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ニュースレターNo.33/2006年7月発行

報告書『IPv4アドレス枯渇に向けた提言』の公開にあたって

◎JPNIC IP分野担当理事 前村昌紀 /◎IP事業部 川端宏生

有限であるIPv4アドレスの枯渇問題については、早ければ数年後にIPv4アドレスの枯渇が到来するという複数の研究結果が2005年に発表されました。そのような状況の中、JPNICをはじめとするインターネットレジストリにおいても、現在の状況を正確に把握し、国内外のインターネットコミュニティに対して迅速な働きかけが行えるような取り組みを行うことが求められてきています。

そこでJPNICでは2005年12月に、インターネット運用に携わる国内の有識者による「番号資源利用状況調査研究専門家 チーム」を設立しました。この専門家チームでは、既存の研究成果の精査と現在の利用状況の把握を行い、その内容を踏まえて、IPv4アドレスが枯渇した時に向けて準備が必要と考えられる事項について検討を行ってきました。

専門家チームによる検討結果は、『IPv4アドレスの枯渇に向けた提言』という報告書にまとめられ、2006年4月3日に公開されました。JPNIC会員や関係機関に配布されるとともに、JPNIC Webページでも公開されています。報告書は、以下のURLからご覧いただけます。 http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2006/20060403-01.html ここでは、報告書の内容を簡単にご紹介いたします。


第1章 はじめに

この報告書の概略について説明しています。

第2章 世界のIPv4アドレス利用トレンドと今後の予測

既に発表されているIPv4アドレス枯渇に関する研究成果に関して、詳しく解説を行っています。IPv4アドレスの全空間の割り振りが完了する時期については、以下の通り2009年から2016年までの間でいくつかの説が存在しており、IPv4アドレスは数年から10年の範囲で枯渇すると考えられています。

解説図表

第3章 日本のIPv4アドレス登録実績と需要予測

JPNICが管理するIPv4アドレス数の実績とその利用状況の調査を行い、その結果をまとめています。IPv4アドレスの需要は今後も堅調な伸びが予想されること、古い時期の割り当てにおいては、未使用と思われる空間が散見されることがわかりました。また、アジア太平洋主要地域についても同様の調査を行い、その結果を国ごとに比較しています。

第4章 枯渇に伴い予想される現象

IPv4アドレスの枯渇前後において、IPv4アドレスの分配と利用がどのように変化をしていくかについて、IPv4アドレスの分配に影響を及ぼすと思われるIPアドレスポリシーの動向について解説を行っています。また、IPv4およびIPv6アドレスが混在するインターネットの状況を予測し、IPv4アドレス枯渇後のインターネットについて問題提起を行っています。

第5章 提言

インターネットに関わるプレイヤーを、インターネットサービスプロバイダ、インターネットレジストリ、各種サービス提供者、企業ユーザー、一般ユーザー、技術開発者に分け、それぞれのプレーヤーに対する提言をまとめています。インターネットサービスプロバイダや各種サービス提供者に対してはIPv6対応のサービスを提供すること、企業ユーザーではIPv6に対応した機器の導入を選択すること、技術開発者には、ユーザーの利便性を確保するためのIPv6機能の開発に取り組むべきであることを記しています。インターネットを利用する一般ユーザーにはIPアドレスバージョンの違いを意識させることなく枯渇に向けた対応をすることが重要であることもあわせて指摘しています。

Appendix. A

第2章で挙げた既存の研究内容を、日本語で詳細に解説しています。

Cisco社のTony Hain氏、APNICのGeoff Huston氏からIPv4アドレスに関する寿命予測が発表されたのは、それぞれ2005年9月と11月(Huston氏のものは2003年の論文の更新版)でした。しかしながら、それらの結論であるIPv4アドレスの枯渇時期だけが紹介されることはあったにせよ、その内容が日本国内では周知されている状況ではなかったというのが、専門家チームを設立して検討することにした理由でした。

これまでIPv4アドレスの枯渇という問題は主にIPv6の普及という文脈で取り上げられるものが多かったのですが、専門家 チームチェアの近藤邦昭氏と私達の間では、これはむしろインターネットの運用技術の問題、持続的運営の問題だという見方で一致していました。従って専門家チームの人選も、IPv6推進の立場でご活躍の方々よりも、ネットワーク運用技術の最前線にいらっしゃる方を中心に進めました。

出来上がった報告書は100ページを超える大作となりましたが、内容を一言で表現すると、「IPv4アドレス枯渇の状況を淡々と書き記したもの」となります。そういう観点で網羅的に記述された文書としては世界的に見てもこれまでに類がないものだと自負しており、この趣旨を的確に捉えてくださった方からは高い評価をいただいています。専門家チームの皆さんの努力に感謝いたします。

一方でやはり単なるIPv6の扇動だとして批判的に捉える方も少なくありませんでした。ネットワーク技術者だけでなく広くいろいろな方々に対するメッセージとして要旨を絞りきることを、淡々と枯渇状況を記述するという趣旨と共存させることができなかったという反省点もあります。

公開後のネットワーク技術者コミュニティにおける議論や反応を振り返ると、IPv4アドレス枯渇に対する対策として想定されるものとして、

  • (1)IPv6インターネットへ移行、
  • (2)既割り当ての効率利用による解決が可能、
  • (3)IPv4でNAT技術による解決が可能

の3種類があり、それぞれの意見を看破することもなく並立している状況と見て取れます。まずこれらの議論を精緻(せいち)にしていくことが、IPv4アドレス枯渇への対応への足並みを揃える第一歩だろうと考えています。

IP事業部をはじめとしてJPNIC事務局では、このような情報提供と議論喚起の活動だけでなく、IPアドレス管理組織としても枯渇期に適応したポリシー策定と管理業務運営に向けての準備に着手しており、混乱なくIPv4アドレス枯渇の時期を乗り切るための対応を進める所存です。

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