ニュースレターNo.39/2008年7月発行
第21回ICANN報告会レポート
2008年3月28日(金)、JPNIC会議室(東京都千代田区)にて、JPNICと財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催で第21回ICANN報告会を開催しました。以下に、報告会の内容をご紹介します。
ICANNニューデリー会議概要報告
JPNICの高山(筆者)より、ICANNニューデリー会議(2008年2月10日~15日)の概要を報告しました。本会議でのトピックであった、新gTLD導入に関するPDP※1、ドメイン名テイスティングへの対応、IDN※2に関する活動の進捗等が主な内容となります。
主なトピックの内容については、P.24からの「ICANNニューデリー会議報告」をご参照下さい。
IDN ccTLD fast trackの検討状況
IDN TLDの導入については、以下(1)~(3)の三つのプロセスが同時並行で進められていますが、このうちの(2)にあたる、IDN ccTLDの早期導入を目的とする“fast track”と呼ばれる暫定ポリシーの策定がとりわけ急ピッチで進められています。今回はこの“fast track”の経過にフォーカスして、株式会社日本レジストリサービスの堀田博文氏にご報告いただきました。
- IDN ccTLD導入の正式なプロセスとなるPDP
- 安全に混乱の無い範囲でIDN ccTLDの早期導入をめざすためのポリシーを策定するfast track
- 新gTLD導入に伴うIDN gTLD導入のプロセス
fast trackの検討を進めるIDNCワーキンググループは、大半がアジア太平洋地域からのメンバーで構成されるとのことです。日常生活で非ASCII文字を用いるコミュニティの中でも、特にアジア太平洋地域のメンバーができるだけ早くIDN ccTLDを実現させたいと思っていることが伝わってきます。
fast trackでは、IDN ccTLD文字列の選定に関するメカニズムとIDN ccTLD登録管理者の指名に関するメカニズムの二つが検討されており、ニューデリー会議での検討状況をお伝えいただきました。2008年6月にはfast trackのメカニズムを理事会に報告する予定になっており、2008年6月のパリ会議では、文字列選定や登録管理者の指名の方法についてより明確に見えてくるものと思われます。
ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省の柳島智氏より、政府諮問委員会(GAC)で議論されている主要議題についてお話しいただきました。
ICANNと米国政府は共同プロジェクト合意(JPA)を結んでおり、その中間レビューに関する意見交換が、本会議のGACにおけるトピックの一つとなりました。JPAとは、DNS環境に関する技術的調整および管理を民間に移行するためにICANNの責務等を定めたもので、中間レビューは、ICANNがそれらの責務を果たすためにどのように取り組み成果を挙げたか、といったことを確認するために設けられており、2008年2月15日まで意見募集が行われていました。
GACとして意見募集にコメントを提出するという意見もあったようですが、GACには米国政府代表も含まれるため、意見提出は見送られることになり、2008年6月のパリ会議で中間レビューの結果についてGACとしての見解を示す予定とのことです。
日本政府としては、これまでのICANNによる取り組みを評価する一方で、IPv4アドレスの在庫枯渇に関連してIPv6アドレスの円滑な導入や、IPv4アドレスの効率的利用等にさらに取り組んでいくべきと伝える等、将来の新たな問題にも迅速かつ適切に対応していけるよう、継続的な改善を期待している旨のコメントを提出したことが伝えられました。
ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)報告
財団法人ハイパーネットワーク社会研究所の会津泉氏より、At-Large諮問委員会(ALAC)の活動報告がありました。
本会議では、アジア太平洋地域のRALOであるAPRALOとICANNとの覚書に署名が行われたことが報告されました。APRALOは、2007年3月のリスボン会議で設立されていましたが、アジア地域でのICANN会議を待って覚書への署名が行われることとなっていたため、遂に本会議でその時を迎えることができたという訳です。
2007年6月のサンファン会議で全てのRALOが設立され、ALACの体制が整ったため、ALACとしての本格的な活動を始めてからは日が浅いと言えます。そのような状況で、ICANN内の各組織に対して3年毎に行われる外部組織によるレビューがすでに開始されています。レビューをされるには時期尚早という見方もあるものの、会津氏からは、今後のALACの活動にとって有益と考えているとの見解が示されました。ALACメンバーでワークショップを行い、ポリシー課題の議論等に加えて組織的な課題についても検討されており、組織の強化に向けて積極的に取り組んでいる様子がうかがえます。
新gTLD追加に向けたICANNの動き ~ここ1年の動き~
2007年1月のICANN報告会※3で、JPNICの丸山直昌より、新gTLD追加に向けたICANNの動きについて報告いたしました。その当時は、新gTLD導入のPDP(通称“PDP Dec05”)もそれほど多くの時間を要することなく終了できるのではないか、との見方もありました。しかしながら、その後1年余りが過ぎ、現在もPDPは継続しています。そこで、これまでを振り返りつつ、現況についてあらためて報告がありました。
PDPの終了に向けて残されているのは、2007年11月のロサンゼルス会議にてGNSOから提出された勧告への理事会決議となります。しかしながら、この理事会決議は、これまで数回の理事会で見送られています。2008年1月にICANNスタッフから提出された報告には、複数の勧告が互いに複雑に絡み合っているため、勧告の実現方法を見つけることが困難であるといった内容が記されており、理事会としても勧告にどう対応すべきか考えあぐねていると思われるとのことです。
PDPは終了していないものの、ICANNではRFP策定を依頼する業者や紛争処理機関の選定を行ったり、RFP公示開始までのタイムラインも公開するなど、ICANNスタッフレベルでは新gTLD導入の準備を着々と進めている様子です。しかしながら、これまでのプロセスを鑑みると、ICANNが想定するタイムライン通りに進んでいくと楽観視することはやや難しいようだとも伝えられました。
(JPNIC インターネット推進部 高山由香利)
- ※1 Policy Development Process:ポリシー策定プロセス
- ICANNの役割の一つに、インターネットの各種資源の調整業務に関連するポリシー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをポリシー策定プロセス(PDP)と呼んでいます。ICANN改革を受けて改定された新付属定款には、プロセスの詳細が明確に規定されています。
- ※2 Internationalized Domain Name:国際化ドメイン名
- ドメイン名を表す文字としてASCII以外の文字も使えるようにするための技術です。RFC3490、3491、3492で規定されています。
- ※3 第17回ICANN報告会(2007年1月17日)
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http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20070117-ICANN/
(動画も含めて資料も公開しています。)