ニュースレターNo.46/2010年11月発行
第18回JPNICオープンポリシーミーティング報告
2010年6月29日(火)に、東京・千代田区のベルサール九段にて、第18回JPNICオープンポリシーミーティング(以下、JPOPM)を開催いたしました。
今回のミーティングには、オンサイトでは従来に比べてやや少人数の38名だった一方、リモートからは延べ193名(最大接続時44名)の方々にご参加いただきました。映像ストリーミング、Jabberチャットによるリモート参加環境を構築いただきました、NTTスマートコネクト株式会社様ならびにJPNICのご協力に感謝します。
さて、JPOPMは、日本におけるインターネット資源(IPアドレスおよびAS番号)の管理に関するポリシーを検討・調整し、日本のコミュニティにおけるコンセンサスを形成するための議論の場です。年2回の開催で、JPNICとは独立した組織であるポリシーワーキンググループ(以下、ポリシーWG)が主催しています。ミーティングのプログラムは、ご応募いただいたポリシー提案や情報提供プレゼンテーションから構成します。今回は、提案2件および情報提供プレゼンテーション4件の応募をいただきました。また、国際的な資源管理の状況に関する2件の講演を実施しました。
JPOPM18における提案に関する議論
今回の提案のうち1件は、APNICで決まったポリシーを、国内でも実施することに対するもので、もう1件はIPv6アドレス割り振りに関する提案でした。以下に提案の概略、およびミーティングでの議論結果について紹介します。
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Abuse contact information
http://venus.gr.jp/opf-jp/opm18/p018-01.html
APNIC29にて、「WHOISデータベースのinetnum、inet6num、aut-numオブジェクト中に、新規に定義するIRT(Incident Response Team)オブジェクトへのポインタとなるabuse-c(abusecontact)フィールドを追加しよう」という提案が合意を得ました。JPNICのWHOISデータベースの割り振り情報では、abuse用メールアドレスの登録は既に施行していますが、これはAPNICでの実装予定内容とは異なるため、日本での施行の是非、また施行する場合の適切な方法について議論しました。
インシデントをハンドリングする部署への連絡ポインタとしてあった方がよい、という意見はありましたが、既存のadmin-c、tech-cにどのような人を登録するべきかという定義が明確ではないため、この点も含めて、既存のadmin-c、tech-cの正確性を上げるべきである、abuse-c自体がspam等の対象になってしまう可能性が高い、といった意見もあり、結論として、JPNICのWHOISデータベースへのabuse-cの導入は、合意を得られませんでした。
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6rd用アドレス割り振りポリシーの提案
http://venus.gr.jp/opf-jp/opm18/p018-02.html
IPv6への移行期に有用なトンネリングプロトコルの一つである、「6rd」専用のアドレス割り振りポリシーを制定しよう、という提案です。「6rd」は、IPv6導入のための簡素なプロトコルとしてISPで使用され始めていますが、現状のIPv6アドレスポリシーでは「6rd」導入のために十分なアドレス空間を確保しにくいため、「6rd」を使用する場合に十分なアドレス空間を取得できるようにしようという提案内容です。
中小規模ISPでの当ポリシーは有効、という意見もありましたが、特定のプロトコルに対してアドレスポリシーを制定することの是非や、アドレス空間が無駄になること、「6rd」に限定する方法などの議論があり、これも合意を得られませんでした。
その他のアドレスポリシー提案の状況について
前述の2提案に関する議論の他、JPOPM17で合意が得られたポリシー提案「IPv6申請手続き簡素化」「RIRで施行されたポリシーをNIRで実装するための手続き変更」については、JPNICでも2010年7月26日より施行予定であること、同時に合意が得られた「JPNIC管理下にあるIPv4アドレス移転提案」については、JPNIC内で継続議論中であることの報告がありました。
また、APNIC29では、前記「Abuse contact information」の他、「IPv4プリフィクス交換ポリシーの撤廃」「IPv6初回割り振りにおける経路集約要件の撤廃」が合意を得ています。前者の提案はJPNICでは現在も施行されていないため、撤廃の必要はなく、後者のみを施行することになります。(ただし、ポリシー文書の変更のみで、申請手続きには影響しません)
情報提供プレゼンテーション
APNICミーティング状況紹介などの通例の情報提供プレゼンテーションに加え、IPv6アドレス管理へのITUの関与に関する状況紹介、RIPEミーティングの紹介が行われました。また、DNSSECに関するプレゼンテーション、JPNICでの逆引きDNSに関するプレゼンテーションも実施されました。
今回オンサイト、リモートともに議論にご参加いただいた皆様、ご発表者の皆様、ありがとうございました。次回のJPNICオープンポリシーミーティングは、2010年11月下旬に開催予定です。アドレスポリシーに関するご提案の応募もお待ちしています。また、今回ご参加いただけなかった方も、ぜひご参加ください。
なお、アドレスポリシーに関するJPOPMより後のミーティングとして、第30回APNICミーティングが2010年8月24日から27日にかけて、オーストラリアのゴールドコーストで開催されています。
(ポリシーワーキンググループ/NTT情報流通プラットフォーム研究所 藤崎智宏)