メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.35/2007年3月発行

IPv6関連WG報告

本稿では、IPv6に関連したトピックスとして、v6ops、shim6 の各ワーキンググループ(以下、WG)の動向について紹介します。

v6ops WG (IPv6 Operations WG)

IPv6のデプロイメントに関する話題を扱うv6ops WGのミーティングは、11月6日(月)の午前9:00~11:30という、ミーティング初日の朝一番の枠で開催されました。当初、ミーティング会場として小さめの部屋が予定されていたのですが、開始直後に部屋がいっぱいになり、急遽別の広い部屋で実施していた別のWGミーティングと部屋を入れ替えるという、IETFでも珍しい事態となりました(参加人数を予測して部屋を割り振っているはずなのですが)。最終的には、150名程度という多くの参加者によって、議論が実施されています。

まず、会場から、NAT-PTの後継プロトコルについての提案がありました。IPv6とIPv4間のプロトコル変換を実施するNAT-PT(RFC2766)は、運用上・セキュリティ上の問題の多さから、その文書のステータスをHistoricに変更することになっています(当初、Experimentalステータスにしよう、ということになっていましたが、IETFの文書ステータスの関係から、Proposed Standard ステータスからはExperimentalステータスへの移行ができないため、Historicにする方向で検討が進んでいます)。

NAT-PTに関する問題は、draft-ietf-v6ops-natpt-to-exprmntl-03.txtに詳述されています。しかしながら、IMSネットワークでのアドレス変換の必要性があるとの意見があり、再度提案/議論が実施される予定になっています。

この後、RFC化に向けた、ラストコール(WGLC:Working Group Last Call)を目指す五つのWGドキュメントのレビューと、WGとして取り組んでいる二つのトピックについての議論がありました。

レビューされたドキュメントは、以下の五つです。

  • 802.16ネットワーク(WiMAX等)におけるIPv6デプロイメントシナリオ
    (draft-ietf-v6ops-802-16-deployment-scenarios)
  • IPsecを用いた、IPv6トンネルのセキュア化
    (draft-ietf-v6ops-ipsec-tunnels)
  • IPv6ユニキャストアドレス割り当て
    (draft-ietf-v6ops-addcon)
  • キャンパスネットワークにおけるIPv6移行シナリオ
    (draft-ietf-v6ops-campus-transition)
  • IPv6におけるポートスキャン
    (draft-ietf-v6ops-scanning-implications)

これらのドキュメントは、関連WGへの意見照会後に、WGLCへと進むことになっています(2007年1月の時点で、上記五つのドキュメントのうち、“802.16 ネットワーク”以外のドラフトはWGLCがかかり、MLでの議論が進んでいます)。

これらのドキュメントについての議論に続いて、IPv6ネットワークのリナンバリングについてと、複数アドレス選択に関するドラフトについて、議論されました。

後者は、NTTとIntecNetcoreの共同提案です。IPv6ノードは同時に複数のIPv6アドレスを持つことがあります。このような環境で通信を開始する際、一つのアドレスを選択する必要がありますが、アドレスの選択を間違えると通信ができない可能性があります。そこで正しいアドレスを選択するためのアドレス選択ポリシーを、ノードに提供できるようにしよう、というものです。v6opsWGとして取り組みを進めていくことが合意され、今後、アドレス選択の手法を含めて議論が実施されることになっています。

v6opsの文書についての議論が終わった後、オープンな議論として、IPv6のマルチホーミングについての議論が実施されました。今回は、特に、ルーティングの観点からの問題提起として、現状、IPv4ネットワークはマルチホーム関連の経路情報の多さが問題になっていますが、IPv6も同じ方向に進み始めていることが指摘されました。この問題は、IETFのプレナリセッションでも提起されており、今後、解決に向けての議論が加速されそうです。

□v6ops WG
http://www.ietf.org/html.charters/v6ops-charter.html
http://www.6bone.net/v6ops/
□第67回IETF v6ops WGのアジェンダ
http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/agenda/v6ops.txt

shim6 WG(Site Multihoming by IPv6 Intermediation WG)

shim6WGは、従来のルーティングによるマルチホームではなく、エンドホスト間でのインタラクションによって、IPv6におけるマルチホームを実現するプロトコルを策定するWGです。今回のセッションでの主なトピックは、基本スペックのWGLCと実装状況の紹介等でした。

基本スペックは、下記の三つのドキュメントから構成されており、プロトコル自体を記述したものと、ハッシュを用いてアドレス情報を安全に交換するHBAという方式について記述したもの、そして通信障害検出とアドレスペア選択の方式を記述したもの、となっています。

  1. Level 3 multi-homing shim protocol
  2. Hash Based Addresses (HBA)
  3. Failure Detection and Locator Pair Exploration
    Protocol for IPv6 multi-homing

いくつかの小さな問題に関するディスカッションがありましたが、結局ドキュメントのレビューワーが少なく、その場ではWGLCには至らず、メーリングリストで継続審議ということになりました。

基本スペック以外のいくつかの提案について更新状況を紹介した後、ソウル大学とETRI(韓国電子通信研究院)が共同で進めている実装の進捗状況について発表がありました。OSはLinuxで、現在はユーザーランドのデーモンとして実装を進めているとのことでした。他にも全部で四つ程進行している実装はあるようですが、まだ基本スペックの実装が完了しているものは無いようです。

最後に、WGのネクストステップとしては、基本スペックをIESGに提出し、次のIETF68ではセッションを持たず、IETF69にて実装から得られた知見等も含めて基本スペックや拡張モジュールの検討を行ってはどうか、という提案がチェアからなされました。

一時はIETF全体から多くの注目を集めていたshim6 WGですが、メーリングリストや今回のセッションでもあまり多くのレビューワーを集められないという状況になっているようです。トラフィックエンジニアリングに対するオペレーターからの要求に応えられていないことや、IPv6でもPIアドレスが利用可能になったことから、興味関心を無くしてしまった人が少なからずいるように思われます。

□shim6 WG
http://www.ietf.org/html.charters/shim6-charter.html
□第67回IETF shim6 WGミーティングのアジェンダ
http://www.ietf.org/proceedings/06nov/agenda/shim6.txt

intarea meeting (Internet Area Open Meeting)

Intareaのミーティングでは、Internetエリアの各WGのトピックの紹介や、どのWGにも属さないトピック、またエリア全体のトピック等が扱われます。今回は、認証関連のトピックや、アドレス詐称の防止などについて議論が実施されました。

IPv6には直接は関係ありませんが、このミーティングの最後の話題としてGeoff Huston氏より、インターネットにおける「名前」についてのプレゼンテーションが実施されました。DNSをはじめとして、インターネット上ではいろいろな「名前」が定義され、それぞれの層(インターネットのプロトコル階層)での「アドレス」とのマッピングが実施されています。IPアドレスについても、IPアドレスそのものに意味を持たせようという提案や、IPアドレスの持つ位置特定機能と、ノードの識別子としての機能を明確に分離する提案などが現在も議論されています。また、マッピングも、同じ目的のマッピングが違う階層で実施されていたり(モバイルIPとshim6、HIP など)等、統一性が無く、プロトコルも百花繚乱となってしまっています。

特に提案や結論のあるプレゼンテーションではなかったのですが、インターネットの利用に大きく関わってくる、「名前」のあり方について、今後検討を進めていく必要があると感じました。

□第67回IETF intareaミーティングのアジェンダ
http://www.ietf.org/proceedings/07nov/agenda/intarea.txt

第67回IETFミーティングの各種情報は、以下のURLより参照可能です。

全体プログラム
https://datatracker.ietf.org/public/meeting_agenda_html.cgi?meeting_num=67
WGアジェンダ、発表資料
https://datatracker.ietf.org/public/meeting_materials.cgi?meeting_num=67

(JPNIC IPアドレス検討委員会メンバー/NTT情報流通プラットフォーム研究所 藤崎智宏)

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.