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ニュースレターNo.32/2006年3月発行

第14回ICANN報告会レポート

2006年1月26日(木)、東京都千代田区のJAホールにて、JPNICと財団法人インターネット協会の共催による第14回ICANN報告会を開催いたしました。以下に、報告会の内容を項目別にご紹介します。

◆ICANNバンクーバー会議概要報告

JPNICの穂坂俊之より、2005年11月30日~12月4日にバンクーバーにて開催されたICANN会議の概要報告を行いました。会議スケジュールの紹介の後、トピックであったVeriSignとICANNとの和解案の審議および現状、sTLDドメイン名(.asiaおよび.xxx)の審議内容、WSISワークショップにおけるインターネットガバナンスの議論についてご報告しました。
詳細は下記をご参照ください。

JPNICNews&Views vol.321 【臨時号】(2005.12.12)
「ICANNバンクーバー会議報告」
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2005/vol321.html

◆ccTLDの動向

株式会社日本レジストリサービス(JPRS) の堀田博文氏より、国コードドメイン名支持組織(ccNSO) 会合で話し合われた議題について報告されました。

ccTLDに関する議論は各国の事情に関係するため、3日半行われたccTLD関連会合は決議を行う場というよりも情報交換の場として機能しており、そこで得た情報をいかに各国に落とし込むかが重要になるとのことでした。

最近では、利用者の立場により選択すべき適当なドメイン名とは何かを考える「マーケティング」についての議論もあり、ccTLD会合における議論の重心が事務的な内容からコンテンツの議論に移行してきている状況が伝えられました。

◆gTLDの動向

JPNIC理事の丸山直昌より、gTLDに関する最近の動向についての報告と、GNSOのポリシー策定プロセス(Policy Development Process、PDP)の説明がありました。これは、2002~2003年のICANN改革の際にICANN付属定款のAnnex Aとして定められた手続きです。“bottom up” や“rough consensus” を尊重する手続きで、理事会の恣意的な決定を避ける仕組みであり、ICANN内の議論を進める上で最適な方法であると考えられるとのことです。しかしながら、すべての重要案件で利用されているわけではないなど改善すべき点もあり、今後の導入状況がICANNの在り方にも影響するのではとの意見が述べられました。

◆ICANN政府諮問委員会(GAC)報告

総務省の糸将之氏より、政府諮問委員会(GAC)についての報告がありました。一つ目のトピックとして、WSISのチュニスアジェンダを考慮し、今後のGACの在り方について議論されたことが報告されました。今までボランタリーに担われてきたGAC事務局ですが、現在事務局を担当する欧州委員会(European Commission、EC)の任期が予算の都合上6月末で期限をむかえるため、今後の事務局の運営方法と活動内容について更にメールベースで検討し、次回ウェリントン会合までに結論を出すとのことです。

第2のトピックであるgTLD政策については、継続して検討されている.xxxについて、日本政府としては現在のところコメントを控えているが、今後の検討のためにパブリックコメントを歓迎する旨が伝えられました。

◆ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)報告

At-Large諮問委員会(ALAC) の活動に関して、財団法人ハイパーネットワーク社会研究所副所長の会津泉氏より報告がありました。バンクーバー会合では、初めてICANN理事会のほぼ全員と会合を持つことができ、ALACが一つのコミュニティとして認知されていることを実感したとのコメントが印象的でした。ALAC内部では考え方の対立の表面化など改善すべき点もあることから、市民社会の代表に相応しい運営の模索がより一層必要との考えが示されました。他に、VeriSignとICANNとの和解案や.comレジストリの新契約案について、詳細な説明を行っていただきました。

ICANN Wiki(http://icannwiki.org/) が開設され、そちらでも情報収集が可能になった旨の情報提供もありました。

◆伊藤ICANN理事からの報告

株式会社ネオテニー代表取締役社長の伊藤穰一氏より、ICANN理事会内の議論の様子が報告されました。報告内容は、ここまでの5人の講演内容を受け、理事のお立場で理事会の議論を客観的に伝えるものでしたが、伊藤氏個人としては、理事会内で批判的なコメントを呈することも多くあるとおっしゃっていた点は、大変興味深かったです。

.com契約案についてですが、問題の背景にはレジストリとレジストラの力関係という政治的な問題も影響しているとのことでした。現状、予算への発言権を持つのはレジストラですが、VeriSignに有利な契約内容となることで予算に対してもレジストリであるVeriSignの発言権が大きくなることを懸念する声が多く、レジストラの業界団体CFIT(The Coalition for ICANN Transparency http://www.cfit.info/) の行動に見られるように、.com契約案に根強く反対する面々もあるようです。結果的にVeriSignとの和解案は再検討となりました。そもそもこの和解案はかなり検討を重ねて提出されているため、再検討の余地があまりあるとは思えないが、この際は徹底的に議論することも重要でないかとコメントされていました。

また、domain name parkingというシステムで期限切れのドメイン名を大量に取り扱うプロのドメイン名登録者が出現しており、登録者と言えども一般の登録者と立場が異なる登録者が出てきているとのこと。この件については、立場の違う登録者がいることを踏まえ、ALACが一般登録者の声を代弁していくよう期待するとのコメントがありました。

これまでにICANNとVeriSignが契約について法律的に争ってきた内容は、契約内容がドメイン名に関連するか否かの見解の違いによるものであったと言えます。しかしながら、新しい契約案ではICANN内で“funnel(じょうご)”と呼ぶように、ドメイン名に関係すると思われる内容はすべてICANNを通さなければならないという契約内容となっており、この条項が追加された点は大変評価できるとのことでした。

伊藤氏は、コメント期間を経て出される理事会の結論が、どう展開するかは正直なところ不透明であり、コメントを受けた理事会内でも今後議論が分かれるのではないか、との見解を示しました。今後の動向にも注目していきたいと思います。

写真:開会の挨拶を行うIAjapan副理事長 高橋徹氏
開会の挨拶を行うIAjapan副理事長 高橋徹氏

(JPNIC インターネット政策部 高山由香利)

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