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ニュースレターNo.45/2010年7月発行

APNIC29ミーティング報告 全体報告

地図:開催地

APNIC29は、2010年3月1日(月)~5日(金)の5日間にわたって、マレーシアのクアラルンプールで開催されました。

この時期のミーティングとして例年通りAPRICOTとの併催という形式をとり、マレーシアは国際カンファレンスの誘致に積極的なのか、過去10回のAPRICOTのうち、クアラルンプールでの開催は今回で3回目となりました。毎回政府の支援とともに、マレーシアのICT業界を代表する非営利組織であるPIKOM(Persatuan Industri Komputer dan Multimedia Malaysia)がローカルホストを務めています。

APRICOTも含めたカンファレンス全体の参加者は、733名と2009年よりも100名程度多い結果となりました。日本からの参加者も全体の約1割を占めており、これは国別の参加者としては高い比率と言えます。

今回のミーティングの特徴

アドレスポリシーに関する議論では、在庫枯渇後の対応として大きな注目を集めていたIPv4アドレスの移転が既に2010年2月に施行されたこともあり、今回大きく紛糾する議論や特筆すべき決定はありませんでした。

一方、参加者が議論を行う「コミュニティコンサルテーション」と呼ばれるセッションが開催され、ITU(国際電気通信連合:International Telecommunication Union)で議論が行われているアドレスの分配方式について、IPアドレスコミュニティとしての意見が取りまとめられました。こういったガバナンスをテーマとして参加者が議論を行うセッションは初の試みでしたが、Plenaryと同程度の参加者が会場に集まり、地域外の参加者もITUに向けたIPアドレスコミュニティとしての意見を述べるとの意識で議論に参加し、関心も高かったようです。

本稿では、(1)ITU IPv6 GroupへのIPアドレスコミュニティとしての声明文、(2)APNIC29においてコンセンサスの得られたアドレスポリシー提案3点、(3)EC選挙の結果を中心にご紹介します。

(1)コミュニティコンサルテーション

ITU IPv6 Groupが2010年3月15日~16日に初の会合を開き、ITUを介した国ベースのIPv6アドレス分配方式について議論が行われる状況を受け、その会合に向けアドレスコミュニティとしての意見を取りまとめるべく、セッションが開催されました。

IPv6 Groupは、「IPv4アドレスの分配が先進国に偏っており、IPv6でも同様の現象が起きるとの懸念が、一部の発展途上国から表明されている」とのITUの見解のもと、対策検討のために立ち上げられたグループです。その検討の一環として、ITUをインターネットレジストリとし、国ベースに設置するCIR(Country-based Internet Registries)を介したIPv6アドレスの分配方式も視野に入れ、その実現性と妥当性の調査を専門家に依頼していました。

その調査結果として、NAv6のSureswaran Ramadass氏により、ITUがRIRと並行してIANAからIPv6アドレスの割り振りを受け、CIRに分配する方式とそれに対する分析がペーパーとしてまとめられ、本セッションでもその概要が紹介されました。

パネリストを交えた議論(当初90分の予定が、90分延長されて180分となりました)では、問題対処方法としてITUで検証されている分配方式の必要性への疑問や、施行に伴うリスクに関する質問が中心に表明されました。

セッションの終わりに、本セッションでの議論をまとめた文書が共有され、ITU IPv6 Groupへ提示するコミュニティからの意見として、コンセンサスが得られました。その後、2010年3月5日に、次のコミュニティ声明文がITU IPv6 Groupに提出されています。

ITU IPv6 Groupへのコミュニティ声明文

http://www.apricot2010.net/__data/assets/text_file/0005/18923/Kuala-Lumpur_Community-Statement.txt

  1. 現行と並列した別のアドレス分配方式の施行は大きなリスクを伴うにも関わらず、NAv6から提示されている文書では、施行に伴う詳細なリスク分析、その他必要な情報が不足している。ITU IPv6 Groupでの検討材料としては十分でないと考える。
  2. ITUにおける懸念がIPv6アドレスの枯渇であるように見受けられるため、この点に関するさらなる調査を推奨する。
  3. ITU IPv6 Groupにおいて必要な文書を公開し、(会員に限定しない)マルチステークホルダー方式の対応を求める。

(2)アドレスポリシー提案の結果

今回は、6点のアドレスポリシー提案のうち、3点の提案でコンセンサスが得られましたが、国内のアドレスの分配管理に大きな影響を及ぼす決定はありませんでした。

施行されれば影響を及ぼすものとして、APNICにおける最後の/8の在庫からの分配方法を変更する提案も2点行われましたが、「現在の最後の/8からの分配要件を変更する必要はない」として、どちらも支持されず、否決されています。

コンセンサスの得られた提案については、2010年5月3日まで引き続きメーリングリストでの意見も受け付けています。

コンセンサスの得られた提案

・prop-079:abuse-cの新設
abuse対応効率化のため、WHOIS上で提供される連絡窓口として、abuse専門窓口の登録を義務付けた提案です。国内の施行については別途JPOPM(JPNICオープンポリシーミーティング)での提案が必要となります。

・prop-080:IPv4プリフィクス交換ポリシーの撤廃
日本国内では施行していないため、影響はありません。

APNICでは連続しない複数プリフィクスを、それに相当するサイズの単一プリフィクスと交換するポリシーを施行しています。しかし、在庫枯渇に伴い、当該プリフィクスの確保を保障できなくなるため、これを撤廃する提案です。

・prop-082:IPv6初回割り振りにおける経路集約要件の撤廃
日本国内のアドレスフォーラム運用を行っている機関である、ポリシーWGのメンバーから行われた提案です。

現在のIPv6の初回割り振り要件の中で、割り振りアドレスの経路集約を義務付けた要件を撤廃する提案です。経路集約は、要件として規制するのではなく、運用者の判断に委ねることが適切とし、ポリシーでは推奨に留める表現に変更となります。現在もポリシー上、定義はされていますが、APNIC/JPNICへの申請における影響はありません。

コンセンサスの得られなかった提案

  • prop-078:APNIC最後の/8在庫からの分配に対するIPv6実装要件
  • prop-081:APNIC最後の/8からの割り当て資格
  • prop-083:IPv6追加割り振りにおける別要件の新設
□参考:APNICフォーラムにおけるポリシー提案一覧
http://www.apnic.net/community/policy/proposals

(3)EC選挙

今回は3名の現職ECの任期満了に伴う選挙が行われ、JPNICの前村昌紀を含めた現職ECが3名とも再選されました。

  • Ma Yan(CERNET、中国)
  • 前村 昌紀(JPNIC、日本)
  • Che-Hoo Cheng(The Chinese University of Hong Kong、香港)

APNIC総会中、第三者による開票の立ち会い資格をめぐって、立候補者の関係者と、選挙運営を務めるECとの間に認識の不一致があり、開票作業が一時中断する事態も生じましたが、運営方針を共有し、総会参加者へ今後の対応の理解も得た上で、開票作業を再開しました。選挙結果自体に影響を及ぼすものでないことは確認されています。

写真:JPNICからの参加者
JPNICからは、筆者をはじめ6名が参加しました

ミーティングを振り返って

APNIC29に特化した報告は上記の通りですが、今年は特にAPRICOTとAPNICミーティングとの垣根をなくす方向でWebサイトが統合され、参加者もプログラムの区別を強く意識することなく参加できる構成となっていたように思います。

全体としては、IPv6、DNS、ルーティングやインターネット計測等、インターネット基盤の運営にあたって必要な分野がカバーされ、数年前と比べて随分技術的なセッションも充実してきている印象です。

オペレーショナルなセッションにおいても、APNICに2010年1月に新たに割り振られた1.0.0.0/8の経路到達実験や、レジストリが発行するアドレス証明書を利用したルーティングセキュリティの実装等、アドレス管理に関わる発表も数点見受けられました。これらのトピックスについては、次の記事以降をご覧ください。

次回のAPNICミーティング

次回のAPNICミーティングは、2010年8月23日~27日まで、タイのバンコクで開催されます。

http://www.apnic.net/events/whats-on/meetings/calendar/events/2010/apnic-30

(JPNIC IP事業部 奥谷泉)

□APNIC29
http://meetings.apnic.net/29
□Meeting Report
http://www.apricot2010.net/report

※ National IPv6 Centre Of Excellence(NAv6)
http://www.nav6.usm.my/index.php

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