ニュースレターNo.33/2006年7月発行
日本語ドメイン名協会(JDNA)の活動の「軌跡」が書籍として刊行されました
JPNICは5年間にわたり日本語ドメイン名協会(JDNA)の活動を支援してきました。JDNAは日本語ドメイン名と銘打っていますが、その活動内容は国際化(多言語)ドメイン名の包括的な国際標準化の実現です。この目標はIETFの活動を通して数編のRFCとして達成されました。目標を達成したJDNAは、本年で実質的な活動を停止します。
わが国における国際化ドメイン名の検討は、JPNICのタスクフォース(iDNS-TF)が1999年5月に結成された時に始まりました。その当時には、既に各国から種々の国際化ドメインの実現法が提案されていましたから、事態は相当に混乱していました。JPNICは机上の検討だけではなく、具体的にソフトウェアを用いて技術的に比較すべきであると考えて、国際化ドメイン名の評価キット(mDNkit、ソフトウェア)を開発しました。これが後に国際的に偉力を発揮します。
国際化ドメイン名を使えば自国語でドメイン名を表記することができます。これによって、インターネットの利用者が便利になることは間違いありません。何といっても自国語には一番慣れています。その一方で、例えば日本語ドメイン名を欧州の利用者は正しく読むことができないでしょう。自国語ドメイン名には自然な限界があります。従来のASCII文字列のドメイン名と自国語のドメイン名を上手に使い分けることが必要です。ただし、いかなる場合でも標準規格が大切です。言語が異なっていても、国際的に統一された表現法の基本を守るべきです。
標準化の必要性と重要性はインターネットの関係者ならば全員が賛成します。しかし具体的な規格を実際に討議し始めますと、お互いの言語に依存する話ですから、それぞれの国が譲れない事項が出てきます。IETFの場、さらに日本、韓国、中国、台湾の4カ国のNIC関係者による討議の場となったJET (Joint Engineering Team)における調整は困難を極めました。この活動の記録は最近出版された書籍『日本語ドメイン名~インターネット標準策定の「軌跡」』※1に詳述されています。
これまでの日本のインターネットでは、何年も経過した後で振り返って歴史を書くことが多かったようです。10年くらい経過してから、昔を思い出して記録を編纂したことが何度もありました。JDNAの特徴の一つは、活動を停止する直前に詳細な記録を書籍として著したことです。この本は、国際化ドメイン名に関する活動を単に記録しただけでなく、日本が国際標準化をリードした実例において、多くの友人が様々な問題で悩み、議論をして、国際的に協力しながら標準化を達成した経緯を軌跡として保存する資料となっています。
- ※1 『日本語ドメイン名 インターネット標準策定の「軌跡」』
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http://インターネット標準策定の軌跡.jp/
ISBN4-8443-2260-5
(JPNIC 理事長/JDNA会長 後藤滋樹)