ニュースレターNo.33/2006年7月発行
ICANNウェリントン会議レポート
2006年3月25日から31日まで、ウェリントン(ニュージーランド)にてICANN会議が開催されました。当地はニュージーランド内で一番日照時間の多い都市ということでしたが、会議開催中はあいにくほとんどの日が曇り空でした。
以下に、今回の会議の主要トピックをいくつかご紹介します。
新gTLDの導入促進を決議
GNSOでは新gTLDをどのように導入していくか判断するスキームの作成に着手しています。2005年の12月にはGNSO評議会で本件をポリシー策定プロセスの対象とすることが決定され、新gTLDの導入はボトムアップ的手法を用いて進められることが確認されています。このプロセスを進める中で、新gTLDの導入自体を否定する意見はコミュニティの中ではほとんど見られないこともあり、今回理事会では、このポリシー策定プロセスを可能な限り早く進めて、2007年1月までには新gTLD導入プロセス自体を開始できるよう求める決議を行いました。
新sTLD導入の進捗状況について
ペンディングとなっている.xxxドメイン名の最終承認は今回も見送られました。各方面から受けたコメントをさらに分析し、その内容をどの程度レジストリアグリーメントに反映させられるか、今後もICANNと申請組織(ICM registry)との間で調整が行われることとなります。このプロセスが完了次第、理事会による採決が行われる予定となっています。その後5月10日に、ICANN理事会は.xxxドメイン名レジストリ契約を否決しました。
また、TELNICから申請されていた.telドメイン名については、申請組織との交渉が終了したとのことで、以下のICANNのWebサイトに契約案が公開されています。
http://www.icann.org/announcements/announcement-07apr06.htm
.telドメイン名については5月10日の理事会で、最終承認されています。.asiaドメイン名については、交渉の最終段階を迎えており30日以内をめどに契約案を公開できる見込みとの発表がありました。
ICANN戦略計画(Strategic Plan)の承認
2005年6月以降、ICANNでは2006年~2009年の戦略計画の策定について議論が進められてきました。今回の戦略計画の中では今後達成すべき目標として、組織運営やポリシー策定プロセスのさらなる向上、より多くのステークホルダーのICANNへの参加、米国商務省とのMoU満了後のICANNの姿に関する検討などが挙げられています。
この戦略計画は今回理事会で承認され、今後はこの目標を達成するための具体的な運営計画と予算策定のプロセスに入ることとなります。この後5月4日に運営計画の案がICANNウェブサイトに公開され、5月17日に2006~2007年の予算案も公開されました。
SSACからの各種報告書
日本でも各方面から注意喚起※1されていますが、DNSの再帰検索を利用した分散DoS攻撃について、SSAC(セキュリティと安定性に関する諮問委員会)から、2006年2月に実際に起こった攻撃を解説し、対策を勧告する報告書が提出され、理事会で承認されています。また、SSACからは今回この報告書の他、オルタネート・ルートに関する報告書も提出され、同様に理事会承認を受けました。
ICANNとVeriSignとの和解承認に関する議論
2005年10月にICANNがVeriSignとの和解案を発表してからこの和解案の是非に関する議論が続いていました。和解案に関してのコメント募集を経ていくつかの修正がなされた和解案は、2006年2月28日の理事会で最終承認されています。
しかしこれに先立ちGNSOは、2005年10月の和解案発表を受け、既存のgTLDレジストリ契約更新条件の制定をポリシー策定プロセスの対象とする決定を2006年2月6日に行っています。このような動きがある中で2月28日に理事会が和解案を最終承認したことに対し、プロセスが不十分であるとの指摘がGNSO側からはなされました。
最終日の理事会では、2月28日の理事会決議に対する異議申し立てについて議論が行われましたが、申し立ては却下となっています。なお、VeriSignとの和解案は、米国商務省による最終承認待ちということになっています。
- ※1
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http://jprs.jp/tech/notice/2006-03-29-dns-cache-server.html
http://www.jpcert.or.jp/at/2006/at060004.txt
(JPNIC インターネット政策部 穂坂俊之)