メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.35/2007年3月発行

第67回IETF報告

全体概要

概要

第67回IETFは2006年11月5日(日)~10日(金)、アメリカ・サンディエゴにあるSheraton San Diego Hotel & Marinaで開かれました。サンディエゴはアメリカ西海岸のカリフォルニア州の南部にある人口120万人程の都市で、南へ30km程行くとメキシコとの国境があります。町のすぐ近くにアメリカ海軍の基地があり、ダウンタウンから徒歩圏内にある海沿いのマリーナパークからは、湾内に軍艦が停泊している様子が見られます。

IETFが開かれたSheraton Hotelはダウンタウンから車で15分ほど離れた所にあります。サンディエゴ空港とヨットハーバーに隣接していて眺めは良いのですが、ショッピングセンターや飲食店はほとんどなく、また鉄道の駅が近くにありません。そのためか、IETF開催中の夕方頃から夜にかけて、会場の裏手とダウンタウンの中心地にあるGaslamp地区との間で、参加者のためにチャーターされたバスが臨時運行していました。

オンラインのサービスとしては、前回と同様にミーティング参加者向けのメーリングリストが提供されていました。さらに今回は参加者が情報交換を行うためのブログとWikiが設置されていました。メーリングリストではSheraton Hotelのゲストルームにあるインターネット接続機器の不具合や、会場の無線LANに関する情報交換が行われていました。

今回のIETFの参加登録者は1,199名で、41ヶ国からの参加がありました。日本からの参加者は全体の10%強で、55%近くを占めるアメリカに次いで2番目の参加者数です。全体の人数はここ3回程は大きな変化はないようです。

初日の11月5日(日)に各種チュートリアルとレセプションが、11月6日(月)~11月10日(金)にWGとBoFが、8日(水)と9日(木)の夜にPlenary(全体会議)が行われました。

写真:パネラーのみなさん
Plenaryの模様

IETF Operations and Administration Plenary

IETF Operations and Administration Plenaryは、IETFの運営全般に関する報告と議論が行われる全体会議です。このPlenaryでは、NOC(Network Operation Center)リポートやホストプレゼンテーション、IETFチェアの報告などが行われました。

NOCリポートではIETF会場のネットワークの利用状況などについて報告されました。会場では毎回無線LANを使ったインターネットへの接続サービスが提供されており、最近では無線チャンネルの有効利用と効率化のために、802.11aの利用が推奨されています。IETF期間中に802.11aを利用していた端末は全体の25%程で、前回に比べて徐々にその数が増えつつあるようです。

IETFチェアのBrian Carpenter氏からは、IASA(IETF Administrative Support Activity)とIAD(IETF Adnimistrative Director)の活動報告が行われました。前回の第66回IETF以降二つのWGが設立され、12のWGがクローズ、現在120程のWGが活動しているとのことです。RFCは99出され、新規のInternet-Draftは440程作成されたとのことです。ちなみに去年の同じ期間には100程度のRFCが出され、新しいInternet-Draftは435作成されていましたので、昨年と比べると若干少なかった模様です。

また今回はJon Postel賞の受賞者の発表がありました。Jon Postel賞はRFCの編纂やIANA(Internet Assigned Numbers Authority)としてIPアドレスの管理などに貢献したJonathan B. Postel氏にちなんで1999年に設けられたもので、技術的な貢献やリーダーシップの発揮といったコミュニティに対する継続的な貢献のあった人物に対して贈られます。受賞者は毎年選ばれ、クリスタルグローブと賞金2万ドルが贈られます。

今年の受賞者は、南カリフォルニア大学のISI(Information Sciences Institute)におけるRFC Editorのco-leaderであったJoyce K. Reynolds氏と、Bob Braden氏でした。Jon Postel氏より引き継いでRFCの編纂にあたり、RFCの品質向上や現在に至るRFCの認知度向上に対する貢献が称えられました。

□Postel Awards
http://www.isoc.org/awards/

会場での参加者の発言に基づいて議論を行うオープンマイクの時間には、主にIETFで提供されてるツールに関して議論が行われていました。IETFによるツールの提供は、IETFの予算の中で行われているにも関わらず、開発の際に参加者が意見を出す機会が設けられていない、という指摘から議論が始まりました。これについて、オープンソースにすることでノウハウがたまりやすくなる(と同時に多くの人の考えを反映できる)、ツールの位置付けを知っているところでないと開発が難しいことから、事務局の契約が特定の会社に結びつきやすいのではないか、といった意見が挙げられていました。その他にIETFの音声中継は参加者でなくても聞くことができるが著作権の提示がないといった指摘が挙げられていました。この件についてはIPR(Intellectual Property Rights)WGで議論されていく模様です。

□IETF TOOLS
http://tools.ietf.org/
□IPR(Intellectual Property Rights)WG
http://www.ietf.org/html.charters/ipr-charter.html

Technical Plenary

Technical Plenaryは、IETF全体に関係した技術に関する議論を行う全体会議です。IAB(Internet Architecture Board)のチェアレポート、IRTF(Internet Research Task Force)の活動報告、テクニカルプレゼンテーションなどが行われました。

IABのチェアレポートはIABチェアのLeslie Daigle氏によって行われました。IABではインターネットのアーキテクチャの観点で、WGとは独立したドキュメント作成を行っており、中にはRFCになっているものがあります。最近作成されたドキュメントは以下の三つです。

□draft-iab-iwout-report-00.txt
"Report from the IAB workshop on Unwanted Traffic March 9-10, 2006"
(※2006年1月現在、draft-iab-iwout-report-01.txt が出ています)
□draft-iab-multilink-subnet-issues-00.txt
"Multilink Subnet Issues"
(※2006年1月現在、draft-iab-multilink-subnet-issues-02.txtが出ています)
□draft-iab-net-transparent-01.txt
"Reflections on Internet Transparency"

はじめのInternet-Draftは、2006年3月に行われた"IAB Unwanted Traffic Workshop"の報告です。Technical Plenaryの後半でサマリー報告も行われました。質疑応答の際のLeslie Daigle氏の補足によると、このワークショップは主に(コミュニティの)意識向上を図ることが目的であったようです。

インターネットの利用者に対する脅威はCode RedやBlasterワームが流行した2001年~2003年頃に比べて深刻になりつつあります。ワークショップでは"アンダーグランドエコノミーの発展"を主な要因と位置づけ、現状の問題を明文化して今後の活動の方向性を探るための議論が行われた模様です。

あるWebサイトではクレジットカード情報や銀行口座に加えて、ISPで稼動しているルータのアカウントやボットネットが売り買いされています。このような経済活動の結果、スパムメールやDDoS攻撃といった"Unwanted Traffic"を生み出す基盤が維持され、またマルウェア(不正な挙動をするソフトウェア)の発達を促すような競争が行われている、と言われています。一方でさまざまなデータが全てHTTPの中でやりとりされていたり不正行為を隠すためのIPアドレスの詐称や、インターネットの経路広告の交換をハイジャックできてしまうことなど、"Unwanted Traffic"を止められない現状が指摘されています。

これに対して、中長期的な対策と短期的にできる活動が挙げられていました。中長期的には、まずルーティングのセキュリティ向上を図る点が挙げられていました。そのため、IRR(Internet Routing Registry)の登録情報をクリーンアップして、経路情報の検証ができるようにすることが必要だと指摘されていました。次にボットネットを止めること、そしてTCPのMD5オプションやパケットフィルタリングのBCP(Best Current Practice)といった既存の技術の普及を図ること、といった提案がなされていました。

短期的にできることとしては、既にRFCになっているhost requirement、route requirement、ingress filteringに関するドキュメントを更新することや、IABによる啓発活動、IRTFにおける効果的な対策に関する調査などが挙げられていました。Security Area DirectorのSam Hartman氏によると、このワークショップのリポートは興味深く、一読することが薦められていました。

□"Report from the IAB workshop on Unwanted Traffic March 9-10, 2006"
http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-iab-iwout-report-00.txt
(※2006年1月現在、draft-iab-iwout-report-01.txtが出ています)

Technical Plenaryの後半では、IABのInternet-Draftである"Reflections on Internet Transparency"とIAB Routing and Addressing Workshopの報告が行われました。

□Reflections on Internet Transparency
http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-iab-net-transparent-01.txt

このドキュメントはインターネットの原則的な考え方である「透過性」に関するもので、これまでのIABの見解を見直し、新たな透過性の考え方に関する議論を紹介したものです。プレゼンテーションでは、TCP/IPの階層モデルの中で、さまざまなプロトコルが透過性に影響する要素を持っているという点が紹介されていました。

IAB Routing and Addressing Workshopは、2006年10月18日にオランダのアムステルダムで開かれたもので、近年の経路情報の増大にどのように対処すべきかについて、主にバックボーンオペレーターを対象として行われたものです。現在、Tier-1レベルのISPでは交換されている経路情報が20万経路に達しているという報告があります。もし現在のままIPv6とのdual stack(IPv4とIPv6を同時に使える構成)にすると50万経路に達するという予測が立っており、インターネットのアーキテクチャとしては規模拡張性に欠けるのではないか、と指摘されています。会場では現在最も普及しているBGPにこだわらず、この問題を解決するための議論を行うBoFを今後開くことの提案がありました。試しに会場で挙手をしてもらったところ、多くの人が賛成に手を挙げていました。その他にIPv6は今後様子を見ながら検証すべき、(ルーティングにおける)セキュリティに関する議論も必要である、といった意見が挙げられていました。

□The IAB Workshop on Routing and Addressing
http://www.iab.org/about/workshops/routingandaddressing/index.html

このワークショップは第53回RIPEミーティングの後、同じアムステルダムで行われていました。今後も、ISPのコミュニティとIETFのコミュニティの情報交換が進んでいくと思われます。

次回の第68回IETFは、2007年3月18日~23日、チェコ共和国のプラハで開かれる予定です。

(JPNIC 技術部 木村泰司)

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.