ニュースレターNo.33/2006年7月発行
第21回APNICオープンポリシーミーティングレポート
第21回APNICミーティングは2006年2月27日(月)~3月3日(金)の5日間、オーストラリアのパースで開催されました。気温39度という情報に覚悟をしながら出発しましたが、パースは湿気が少ないので日陰にいれば過ごしやすく、緑の多いリラックスしたよい街でした。見知らぬ街でありながらひとりで散歩ができるような安心感があり、アジア系移民が多いのも納得できます。
この度のミーティングでの決定事項はAPNIC EC(the Executive Council:理事会)の選挙と、提案1点に対するコンセンサスの確認のみでしたが、その他国内に影響を及ぼす発表もいくつか紹介されていましたので、そちらとあわせてご報告したいと思います。
APNIC EC選挙
現職EC3名の任期満了に伴い、2006年3月から2年という新たな任期に対するAPNIC EC選挙が行われました。候補者6名のうち、1位当選となったJPNIC IP分野担当理事/IP事業部 部長 前村昌紀を含め、当選者3名とも現職ECという結果になりました。前村をご支援いただいたみなさま、本当にどうもありがとうございました。
- 当選者:
-
- 前村昌紀(JPNIC)
- Che-Hoo Cheng(FLAG Telecom)
- Vinh Ngo [CSC (Computer Science Corp)]
- 参考:
- http://www.apnic.net/meetings/21/ec/index.html
提案事項の決議
- 4バイトAS番号への移行に関する提案(Geoff Huston)
- 4-byte AS number policy proposal
http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-032-v001.html
提案概要
RIRによる現行の2バイトAS番号の割り当てから、4バイトAS番号の割り当てへの移行スケジュールが提案されました。これはRIRによる4バイトAS番号の割り当て開始日を明確にすることにより、ベンダーやネットワークオペレーターが移管の準備を進め、混乱を軽減することを目的としています。
提案されたスケジュール案では、RIRからのAS番号の割り当てについて、3段階の時期に分けて4バイトAS番号への準備を行い、最終的には2010年1月以降は、2バイトと4バイトのAS番号を区別して分配することを停止するとしています。これに従い、2010年以降は2バイトAS番号を指定してRIRから割り当てを受けることはできなくなります。
議論
- 国内からいただいた“移行の日付には柔軟に対応してほしい”との要望をJPNICから紹介しました。
- これに対し「開始日を明確にすることにより混乱を軽減する」ことが提案の目的であるため、移行の日付を柔軟に対応することはこの目的に合致しないというのが提案者のスタンスです。また、2009年から2010年の間には2バイトAS番号が必要であれば柔軟に対応できるようになっているとの回答がありました。
- なお提案に対するその他コメントはありませんでした。
ミーティングでの決議
- 参加者によるコンセンサスが得られました。
- その後policy-sig@apnic.netのMLでの最終確認においても大きな反対はなく、Policy SIG Chairにより、2006年5月15日に本提案に対するコミュニティのコンセンサスが確認された旨が発表されました。
影響
- ベンダーは4バイトAS番号に対応した機器の開発が必要となります。
- ネットワークオペレーターは上記機器を手配し、スムーズな移行に向けて準備を進めることが必要となります。
その他主な議論・発表
APNICによる会費見直し
APNICから提示された案をもとにNIRに対する課金に限定せずに、APNIC会費全体を見直す議論が進められています。今回は提案ではなく、議論のたたき台という形で提示されました。
ip6.intの廃止
2006年6月1日よりip6.int方式による逆引きの委譲を完全に廃止することをAPNICが発表しました。JPNICからもip6.int方式で逆引きの登録を行っているIPアドレス事業者へ個々にお知らせを実施し、スムーズな移行に向けて国内での周知を行いました。
IPv4におけるHD-ratioの適用
これまでactiveなステータスに留まっていた本提案は、IPv4アドレスの消費を現在の4倍に加速するとして、完全に廃止することがミーティングで決定されました。その後1ヶ月以内にpolicy-sig@apnic.netのMLで反対意見がなかったため、Policy SIG Chairの判断により、本提案は廃止となりました。
その他、PlenaryでもPSTN・IP・MPLS等の異種サービスの統合や、ルーティングセキュリティに向けたPKIの導入等について興味深い発表が行われていました。また、各SIGでは、JPNICおよびJPNIC関係者から、前回のJPNICオープンポリシーミーティングでの発表/議論をもとに、AP地域全体に対して国内の状況を紹介しました。
- APRICOT opening plenary:
- http://www.apricot2006.net/index.php/fuseaction/home.programconference#keynote
所感
前回から引き続き提案が行われると予想されていたIPv6割り当てポリシーの変更が今回提案されなかったこともあり、ポリシー面では比較的静かなミーティングでした。ただし、この提案については次回は再提案を行ってほしいと会場の要望が確認されましたので、引き続き議論が行われることが予想されます。
また、ポリシー面ではありませんが、今回からNIRへの課金に限定しない形でAPNICから案が提示されたAPNIC会費全体の見直しについては、JPNICと指定事業者への影響やAP地域の動向を考慮しながら議論に参加していく必要があると考えています。
それから、前回のJPNICオープンポリシーミーティングでポリシーに関する具体的な提案やフィードバックをいただけたおかげでJPの状況を会場でのコメントに留まらず、発表として紹介する機会が多かったミーティングだったというのも個人的な印象です。国内特有の事情や細かいニュアンスまでを1回の発表で伝えきることは難しいところもありますが、短期的な結果だけを追い求めずに定期的に情報提供を行っていくことによって、国内そしてAP全体がお互いの状況をより理解できるようになっていくのではないかと思ってます。
参考
- 21st APNIC Open Policy Meeting
- http://www.apnic.net/meetings/21/index.html
次回のAPNICミーティング(APNIC22)は2006年9月に愛河の流れる台湾 高雄(Kaohsiung)で開催される予定です。
(JPNIC IP事業部 奥谷泉)