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ニュースレターNo.35/2007年3月発行

IGFアテネ会合報告

2006年10月30日から11月2日までの4日間、インターネットガバナンスフォーラム(IGF:The Internet Governance Forum)がギリシャのアテネで開催されました。IGFはインターネットガバナンスのさまざまな問題に関して各界の利害関係者が対話を行うフォーラムで、2005年11月の世界情報社会サミット(WSIS)チュニス会議で設置が決定されたものです。

今回のIGFをどのように運営するかについては、事前にアドバイザリーグループで議論が積み重ねられました。このグループは政府、民間、NGOなどさまざまな背景を持つ46名のメンバーからなり、それ自体がマルチステークホルダーを体現しているようなメンバーでした。

このアドバイザリーグループにより、今回のIGFのテーマが「開放性(Openness)」「セキュリティ(Security)」「多様性(Diversity)」「アクセス(Access)」の四つに絞られ、IGFのメインセッションとしてこの四つのテーマが議論されました。

写真:会場内の様子
メインセッション(Openness Session)の模様

会合の形式ですが、パネリストが壇上に並び、発言はリアルタイムの速記録がスクリーンに投影され、フロアの出席者も司会者の指名を受けられれば発言可能という形で、ICANNやRIRの会合と似た雰囲気を感じました。しかしそれらの会議に出席した経験のない方にとっては、こういった形式は非常に新鮮だったようです。

会議の参加者は、事前登録ベースで1,200名弱でした。国連関連のイベントだけあって政府関係者も多かったのですが、研究者やインターネット関連団体、市民メンバーからの参加も多く、あるワークショップでは政府関係者4、研究者及び学術関係者4、その他2といった割合でした。参加者が多かったせいか会場の無線LANの通信品質が悪く、プログラムの更新情報等を得るのに四苦八苦でしたが、国連関連イベントでインターネット接続環境が提供されることを素直に感謝する方が良いのかもしれません。

会議の結論から言いますと、設定されたテーマについて今回のIGFで何らかの拘束力を持つ決議や宣言がなされたということはなく、従って既存のICANN体制に影響を与えるものではありません。会合のまとめは、最終日にそれぞれのセッションの司会進行役が「個人的感想」としてセッションの報告を行うことでそれに代えています。IGFはまずは対話の場として機能したということだと思いますが、メインセッションでは多くのテーマが結局のところ発展途上国に対するインフラ構築の支援をどう実現するかというところに収斂し、前途の多難さも感じました。開放性もセキュリティも多様性も大事だけれど、インターネットへのアクセスさえもなければ何も始まらない、という端的な意見が多く聞かれ、そういう観点からは今回最も参加者間の利害が先鋭化したメインセッションは「アクセス」だったと思います。

また、今回のIGFではメインセッションと並行して36ものワークショップが開催されています。インターネット関連団体が、自身が取り組むテーマについて自由に説明、議論をする場というものですが、IGF事務局はその結論には関知せず、あくまで諸団体が付随的に開催するイベントという位置づけでした。

この中では、私は「DNSとルートゾーンファイル管理」というワークショップに出席しました。ルートゾーンの管理が現在どう行われているかについて説明、議論するワークショップで、現にルートサーバを管理しているVeriSign社やAutonomica社の担当者もパネルに加わっていました。進行中、ルートゾーンファイルの変更、更新の最終承認権限を米国政府が保持していることに不満を表明する参加者が複数いて緊迫した場面もありましたが、その管理体制下で現に問題が発生していない状況で、体制の議論をすることにどれほどの意味があるのかといった冷静な意見も出され、その場は混乱することなく収まっていました。

元々IGFは拘束力のないプロセスに基づいて進められるという約束事があった以上、対話の場として機能することが重要な訳ですが、このように率直な意見交換が実際に運用に携わる層やユーザーとして利用する層との間でなされることによって、少しでも議論が建設的な方向へ進めばIGF開催の意義があったということになるのではないでしょうか。

IGFはまず5年間維持し、その間にIGFを継続するかどうかの検討が行われます。2007年はブラジル(リオデジャネイロ)での開催、2008年はインド、2009年はエジプトでの開催がそれぞれ決まっており、2010年のIGFにはリトアニアとアゼルバイジャンが立候補しているという状況です。この間にインターネットガバナンスを巡る議論がどういった方向に向かうのか、IGFの行く末はどうなるのか、引き続き動向を追っていきたいと思います。

□ The Internet Governance Forum
http://www.intgovforum.org/

(JPNIC インターネット推進部 穂坂俊之)

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