹介します。
ICANNルクセンブルグ会議概要報告
筆者が、2005年7月11日~15日にルクセンブルグにて開催されたICANN会議の概要報告を行いました。会議スケジュールの紹介の後、前回のマルデルプラタ会議に引き続き主要トピックスとなったICANN戦略計画(ICANN Strategic Plan) や.net次期レジストリに選定されたVeriSignとICANNとの契約問題、インターネットガバナンスの議論について、その内容および会議での様子を報告しました。
詳細は下記をご参照ください
本誌P34「ICANNルクセンブルグ会議」
ccTLDの動向
(株)日本レジストリサービス(JPRS)の堀田博文氏より、ルクセンブルグでの国コードドメイン名支持組織(ccNSO)会合で話し合われた議題、およびその後の議論の状況が報告されました。
まず、これまでccTLD間の情報交換の場として機能してきたwwTLD(World Wide Alliance of Top Level Domain)の会合は、今後ICANN内組織であるccNSOの会合へ一本化する方向で調整を進めることになったとのことです。
また、以前より検討が続いているAccountability Framework(各ccTLDレジストリとICANNとの責任関係を文書化した簡易契約)に関しては、項目出しが終了し、紛争解決方法などの議論を残すのみになったとの報告がありました。
最後に、今回の最重要事項として、ccNSOに未加入のccTLD組織が改善の必要性を指摘しているICANN付属定款の関連条項の問題点と変更内容について、11月末にICANNに改訂案を提示する予定で、ccNSO会員組織と未加入組織とが協力して検討した旨、報告されました。
gTLDの動向
JPNIC理事の丸山直昌より、ルクセンブルグの理事会決議で承認された、ドメイン名ハイジャックに関するレポート中の勧告内容について説明がありました。
勧告の内容には、レジストラに対し24時間365日の緊急対応窓口の設置を求めるなど具体的なものもあるが、そうでないものも含まれており、この勧告をスタートとして、今後様々な対策検討がなされていくだろうとの報告がありました。
また、今後のドメイン名ビジネスにおいては、価格に加え、ハイジャック対策の有無ということについても注目されてくるのではないかとのコメントがありました。
ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省の加藤博司氏より、政府諮問委員会(GAC)についての報告がありました。GACと分野別ドメイン名支持組織(GNSO)共催で実施したWHOISワークショップでは、WHOISのオンライン公開を望む側の法執行機関を招待し、講演があったとのことです。このワークショップには、日本の警察関係者も出席して発表を行ったことも報告されました。
また、導入が進んでいるsTLDを含めたgTLDの今後の導入に関しても議論を行っており、.xxxの導入に関しての懸念が一部のメンバーから表明されたことも、この中で報告されました。
ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)報告
At-Large諮問委員会(ALAC)の活動に関して、(財)ハイパーネットワーク社会研究所 副所長の会津泉氏より報告がありました。会津氏からは、At-Largeの組織化について触れ、アジア太平洋地域は議論が活発なものの、アフリカは活動が無く、北米地域では、問題点を抜きにして組織化を優先させるべきではないというスタンスを取っている、との現状が紹介されました。
また、At-Largeとして、ICANNのサイトとは別に独自のWebサイトを立ち上げたことが報告されました。At-Largeとしての活動を行っていく中で、ICANNのAt-Large担当職員の指揮系統がはっきりしていないということや、アジェンダや会議室が直前まで決まらないなど、会議運営に関して改善を要する事項がいくつか挙げられ、解決策として、プログラム委員会の設置をICANNに求めていくとのことです。
伊藤ICANN理事からの報告
(株)ネオテニー代表取締役社長の伊藤穰一氏より、ICANN理事会における各種議論の様子などが報告されました。まず、会津氏が触れたプログラム委員会については、理事会ではできれば次回のバンクーバー会議までに成立させたいという話をしている旨報告がありました。
次に、今回の理事会決議の中に含まれている電話会議の書記の導入に関し、元々は議事録の公開が遅くなったことへのクレームが発端で、これを機に電話会議の議論の内容をもっと透明化するべきではないかという意見が出て、それに理事会メンバーが同意したという経緯が紹介されました。
この他、今回.netの契約問題やICANN戦略計画などでコミュニティから強い批判があったことを受けて、伊藤氏からICANNのスタッフに対し、「ICANNは最終的にコンセンサスを作ったかどうかが問われるのであって、プロセスに従ったことを求められているのではない。プロセスに従ったのにもかかわらず、多数が納得していないのであれば、それはプロセスが壊れているというべきだ」とのコメントを行ったことなども紹介されました。出席者に対しても、ICANN会議のオープンマイクだけではなく、色々な形で意見を寄せて欲しいと要請がありました。
(JPNIC インターネット政策部 穂坂俊之)