ニュースレターNo.52/2012年11月発行
World IPv6 Launchを迎えて (1)~その日を迎えて~
IPv6インターネットの始動
2012年6月6日(水)、日本時間午前9時ちょうどから、World IPv6 Launchが始まりました。IPv4アドレス在庫枯渇から1年余りが経過し、いよいよ本格的なIPv6への対応フェーズに入ってきています。
しかし一口にIPv6対応といっても、まだ克服すべきさまざまな課題があり、今後も関係者の連携・協調が必要です。そんな中、今年も2012年6月13日(水)から、幕張メッセにおいてInterop Tokyo 2012が開催されました。
JPNICも参画しているIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースは、Interop Tokyo 2012の展示会場内に講演ブースを設けて、参加メンバーによる、IPv6の最新動向、導入課題への対応策、その他さまざまなIPv6に関する情報共有を行いました。
本稿では、World IPv6 Launch、Interop Tokyo 2012等の様子を中心に、最近のIPv6関連動向をダイジェストでご紹介します。
World IPv6 Launchと日本におけるIPv6対応状況
「標準でIPv6対応」とすることを掲げ、2012年6月6日よりWorld IPv6 Launchがスタートしました。これは、昨年2011年に行われた1日限りの大規模“トライアル”であった「World IPv6 Day」を踏まえ、6月6日以降は各参加者が恒久的にIPv6対応(実際に、多くの組織においてはIPv4/IPv6デュアルスタック状態)を継続するものです。
World IPv6 Launchの詳細については、JPNIC News & Views vol.957の特集記事※1およびニュースレター49号の「インターネットトピックス」のコーナー※2をご参照ください。また、参加組織等については以下のWebサイトをご参照ください。
□World IPv6 Launch
http://www.worldipv6launch.org/
□日本でのWorld IPv6 Launch
http://www.attn.jp/worldipv6launch/
昨年のWorld IPv6 Dayの際には、インターネットへのアクセス網とIPv6閉域網を併用しているユーザーの一部に問題が発生しました。インターネット上のIPv6サイトにアクセスした場合に、IPv6からIPv4にフォールバックするための時間がかかるという事象で、ISPや関係者による対策がとられました。
World IPv6 Dayの際は1日限りだったため、その後に大きな問題にはならなかったようですが、今年のWorld IPv6 Launchを控え、さまざまな対応策について関係者間で協議されました。そして、World IPv6 Dayの際に取られたISPにおけるAAAAフィルタ以外に、IPv4接続ユーザーとIPv6接続ユーザーのキャッシュDNSサーバを分けて、コンテンツ側でフィルタをコントロールするなどの対策が検討されたようです。
実際当日は、事前にAAAAレコードを登録したサイトや、参加登録はしなかったもののIPv6対応を行ったサイトがあったようですが、特に混乱もなく、今のところユーザーに対しても特に大きな影響は出ていないようです。
日本国内のIPv6対応に関しては、総務省の「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」においても議論が行われております。これによって、IPv6普及に関する諸課題についても、関係各社間の協議が進展し、一般/企業ユーザーにとって、IPv6インターネット接続サービスの申し込みあるいは利用のしやすい環境が整いつつあります。
Interop Tokyo 2012
World IPv6 Launchの翌週、6月13日から幕張メッセにおいてInterop Tokyo 2012が開催されました。JPNICはIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースの一員として展示会場に講演ブースを設け、タスクフォース参加メンバーにより、6月15日までの3日間で延べ30の講演が行われました。
講演プログラムは次ページを、講演資料は以下のURLをご参照ください。
□講演資料
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/interop-tokyo-2012.html
● IPv6普及の展望について語る荒野高志氏
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース講演プログラム(順不同)
- 枯渇後のIPv4アドレス確保とIPv6対応
- 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース広報WG 前村昌紀/佐藤晋
- 皆様に知って欲しいIPv6普及推進活動の実情
- アラクサラネットワークス株式会社/IPv6普及・高度化推進協議会移行WG 新善文
- World IPv6 Launchと日本のISPの対応
- 社団法人日本インターネットプロバイダー協会 木村孝
- IPv6ソリューションのご紹介/IPv6高度化推進協議会の最新活動紹介
- 株式会社インテック/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース教育・テストベッドWG 廣海緑里
- IPv6導入へのストラテジー
- シスコシステムズ合同会社/IPv4枯渇対応タスクフォース教育・テストベッドWG 印南鉄也/服部亜紀子
- World IPv6 Launchとホームルータ
- 財団法人電気通信端末機器審査協会/IPv4アドレス枯渇タスクフォース寺田昭彦
- IPv6普及の展望
- ITホールディングス株式会社/IPv6普及高度化推進協議会/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース副査 荒野高志
- IPv6海外動向について
- 株式会社三菱総合研究所 中村秀治
- auひかりのIPv6対応について
- KDDI株式会社 ネットワーク技術企画部 鶴昭博
- v6推進の舞台裏
- 慶應義塾大学/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース副査 中村修
- ケーブルインターネットのIPv6対応
- アリス・グループ・ジャパン株式会社/一般社団法人日本ケーブルラボ 友松和彦
- IPv4 over IPv6技術の最新動向と標準化
- 日本インターネットエクスチェンジ株式会社 代表取締役社長 石田慶樹
- IPv4アドレス調達とIPv6 Launch
- 東京大学/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース主査 江崎浩
社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター/IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース広報WG 前村昌紀
- 企業ネットワークへのIPv6導入の是非
- 日本電気株式会社/一般社団法人テレコムサービス協会 今井恵一
- IPv4枯渇に係るインターネット新技術導入に向けた検討について
- NTTコミュニケーションズ株式会社/IPv6普及・高度化推進協議会 IPv4枯渇に係るインターネット新技術導入に向けた検討WG 宮川晋
初日から各回ともに盛況だったことから、当初予定になかった10以上の追加講演を盛り込むことになりましたが、それでも用意した席は毎回満席となり、常に立ち見の方がいらっしゃる状況でした。
World IPv6 Launchが開始され、IPv6導入の機運や興味が一段と増してきていることが実感できました。企業などにおけるIPv6導入に関する実践的な講演が、特に好評だったようです。
また2日目の6月14日に行われた、KDDI株式会社 鶴昭博氏による、IPv6普及・高度化推進協議会「IPv6普及・高度化における貢献者」受賞講演、「auひかりのIPv6対応について」も、一般ユーザー向けのIPv6展開の実例として、非常に高い関心を集めていたようでした。
2012年度IPv6対応セミナーとIPv6検証環境(テストベッド)
Interop Tokyo 2012のハンズオンセッションとして、6月13日(水)と14日(木)に、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースで実施しているIPv6対応セミナーの「ネットワーク基礎編」が開催され、こちらも2日間ともに満席となるほど多くの受講者の方にご参加いただきました。
これからIPv6対応が各事業者または企業等でも本格化してまいりますので、この機会にIPv6の知識と技術を学んでみてはいかがでしょうか。今後も随時IPv6対応セミナーの開催をする予定でおります。詳細や開催スケジュールについては、下記のURLをご参照ください。
□“知っておくべきIPv6対応”セミナー[座学・ハンズオン]
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/event/2013/03/ipv6-handsonseminar.html
また、セミナーではなく実際に試してみたいという方向けに、2013年3月末までの期間、IPv6検証環境(テストベッド)のご利用申し込みも受け付けております。この検証環境の利用は期間限定となりますので、IPv4アドレス在庫枯渇対応またはIPv6導入に向けた、機器およびシステムの検証等にご活用ください。
□IPv6検証環境(テストベッド)
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/news/2011/12/ipv6-12.html
最後に
2012年6月6日のWorld IPv6 Launchは、インターネットのIPv6化に向けた大きな一歩となりました。今後、世界的にも本格的なIPv6普及が進展していくものと思われます。
日本国内を見た場合、IPv6の普及にはまだまだ解決すべき課題が残されている状況です。しかし、これを契機に各ステークホルダーが連携して対応を進めていく道筋が、少しずつ見えはじめてきたと思われます。
今後も、JPNICとしても、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースとしても、この動きをあらゆる側面でサポートしていきたいと思います。
(JPNIC IP事業部 佐藤晋)
- ※1 JPNIC News & Views vol.957「World IPv6 Launchあります。~永続的なIPv6対応に向けて~」
- http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2012/vol957.html
- ※2 ニュースレター49号 インターネットトピックス「World IPv6 Dayありました。」
- http://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No49/0610.html