ニュースレターNo.41/2009年3月発行
Internet Week 2008 開催報告
開催12回目を迎える「Internet Week 2008」を2008年11月25日から4日間にわたり、東京・秋葉原で行いました。本稿では、イベントの全体報告と最終日に行われたIP Meetingの開催報告をお伝えします。
2008年11月25日(火)~28日(金)の4日間、2007年に引き続き、秋葉原コンベンションホール(東京)にてInternet Week2008を開催いたしました。会期中は、あいにく雨模様の日もありましたが、約2,000名(延べ人数)もの方にご来場いただきました。
開催実績としては、1日セッション4、半日セッション12、ハンズオンセッション4、協賛企業様によるランチセミナー1、BoF6でした。また、今回のセッションの特徴としては、2011年頃と迫り来る「IPv4アドレス在庫枯渇」の問題や、「IPv6への移行」に関するプログラムに重きを置いた点です。状況の把握とともに、こうした問題に対する理解を深め、より現実的に今後のアクションについて考えていただくことを狙いとしたセッションを多数開催いたしました。
中でも、ハンズオンセッション「実践!IPv6ネットワーク構築~基礎概念編~」と、「実践!IPv6ネットワーク構築~エンタープライズNW編~」は、事前登録開始後早々に満席となり、新たに設けた追加セッションもすぐに定員に達してしまうほどの人気でした。当日は、参加者2~3名が1組となり、実際に機器を使ってIPv6の設定を体験していただきました。その他、講義型の「実践!IPv6ネットワーク構築~データセンタNW編~」、「実践!IPv6ネットワーク構築~サービスプロバイダNW編~」、「実践!IPv6Webサービス構築」についても、事前登録の段階で既に満席でした。当日、これらの会場内は大勢の参加者による熱気に包まれており、「IPv6への移行」に対する関心の高さを目の当たりにしました。
その他、今回は、「インターネットの発展に伴い、見えにくくなっている隣のレイヤ(上位レイヤ)の状況を知ること」、「インターネットコミュニティにおける新たな動き」等の新しい視点から、Web関連技術等の上位レイヤの話、ITCommunityの最新活動状況を扱うセッションも設けてみました。その結果、2007年に比べ、新規参加者の割合に増加が見られました(2007年28.2% → 2008年35%)。今後もインターネットに携わるたくさんの方々が、このイベントに参加することで繋がり、人の輪が広がっていけばと思います。
またセッション以外では、初の試みとして、会場内に、ミーティングスペース/展示ブース/アクセスコーナー/書籍販売コーナー/雑誌無料配布コーナー等からなる「交流スペース(人的交流を目的としたスペース)」を設置し、セッションの合間等、参加者の方にご利用いただきました。そして、11月25日(火)~27日(木)の3日間は、セッション終了後に同スペースにて、「Happy Hour」を開催いたしましたが、ご参加された方はいかが思われましたでしょうか。ビールやワインを片手に、協賛企業様によるプレゼンテーションをお聞きいただいたり、クイズ大会に参加いただいたりしましたが、お楽しみいただけたでしょうか。この場に集った方々との交流が、新たな出会いや相互理解に少しでも繋がっていましたら幸いです。
最後になりますが、Internet Week 2008にご参加くださった皆様、ご来場ありがとうございました。当日ご記入いただいたアンケートでは、「来年もぜひ参加したい」が約6割弱、また今年のイベントに参加して「役に立った」とのご回答が約8割強と、うれしい結果を拝見しました。アンケート内にいただいたたくさんの貴重なご意見を参考に、皆様にとってさらに役立つイベントへと進化させていきたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。また、この場をお借りしまして、本イベントに多大なるご協力をいただきました、ご講演者の皆様、ご協賛企業、ネットワークスポンサー、メディアスポンサー、ご後援団体の皆様やプログラム委員の皆様をはじめとする全ての方々にも、厚く御礼申し上げます。
(JPNIC インターネット推進部 平井リサ)
◆Internet Week 2008◆
【会期】2008年11月25日(火)~11月28日(金)4日間
【会場】秋葉原コンベンションホール
【U R L】http://internetweek.jp/【主催】社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)
【企画】Internet Week 2008プログラム委員会
【協賛】
NTTコミュニケーションズ株式会社
株式会社日本レジストリサービス
株式会社ネットワークバリューコンポネンツ
エクイニクス・ジャパン株式会社
エスアイアイ・ネットワーク・システムズ株式会社
日本インターネットエクスチェンジ株式会社
フリービット株式会社
インターネットマルチフィード株式会社
株式会社SRA
株式会社創夢
Asia Pacific Network Information Centre(APNIC)
【ネットワークスポンサー】
学術情報ネットワーク(SINET)
独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)
シスコシステムズ合同会社
日商エレクトロニクス株式会社
アラクサラネットワークス株式会社
日本電気株式会社
NECアクセステクニカ株式会社
ヤマハ株式会社
【後援】
総務省/文部科学省/経済産業省
IPv6普及・高度化推進協議会
財団法人インターネット協会(IAjapan)
クライメート・セイバーズコンピューティング・イニシアチブ(CSCI)
社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)
有限責任中間法人JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)
社団法人情報サービス産業協会(JISA)
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)
地域間相互接続実験プロジェクト(RIBB)
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)
社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)
日本DNSオペレーターズグループ(DNSOPS.JP)
財団法人日本データ通信協会(Telecom-ISAC Japan)
有限責任中間法人日本電子認証協議会(JCAF)
日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)
特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)
日本UNIXユーザ会(jus)
WIDEプロジェクト(WIDE)
IP Meeting 2008 午後の部
~IPv4アドレス在庫枯渇を乗り越えて~レポート
IP Meetingは、Internet Week開始以前の1990年から、インターネット関係者が一堂に集まる会合として始まり、後にInternet Weekとして改組するきっかけともなったイベントです。「インフラとしてのインターネットの開発・構築・運営に関わる人が一堂に集まり知識・課題を共有し、インターネットの発展のための議論を行う」場として、19回目を迎えました。今回のIP Meetingは、Internet Week 2008最終日の11月28日(金)にクロージングセッションとして開催し、250名を超える方にご参加いただきました。
このIP Meetingは、「午前は、今年のインターネット基盤技術の総括をする」「午後は、最新動向を伝える講演とパネルディスカッションを行う」という2部構成で、毎年プログラムを構築しています。今回最新動向として選ばれたのは、「IPv4アドレス在庫枯渇を乗り越える」であり、それについて、事業者を交えたパネルディスカッションが行われました。本稿ではその概略をレポートします。
パネルディスカッション「IPv4アドレス在庫枯渇を乗り越えて」
IPv4アドレスの在庫枯渇を乗り切るためには、諸ステークホルダーの協調した対応が不可欠と言われています。業界におけるステークホルダーの代表的な方、しかも「これを乗り越え、インターネットが動き続ける」という観点で、最もインパクトが大きい領域の事業者などにご登壇いただき、自身のポジションを示し、枯渇期を乗り切る策を共に考えていくことになりました。モデレータとパネリストは、次の通りです。
- ・モデレータ
- 後藤滋樹/社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター理事長
- ・パネリスト(敬称略):
-
江崎 浩/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース/東京大学大学院情報理工学系研究科教授
牧園啓市/ソフトバンクBB株式会社執行役員技術統括ネットワーク本部本部長
安武弘晃/楽天株式会社取締役常務執行役員
山下良蔵/社団法人日本ケーブルテレビ連盟日本ケーブルラボ部会担当部長
馬場達也/株式会社NTTデータビジネスソリューション事業本部ネットワークソリューションビジネスユニット課長
前村昌紀/社団法人日本ネットワークインフォメーションセンターIP事業部部長
江崎 浩/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース/東京大学大学院情報理工学系研究科教授
まずはじめに、モデレータの後藤理事長から「今日の議論がまとまるとは容易に想像できないが、この場は工夫や課題などの情報を読み取り、今後を考えるステップである。世の中には、さまざまな立場、いろいろな見方があるので、会場からもご意見をいただきたい」と口火が切られ、その後、各パネリストからも発言がありました。下記ページ以降に、各パネリストの代表的な発言をまとめましたのでご覧下さい。
コストの理由づけとNGNの今後が鍵
牧園 啓市
ソフトバンクBB株式会社
サービス提供をしながらノウハウを蓄積してきた「キャリアISP」として、何ができるか、どういう思いがあるかを話します。
IPv6導入にあたり、よく議論されるのは、「PC」と「ネットワーク」と「サーバ」の三者の対応がどういう状況にあるかということです。「PC」に関しては、2016年にデフォルトでIPv6が動くようになる、最悪でも2018年に70%が対応するという予測もありますが、ネットワーク側はそうはいかないのではないかと考えています。例えば、弊社Yahoo!で何かの付加サービスを、新規に提供する場合は、新規ユーザーへはほぼ100%適用できても、既存のユーザーには0.1%位しか適用できないという実績があります。仮にIPv6のサービスを「新規サービス」とする時にも、既存のユーザーにはその普及が難しいことが容易に想像できます。
そうは言っても、キャリア全般、IPアドレスがないとビジネスが成り立たないので、来年、デフォルトでIPv6ネイティブのサービスの提供を考えていますし、意識を高めて情報にも目を通すようになっています。また、それ以外にも、IPv6を使ったネットワークの提供を始めています。
その中で感じている課題をいくつか述べます。
企業に対して導入のコンサルティングをする上での一番大きな問題は、「コスト」です。コストをかけるに足るメリットをどう表現するのか。いつの時期に何をするのかを示すことがポイントです。また、NGNがどうなっていくのかも大きなポイントと考えています。今、NGNの接続方式がなかなか決まらない状況ですが、間違いなくIPv6普及という観点では重要なポジションを占めるものです。公正な競争環境と、利用者の利便性を考慮することが必要であるため、こういった問題についても共に議論し、技術的な問題であればそれを一緒に解決していきたいと考えています。よく、このIPアドレス在庫枯渇の問題は、レイヤ3以上の話かなとも思われがちですが、今日のミーティングで自然にステークホルダー間の話が始まっていることを感じています。ISPとして、できることはやっていきたいと考えています。
経済合理性の説明のつくタイミングの見極めが重要
安武 弘晃
楽天株式会社 取締役常務執行役員
「サービス提供者」としての考えを述べたいと思います。
現状は、サービス提供に精一杯で、次のことをなかなか考えられない忙しさです。弊社は、500~600人のエンジニアを抱えており、現場の人間は、IPv6にいきたいという気持ちがあるとは聞いています。ただ、今、そういう機運がようやく出てき始めたところで、急激には進んでいません。なぜかと言えば、IPv6のネイティブで接続して買い物をしたいお客様がいるかと言われれば、現状いないからです。我々の一番のミッションは、「インターネット上で買い物ができるというサービスを、どれだけ安定的にストレスなく提供できるか」であるため、「困っているので使わせて」ということならすぐに動けても、困る人がいないところでどれだけ能動的に動けるか、というところにハードルがあります。
また、弊社はシステムに対し、100億円を超える投資を毎年行いますが、利益が数100億円の中、この投資を2倍にできるかというと、判断が難しいところです。
システムに関して言えば、デュアルスタックの機器が主流になりつつあるため、新しい機械を買う際にそれらを選ぶのは、経済合理性からいっても当然です。ただ問題なのは、機械は5年償却であり、どのタイミングでリプレースするかです。特にかかる大きなコストは、それらを安定運用するための人的なリソースの確保です。何か問題が起こった時に、IPv4の問題かIPv6の問題か、もっと上のアプリケーションの問題か、ユーザーの接続環境の問題かを見極めて対応できるエンジニアはなかなかいません。
ユーザーは、IPv4かIPv6かを意識していません。今後、ユーザーからIPv6対応して欲しいと言われれば、全部のサービスで対応しなくてはならないとは思います。従って、「経済合理性の説明がつく投資のタイミング」が一番重要です。今、機器やモチベーションはそれなりに揃いつつあるという意味では、良いタイミングが訪れ始めているのではないでしょうか。問題は時間とプライオリティの落としどころです。自分も社内の役員に対するメッセージとして具体的な行動に変えていきたいと考えています。
事業者に対する、IPアドレス在庫枯渇の周知に努めたい
山下 良蔵
社団法人日本ケーブルテレビ連盟
日本ケーブルテレビ連盟では、ケーブルテレビの仕様等の標準化を行っています。あまり良く知られていないケーブルテレビ業界の概要を伝えるとともに、この問題に対する現状と課題を述べたいと思います。
まず、全国の総世帯数を100%とすると、ホームパス世帯(ケーブルが接続できる設備を備えている世帯)が84.5%、再送信加入(ケーブルテレビアンテナでテレビが見られる)世帯が52.4%、ケーブルテレビの加入世帯が41.9%、多チャンネル放送加入世帯(有料の番組)10.4%、インターネット加入世帯は396万世帯で7.6%となります。このインターネット加入世帯が、本日の議論のスコープとなる世帯です。ブロードバンド契約数は、現在400万件と順調に伸びています。
ケーブルテレビでどのようにIPを伝送しているかというと、DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specification)というモデムを利用し、同軸ケーブルで伝送しています。このモデムは米国のケーブルラボが制定した仕様ですが、このバージョンが一つ上の3.0になると、IPv6がサポートされます。また、3.0は高速な伝送速度(120Mbps)を備えるだけではなく、現行の1.x、2.0との互換性もあり、IPマルチキャストもサポートしているため、この仕様が、ケーブル業界がIPv6を視野に入れた場合、とても重要な設備となると言えるでしょう。
連盟の中で、事業者にアンケートを取りました。「IPv4アドレスの在庫枯渇を知っているか」という設問に、回答者の80%以上が「はい」と答えたのに対し、「アクションプランを作っているか」となると、逆に80%以上が「何もしていない」という答えです。先進的な人を除くその他大勢がどこまでやる気になっているのか、この辺りの状況把握に努め、対応を進めたいと考えています。ISPである以上、アドレスがなくなれば新規の顧客やサービス提供ができなくなることを伝え、理解してもらうことが重要です。今後、IPアドレス枯渇タスクフォースと協調しながら、活動を進めていきます。
我々は、アクセスのケーブルをネイティブで全部持っているため、技術的に見ても面白いネットワークです。インターネットの手段としてのケーブル事業にも目を向けて欲しいと考えています。また、事業者数は400社で、小さい事業者も多いのが悩みなので、地方の底上げも考慮していただければと思います。
IPv6導入には、トップダウンの施策が必要ではないか
馬場 達也
株式会社NTTデータ
システムインテグレータ(SIer)としての取り組みについて述べます。
NTTデータでは、2006年1月に政府のIT戦略本部が、電子政府システムを原則として2008年度までにIPv6対応すると発表した時からIPv6への対応を始めています。
IPv6対応という点で我々に求められるものには、大きく三つあります。(1)システム側をIPv6に対応させること、(2)ルータやスイッチだけではなく、IPSやファイアウォールなども含めたネットワーク側のIPv6対応を行うこと、そして、(3)移行方法の検討があります。特に、ミッションクリティカルなシステムを止めないように対応する必要があります。
ソフトウェアをIPv6対応する上で注意するポイントには、「GUI(Graphical User Interface)や設定ファイルにおいて、IPv4アドレスのみの入力が想定されていないか」「プログラム内部処理に、IPv4アドレスが使用されていないか」「IPv4アドレスが埋め込まれていないか」ということがあります。特にJavaなどは言語側でうまく処理してくれますが、C言語の場合は、IPv4に依存した型や関数が使われることがあり、注意が必要です。
ネットワーク側のIPv6対応については、社内では、デュアルスタックネットワーク上での検証を行っています。この検証の結論としては、デュアルスタックの構築は可能ですが、ルータなどで対応可能をうたっていても、使ってみると冗長化機能はIPv6に対応していなかったり、セキュリティ製品などはIPv6対応しているものが少ないなど、まだ、全ての機能や製品でIPv6対応できていないということが分かりました。さらに、IPv6はハードウェアで処理しない場合が多いため、VPN機能などを使用した場合のスループットも検証しておく必要があります。また、ファイアウォールの設定や障害の切り分けなどでも、IPv6のプロトコルの挙動を知らないと対応が困難であるという問題があります。
上記のような、これまでに得た知見は社内でガイドラインとして公開していますが、まだ、ネットワークエンジニア以外にはあまり参照されていないというのが実状です。特に、ネットワークエンジニア以外のシステムエンジニアや、プログラマ、運用管理技術者、営業担当者の意識を高め、教育していく必要があります。こうしたことからも、本件に関してはトップダウンの政策が必要ではないかと感じています。
また、現時点では、コストがかかる割に導入のメリットが感じられないという理由から、ユーザーからのIPv6対応のニーズがあまりないのが現状です。このため、IPv6を導入しなかった場合の機会損失を経営幹部に示し、ある程度の強制力を持って進めなければなりません。この機会損失を計算するための基礎データを業界で用意する必要があると感じています。
IPv4在庫枯渇問題を乗り切るには、トップランナー方式で
江崎 浩
株式会社NTTデータ
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースの立場で、共有したいことがいくつかあります。
- キャリアグレードNATが有効視はされてはいるものの、過渡的なツールであることを理解すること
- タスクフォースは、方向性は提示できるが、解決法は自分の意思で考えていかないといけないこと
- 政府は最後の瞬間には手を差し伸べないということ。ビジネスの機会と考えるか、それともリスクと考えるか判断し、経営責任としてビジネス上の決定をして欲しいということ
タスクフォースでは、いくつかやりたいことがあります。まず、ビジネス基礎データをシェアしたいと思っています。トラフィックデータなどは今もやっていますが、これを分析して、ポリシー立案に役立てられればと考えています。
フリービット株式会社がいろいろと実験をしています。たくさんアドレスを持っているといかに役に立つか。そういう皮膚感覚が必要です。こうしたことから、テストベッドやテストトライアルをやることに意味があります。また、JANOGの合宿をすることで、現役の人にとって、どの程度の技術レベルが必要かがわかりました。こういった経験と知識を共有する場を作らないといけません。
今回の問題は、トップランナー方式(トップランナーに走ってもらい、ノウハウを出してもらって、そのノウハウを共有することで全体的な底上げを図る方式。反対語が護送船団方式)でやらないと走りきれないと考えています。トップランナーが、コストやリソースで困っているという人に対して、いかに意味があったかという成功物語を語ることが安定につながっていきます。問題は、この教育パッケージを誰に向けて作るか、これが悩ましいところです。
タスクフォースは、そのために、マルチステークホルダーで活動できる環境を整えています。この場に必要な人は探してきて欲しいし、皆が動きやすい環境を構築できるように、できることはやりたいと考えています。
パネルディスカッションの質疑応答では、「政府の【重点計画2008】も出ているので、ビジネス的にも広がっているのではないか」「IPv6に移行しないと幸せになれない、アメリカのケーブルTV業者や日本の通信カラオケ事業者などがいる。そういう人をこの場に引き込むべき」などの意見が出された一方、電子政府のIPv6化に対する疑問や、「一体どのレベルまでIPv6にすべきと考えているのか」などの質問も多数寄せられました。
また、馬場氏に質問が集中しました。SIerとして、また運用側として、IPv4とIPv6が共存して動き続けるという観点でシステムを設計しているのか、ガイドラインは一般公開の予定はないのかなどです。馬場氏からは、ガイドラインの公開にあたっては、なお検証やアップデートが必要であるため、それに協力してくれるリソースや情報交換できる場が必要であるとの話がありました。
最後は後藤理事長より、「このようなオープンなところに情報を出すと、またその上に誰かが何かを出す。このトランプの札のようなものでできるものが、「オープンシステム」である。もちろん、最後のところは秘密があり、競争があるのは当然だとしても、インターネットの発展は皆で情報を出し合うことで、ドラスティックに進んできたのが特徴だ。今回のIPv4アドレス在庫枯渇に関しても、今日の情報を第一歩として、社内にも共有してもらいたい」と締めくくられました。
今回の議論では、各事業者とも「IPv6への移行」をメインで語り、IPv4とIPv6の共存というところにはあまりフォーカスがあてられていないようでした。
今回、Internet Weekのプログラム委員会ではIPv4在庫枯渇にあたり、IPv6移行のみならず、IPv4とIPv6の共存についても、さまざまな情報をプログラムとして提供しています。これらのInternet Weekで使用した資料類は、近日中にWebサイトで公開予定です。ご興味のある方はこちらもあわせてぜひご覧ください。
(JPNIC インターネット推進部 根津智子)