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ニュースレターNo.34/2006年11月発行

第66回IETFレポート

2006年7月9日(日)から7月14日(金)まで、カナダのモントリオールにて、第66回IETFミーティングが開催されました。本稿では、全体概要とDNS関連WG、IPv6関連WG、ENUM関連WG、セキュリティ関連WGについてのレポートをご紹介します。

全体会議報告

概要

2006年7月8日、モントリオール国際空港に降り立つと、清潔感のあるロビーと、英語とフランス語が混ざったざわめきに迎えられました。冬には気温がマイナス30度にもなる都市ながら、この時期はTシャツだけで過ごせる快適な気候です。

今回のIETFはカナダ・モントリオールのPalais des Congres de Montreal (モントリオール・パレ会議場)で開かれました。会場は市の中心部から徒歩10分程のところで、同じ規模の国際会議を同時に二つ以上は開けそうな巨大な会場です。

今回の参加登録者数は1,257名で、参加国は44ヶ国でした。米国・ダラスで行われた前回のIETFの時に、いくつかの国からの参加者が米国への入国ができず、IETFの働きかけによって急遽ビザが発行されるという出来事があったようですが、今回はそのような事態への配慮がなされて、カナダで開催された模様です。

IETFでは、WGの会議とPlenaryと呼ばれる全体会議が行われます。WGの会議では主にRFCになる前のドキュメント(Internet-Draft)に関する議論が行われます。議論は基本的にMLで進められますが、IETF期間中にオフラインで打ち合わせることでコンセンサスを確立したり、その場で実装をしてつきあわせたりして(!?)、RFC化を目指します。一方、Plenaryは会期中2回だけ行われます。

“IETF Operations and Administration Plenary”はIETFの運営面の全体会議で、7月12日(水)に開かれました。技術面の全体会議である”Technical Plenary”は7月13日(木)に開かれました。

IETF Operations and Administration Plenaryの様子
IETF Operations and Administration Plenaryの様子

IETF Operations and Administration Plenary

IETF Operations and Administration Plenaryは、IETFの活動全体の運営に関する報告と議論を扱う全体会議です。今回はミーティングのホストを務めるEricsson社のプレゼンテーションとNOC(Network Operation Center)の報告、IAOC(IETF Administratire Oversight Committee)やIASA(IETF Administrative Supporting Activity)、TOOLSチームといったIETFを支える活動の報告と、IETFにおける標準化プロセスの再検討に関する議論などが行われました。

はじめにIETFチェアのBrian Carpenter氏からチェア報告がありました。前回のIETF以降、4つのWGが新設され13WGが終了、RFCが138出されたそうです。IASA報告の中では、RFC Editorの活動報告や前回のIETFの会計報告などが行われました。RFC EditorはRFCの校正を行い、体裁を整えるチームで、2年程前より体制を建て直し徐々に作業効率の向上を図っています。2006年度は2005年度よりもRFC編集作業のペースが58%近く向上しているそうです。

前回のIETFの会計報告によると、ケータリングでの赤字や送迎サービスを予算に入れていなかったことなどが原因で、全体として$55,000程の赤字となってしまったそうです。しかし今回はケータリングのモデル化と改善を進めたとのことでした。これによって休憩時間に出るクッキーがすぐになくなってしまったり、逆に余ったりすることを避けられるようになってきたとのことです。

IETFにおける標準化プロセスの再検討は、2004年以降、IETFチェアのBrian氏自身によって進められてきました。これに関するInternet-Draftは、draft-carpenter-newtrk-questions-00.txtです。これまでWGの会議が何回か開かれてきましたが、方向性が決められず、今回のPlenaryで全体の意見を聞くことになったようです。しかし会場からは再検討の議論自体に意義を見いだせないといった意見が挙げられていました。

□ New IETF Standards Track Discusion (newtrk)
http://www.ietf.org/html.charters/newtrk-charter.html

Technical Plenary

Technical PlenaryはIETFの活動の中の技術的な議論を扱う全体会議です。IRTF(Internet Research Task Force)の活動報告、IRTFのSAM RG(Scalable Adaptive Multicast Research Group)の紹介、IABのチェア報告などが行われました。

IRTFは長期的な観点で技術を捉え、リサーチと議論・検討を行うグループです。必要性が認められるとIETFでの標準化作業を行います。SAM RGは前回のIETFの後に結成されました。SAM RGは、複数のマルチキャスト・プロトコルの利点をそれぞれ生かし、展開・普及を図ることを目的としています。IPマルチキャストだけでなくアプリケーション層に分類されるようなものや、中間的な分類(Hybrid)に入るプロトコルも議論の対象に入っています。IPマルチキャストとして分類されるものはXCASTのみとなっています。

□ SAM Research Group
http://www.samrg.org/
□ XCAST
http://www.xcast.jp/

IABのチェア報告では、IAB主催のBoFやワークショップの紹介とRFC Editorのあり方の検討に関する発表がありました。これまで2005年10月のNANOGや2006年3月のAPRICOTで開いてきたIPv6 Multicast BoFが、2006年4月に行われたRIPE Meetingでも行われたそうです。また秋に予定されている”Routing and Addressing”ワークショップのお知らせがありました。

□ IAB-Sponsored Open Meetings (IAB主催のオープンミーティング)
http://www.iab.org/documents/open-mtgs/

IABでは今後30年という長期的な視点で、RFC Editorのあり方について検討しています。(ちなみに、最初のRFCであるRFC1が出たのは1969年4月7日で今年で37年経ったことになります)特にRFC Editorのプロセスの中でIABやIAOC、そしてIETFがどのように関わっているべきかといったことを議論しており、そのために、RFCの目的やミッション、RFC化の役割分担についての整理をしようとしています。またIABではIAOCと共にRFC EditorのRFP(Request for Proposal - 提案依頼書)の作成を進めているそうです。会場からはRFC Editorに関する議論に対して時間をかけ過ぎているといった意見が出ていましたが、ドキュメント(Internet-Draft)の著者の主旨を正確に組み入れ、かつRFC化の作業がコミュニティの必要に応えるようなスピードで行われるための効率化を図るため、慎重な検討が進められている様子がうかがわれました。

この他に、IDN(Internationalized Domain Names)とIDNA(Internationalizing Domain Names in Applications)を組み合わせて使うことの問題点、例えば類似する文字でspoofing(だます行為)が行われてしまうこと等について、DNSのアーキテクチャの中で取り組む考え方などについて紹介されていました。


今回のIETFではEricsson社の提供でsocial event(参加者を対象とした会議以外のイベント)が行われました。会場の近くを流れるローレンス川でのディナークルーズです。会場から離れ、技術以外の話題で交流することで、IETFが多様な国からの参加者によって成り立っていることを改めて実感しました。

(JPNIC 技術部 木村泰司)

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