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ニュースレターNo.34/2006年11月発行

Whoisを巡る最近の議論について

Whois(「ふーいず」と読みます)とは、ドメイン名やIPアドレスなど、いわゆるインターネット名前・番号資源の登録関連情報を、インターネット内で閲覧可能とするために、インターネットの初期から採用されていた仕組みです。UNIX系のコンピュータではwhoisというコマンドを使ってこれらの情報を閲覧することができますが、最近ではドメイン名登録機関のWebページにwhois情報を検索するための入力用窓が設けられていて、whoisコマンドを使わなくてもwhois情報を見ることができるようになっている場合が多くあります。

Whoisは、インターネット上で技術的なトラブルが発生した場合に、トラブル発生元の担当者を調べ、その人への連絡方法を知るために利用できます。“whois”(「誰が」)という名前はこれに由来します。このような使い方がwhoisの当初の設計意図であったと思われ、実際インターネットが研究者間のネットワークであった十数年前には、「whois情報はネットワークの管理目的にのみ使用すること」というような簡単な約束でさほどの問題も生じませんでした。しかし、インターネットの発展に伴い、いろいろな問題が生じてきました。ひとつはwhois情報がダイレクトメールや迷惑メールに利用され、プライバシーの侵害とも言える事態を生じたことです。他方では、消費者を騙すなどの悪徳サイトが出現すると、その運営者を特定するために役立つという面も出てきました。そのほか、いわゆるサイバースクワッターを特定するためにも有効利用されてきました。さらに、whois情報の中にはかなりの虚偽が含まれているという点も指摘されました。このようにwhois情報提供の功罪がいろいろ出てきたため、ICANNではgTLDにおけるwhois情報の在り方についての議論が数年前から始められました。

ICANNでは当初、これまでwhoisで提供されている情報のうち、どれをどのように表示するか、という議論に多くの時間をかけましたが、堂々巡りの議論で決着がつきませんでした。その経過を簡単に総括しますと、プライバシー保護を重視する立場と情報公開を重視する立場の間で、「表示の方法」という表面的な問題だけを話し合っても妥協点は見つからなかった、と言えるでしょう。このため、2005年中頃になり、「whoisの目的は何か」という根本問題に戻って議論をやり直そう、という機運が出てきました。数か月の議論の後、これについて二つの定式化が候補として示されました。

  1. DNSデータの設定にかかわる諸問題を解決できる人(組織)に連絡を取るために充分な情報を提供する
  2. 当該ドメイン名の登録と使用にかかわる諸問題を解決できる人(組織)に連絡を取るために充分な情報を提供する

1の方が2に比べて提供される情報量は少なくなると考えられ、従ってプライバシー保護に対してはより配慮したものになることが予想されますが、1では当該ドメイン名登録が引き起こす社会的な問題に対しては配慮しないということになると思われます。また、ドメイン名のレジストラはICANNとの契約により自己の顧客情報をデータとして第三者に有料で提供する(「バルクアクセス」という)ことが禁止されておらず、従って1の方が営業上有利だという事情があります。

GNSO評議会の中でも1と2は支持が拮抗していましたが、結局2006年4月12日の投票により1を採択しました。ところが、これに対してはGAC(政府諮問委員会)を中心として異論が噴出しました。犯罪捜査や消費者保護の観点から、1では困る、という主張です。これを受けて、GNSO評議会は「これはあくまでも登録情報の一部を一般へ情報公開する目的であって、登録者から情報を収集する目的ではない。法律上の要請や知的財産権保護の必要による場合には非公開情報でも適切な閲覧者に提供する」との補足的な説明を行いましたが、いかにも後付で歯切れが悪いものでした。さらに「登録機関が登録者から収集する個人情報については、その目的や利用方法などに関して別途検討する」という決定を行って、事態の進展を図っています。

このように、プライバシー保護と情報公開という二つの価値観の間でwhoisに関する混沌とした議論が続いていますが、2006年6月30日にマラケシュで開催された理事会では、「理事会が2007年の早い時期に検討できるようにwhoisに関する提案事項を纏めることをGNSOに求める」と決議されました。理事会が設定したこの期限に向けてどのように議論を進めて行くのか、注目されるところです。

(JPNIC インターネットガバナンス・DRP分野担当理事 丸山直昌)

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