ニュースレターNo.41/2009年3月発行
公益法人制度改革と新公益法人制度
2008年12月1日、公益法人に関する新たな法律が施行されて新公益法人制度がスタートし、JPNICは「特例民法法人」となりました。以下、新制度の概要と今後の検討事項についてご説明させていただきます。
「改革三法」の公布/施行とその背景事情
過去、旧社団法人・旧財団法人を規定する法律は、1896年に制定された民法の第34条※1以外になく、約110年の長きにわたり、これらの法人運営の基本は定款・寄付行為に則ってなされていました。
しかしながら、2006年6月2日にいわゆる「改革三法」と称される
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律※2
- 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律※3
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律※4
が公布され、2008年12月1日に施行されたことで、今後、旧社団法人・旧財団法人はこれらに基づく運営が求められることになりました。なお、新法の施行に伴い、中間法人法は廃止されています。
このような改革が行われることとなったきっかけとしては、いわゆる「KSD事件※5」をはじめとする、不祥事が挙げられます。そうした問題を受けて、2000年12月に閣議決定された行政改革大綱※6に、公益法人制度の改革が盛り込まれ、新法策定へとつながってきたことは確かです。しかしながら、一連の議論の中で一貫して主張されたのは、公益法人の経営透明化とそれに伴う情報の開示であり、振り返ってみると、公益法人改革はまさに時代の要請だったと考えることができるかもしれません。
新制度の概要
新制度では、「一般社団法人/一般財団法人」と「公益社団法人/公益財団法人」が設けられました。それぞれの特徴は、次のようになっています。
一般社団法人/一般財団法人 |
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公益社団法人/公益社団法人 |
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旧制度では、監督官庁から許可を受けることで、事業の公益性が認められるとともに、社団法人/財団法人の法人格取得が可能でした。一方、新制度においては準則主義※7を採用し、一定の要件を満たせば、一般社団法人/一般財団法人の法人格を取得できるものとされました。そして、公益社団法人/公益財団法人になるための公益性の認定は、内閣府に設置された公益認定等委員会が行います。つまり、法人の設立要件と公益性の認定が切り離されることになりました。
また、旧社団法人/旧財団法人については、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(一般に「整備法」と呼ばれています)により、新制度に移行するために5年間の猶予期間が認められました。
5年間の猶予期間中、旧社団法人/旧財団法人は、整備法の規定により、法律上の名称は「特例民法法人」となりますが、これまで通り「社団法人」「財団法人」と称してもよく、また税制上の取り扱いにも変更はありません。しかしながら、猶予期間の終わる2013年11月末までに、新制度に基づく各法人に移行しない場合は、解散扱いとなります。
公益認定等委員会とは?
次に、事業内容の公益性について認定を行う、「公益認定等委員会」について簡単にご紹介したいと思います。
公益認定等委員会は、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に基づき、内閣府内に設置された委員会で、同法に基づいた職務を行います。委員会を構成する委員は原則として非常勤で、「人格が高潔であって、委員会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律、会計又は公益法人に係る活動に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」とされています(「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」第35条第1項)。
委員会を構成する委員は7名とされており、2009年2月末時点の構成は次の表2の通りです。
内閣府設置 公益認定等委員会の委員 | ||
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委員長 | 池田 守男 | 株式会社資生堂 相談役 |
委員長代理 | 佐竹 正幸 | 元日本公認会計士協会 常務理事 |
委員 | 雨宮 孝子 | 元明治学院大学大学院法務職研究科 教授 |
大内 俊身 | 元東京高等裁判所 民事部 総括判事 | |
袖井 孝子 | お茶の水女子大学 名誉教授 | |
出口 正之 | 国立民族学博物館 教授 | |
水野 忠恒 | 一橋大学大学院 法学研究科 教授 | |
(出典:公益法人行政総合情報サイト(https://www.koeki-info.go.jp/)) |
また、公益性の認定の申請は内閣府に提出することになっています※8。認定するか否かは、内閣府が公益認定等委員会に「諮問」し、委員会からの「答申」を受け取った後、結論を出すものとされています。
今後の選択肢と新制度への移行のための手順
JPNICも、期限内に新制度に移行しなければならず、今後の選択肢としては
(1)単独での一般社団法人
(2)単独での公益社団法人
(3)他団体との合併
等が考えられます。
(1)、(2)を選択する場合の要件等について、簡単にご説明します。
まず(1)ですが、旧社団法人であるJPNICが、公益社団法人ではなく一般社団法人に移行しようとする場合、これまでに公益法人として税制の恩典を享受したことにより蓄積した財産を、今後何年間かけてどのような公益的な事業のために使用していくのか、公益認定等委員会にあらかじめ計画を提出しなければなりません。旧社団法人時代に蓄積した財産は、一般社団法人の事業には使えないということです。
(2)の場合、公益性の認定を受け、「公益社団法人」の名称を得られた場合には、公益目的事業費(公益性が認められる事業の費用)は、毎年度必ず費用全体の50%を超えていなければなりません(費用ベースで計算)。これを満たせなくなった時には、内閣府より是正勧告がなされ、それでもなお是正されなかった場合には、公益性の認定が取り消され解散を命じられます。また、解散に伴い、それまで公益法人として税制の恩典を享受して蓄積した財産は、国等に贈与しなければならないとされています。
新制度への対応にあたっては、こうした点も含めて十二分な検討が必要です。新制度は、冒頭で述べた通り2008年12月1日にスタートしたばかりですが、既にスタート初日に移行申請を行った法人もあるようです。ただ、公益認定等委員会の当初予想に比べると、移行申請の出足は鈍いとのことです。
JPNICの今後の方向性やスケジュールを決めていくにあたっては、まずは事務局内で十分に情報収集を行い、理事会にて議論を尽くし、会員の皆様にお諮りする必要があります。特に、新制度に基づく法人に移行するためには、現行の定款や会員制度の見直し等が必要となるため、会員の皆様には今後総会等において、より詳しくご相談させていただきます。
(JPNIC 総務部 藏増明日香)
- ※1 民法(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)
- 第三十四条法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
- ※2 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
- http://law.e-gov.go.jp/announce/H18HO048.html
- ※3 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
- http://law.e-gov.go.jp/announce/H18HO049.html
- ※4 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
- http://law.e-gov.go.jp/announce/H18HO050.html
- ※5 KSD事件
- 2000年に、財団法人ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD/現、財団法人中小企業災害補償共済福祉財団)の創立者が、国会議員への政界工作に関連した背任行為があったとして、東京地検特捜部に逮捕された汚職事件。創立者である元理事長の他、元閣僚を含む数人が逮捕・起訴され有罪判決を受けています。
- ※6 行政改革大綱(平成12年12月1日閣議決定)
- http://www.gyoukaku.go.jp/about/taiko.html
- ※7 準則主義
- 新しい制度では、法に基づく手続きに従い一定の要件を満たすことにより、行政官庁の許可等を得なくても当然に法人格が与えられるようになりました。
- ※8 公益性の認定の申請先について
- 複数の都道府県にまたがって事業を行う法人等については内閣府設置の公益認定等委員会に提出しますが、活動範囲が特定の都道府県に限られるものについては事務所のある都道府県の委員会に申請を行うものとされています。各都道府県にも、合議体の委員会が設けられています。