ニュースレターNo.43/2009年11月発行
第2回IPv4枯渇 Watch
~IPv4アドレス在庫枯渇問題の克服に向けた状況分析と広報戦略~
JPNICは、インターネットに関わる事業者、電気通信事業者、電気通信機器ベンダーなどの関連する諸団体が、IPv4アドレス在庫枯渇問題の克服に向けて連携して結成した「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」(以下TF)に参画しています。
このTFの中で、JPNICは特に、「IPv4アドレスの在庫枯渇」という事象を広く認知してもらい、必要な情報を周知して対応を促進するために重要である広報活動を、ワーキンググループを組織して推進しています。
今回の「IPv4枯渇 Watch」では、「第1回」でお伝えしたアンケート結果に加え、IPv4アドレス在庫枯渇の認知状況の再確認と、これを受けたTFとしての広報戦略をご紹介します。
アドレスの枯渇に対する認知状況と、事業者種別毎の影響の理解
これまでTFは、「TFに参加する団体に所属する組織」に対してならびに、2009年6月に開催された「Interop Tokyo 2009来場者」に対して、それぞれ同じ内容のアンケートを実施しました。
前者は、「枯渇対応に直接的に関与する可能性の高い」TFの参加団体組織としての回答であり、後者は「インターネットとそれに関連する事業者・企業の社員の立場」である来場者個人の回答であるため、結果を単純に比較することはできないかもしれませんが、「枯渇に対する認知度」を測る一つの指標として、参考になると考えています(図1)。
TF参加団体組織とInterop来場者では、認知状況に差があるのは当然ですが、「個人」の立場でも6割程度の人が枯渇を認知しているという状況を見ると、「認知」自体は広がってきていると言えるのではないでしょうか。
一方、枯渇による影響把握状況を業種別に見ると、TF参加団体組織とInterop来場者ではほぼ同じ傾向であり、ISPや通信事業者、iDCなどインターネットサービス提供事業者は、在庫枯渇の影響を把握、理解しているようです。これは今までのTFとしての活動(各種イベントを利用した普及啓発活動、テストベッドの構築、ハンズオンセミナーなど)の成果も影響していると考えられ、まだ範囲については限定的ではあるものの、対応についても進んでいるように見受けられます(図2)。
しかし、ソフトウェアベンダーや通信機器ベンダー、システムインテグレータ(SIer)などでは、影響について理解が進んでいない割合が比較的高く、これらの事業者が影響を理解し、積極的な対応を進めることが、その他のインターネットサービス提供事業者の対応策検討にも影響すると考えています。
進捗状況の分析と、今後の対応について ~事業者向けの対策~
前述のような現状把握に基づいて、ステークホルダー毎の対応進捗状況と、今後TFあるいはJPNICとして実施すべき取り組みを示したのが、図3です。
インターネットサービス提供事業者に向けた取り組みは、既にいくつか実施していますが、ソフトウェアベンダーや通信機器ベンダー、SIer、そしてユーザーへの働きかけという点では、まだまだこれからだということが見て取れると思われます。
そのため、今後の広報戦略としては、これらの対象を軸に、(図4)の通り、事業者向けの対策を具体的に計画しています。
<対策⑤>エンドユーザーへの対応策
TFの活動としては、参加団体を通じた組織、事業者へのアプローチが中心となるため、どうしても、エンドユーザーには直接、訴えるのが難しい状況にあります。しかし、ユーザーもIPv4アドレス在庫枯渇に関する重要なステークホルダーであることは間違いありません。ユーザーへのアプローチをどうするかについては、これまで何度も検討が重ねられてきました。
その結果、各サービス事業者が自身の対応をどうするかということそのものが、直接的にエンドユーザーに影響を与えることから、今のところのTFの進め方としては、ISPなどのサービス事業者を通じたアプローチを行う方向で検討を進めています。これは言い換えれば、サービス事業者のユーザー対応を支援する形で、TFとしてのユーザー対応をしていくということになります。
今後の広報活動の進め方
TFの広報活動は、多様なステークホルダーへ効率的かつ効果的に対応するためにも、まずは各ステークホルダーの現状を把握し、それに基づいた計画を慎重に策定する必要があると考えています。そして、その計画に基づき、TFに参加する団体と密接に連携しながら広報活動を進めていくことを考えています。
その活動の結果について再度、対応進捗度の調査を行い、このサイクルを繰り返していくことで、各ステークホルダーの対応を促進し、その進捗を確認、在庫枯渇への対応を促進させようとしています。
JPNICとしても、まずは会員およびIPアドレス管理指定事業者の皆様と協力し、適宜、情報交換などを進めながら、この問題に対峙していく所存です。皆様のご協力なしに、円滑な解決は難しいことからも、今後のTFあるいはJPNICとしての活動に積極的なご支援をお願いいたします。