ニュースレターNo.34/2006年11月発行
ICANNマラケッシュ会議レポート
2006年6月26日から30日まで、マラケシュ(モロッコ)にてICANN会議が開催されました。当地の旧市街地は世界遺産に登録されていますが、会議はそこから徒歩で30分ほどの距離にある国際会議場で開催されました。一度旧市街まで歩いてみましたが、じりじりと焼け付く日差しがこたえました。
以下に、今回の会議の主要トピックをいくつかご紹介します。
ICANN 2006年度予算案を承認
最終日の理事会で、2006年~2007年度の予算案が承認されました。収入は3,417万9,000ドルを見込んでおり、昨年度比で45%増となります。※1
理事の交代
会期中に、2名の理事が新たに任命されたことがアナウンスされました。1人目はDavid Wodelet氏であり、ASOが選出したMouhamet Diop氏の任期満了に伴い、ASO選出理事として任命されました。
もう一名はRita Rodin氏で、GNSOが選出したMichael Palage氏が辞任したのに伴い、GNSO選出理事として任命されています。
新gTLD創設プロセスの促進に関する決議
現在GNSOでは、新gTLD創設時の条件、課題、評価項目などのレポートをとりまとめる作業に入っていますが、これを11月までに完成させ、コミュニティからのコメントを受けることを求める決議が最終日の理事会でなされました。
前回のウェリントン会議でも同様の決議がなされており、今回は念押しともいえる決議で、新gTLD創設のプロセスを何としても早期に進めたい意向が感じられます。
Add Grace Period(登録猶予期間)とドメイン名テイスティング
Add Grace Period(登録猶予期間)とは、新規にドメイン名を登録した後一定期間内に登録を取り消せば登録料が不要となる仕組みです。最近この仕組みを利用してドメイン名を一度に大量に登録して、ある程度アクセスのあるドメイン名以外は全て登録を取り消すという、ドメイン名テイスティングという行為が見られます。アクセスのあるドメイン名はWebサイトを立ち上げ、サイト上でオンライン広告を掲載し、そこから収入を得るのが一般的です。
会期中にはドメイン名マーケットプレイスワークショップという会合が設定され、こういう行為が広く行われていることが紹介されました。会場からは、このような登録によりレジストリのシステムに過大な負担がかかっているというコメント、また、本来の目的とは違う使われ方をしているのでAdd Grace Periodは廃止すべきという意見などが出ていました。
また、一度登録されたドメイン名はそれだけで市場性があると見なされ、登録期限切れドメイン名はかなりの確率で再登録されること、その場合において、前登録者の予期しない用途でサイトが構築され、前登録者に対してあらぬ被害が及ぶ可能性があることが紹介されました。このため、登録期限切れの予告がきちんと届くように登録者情報は正確かつ最新のものを登録しておくよう、呼びかけが行われました。
(JPNIC インターネット推進部 穂坂俊之)
- ※1 Proposed Fiscal Year 2006-2007 Budget
- http://www.icann.org/announcements/proposed-budget-2006-07-cln.pdf