ニュースレターNo.52/2012年11月発行
「IPv6 - TECHNOLOGY AND APPLICATIONS FOR VIETNAM」参加報告
ベトナム初の国家的IPv6イベント
2012年5月31日(木)と6月1日(金)の2日間にわたり、ベトナムの首都ハノイで「IPv6 - TECHNOLOGY AND APPLICATIONS FOR VIETNAM」というカンファレンスが開催されました。VNNICをはじめとする各NIRからIPv6に関する活動状況が発表され、JPNICからも日本におけるIPv4アドレスの在庫枯渇への対応と、IPv6推進に関する状況について報告しました。
本稿では、そのイベントの参加レポートをお届けします。
ベトナム初の国家的IPv6イベント
このカンファレンスは、ベトナムで開催される初の国家規模のIPv6イベントで、情報通信を管轄するベトナム情報通信省(Ministry for Information and Communication - MIC) が主催、ccTLDの運用管理、NIR(国別インターネットレジストリ)などを事業とする、VNNIC(Vietnam Internet Network Information Center)がオーガナイザーでした。このイベントには、IPv6推進で知られるベンダーやオペレーターの他に、APIA(Asia & Pacific Internet Association)、ISOC(Internet Society)、アジア太平洋IPv6タスクフォース(APIPv6TF)といった推進団体や、各国NIRも招待されたので、登壇者の数は30人に上る、まさに一大イベントとなりました。日本のNIRであるJPNICの代表として筆者も登壇依頼を受け、IPv4アドレス在庫枯渇への対応や、IPv6推進に関する状況について発表しました。
1日目は午前午後にわたるシングルトラックで、基調講演に続いてベンダー、オペレーターによる技術ソリューションに関する発表が、全部で20ほど並びました。2日目は半日で、ディプロイメント戦略と技術問題の2トラックに分かれてのセッション。筆者はNIR関係者(台湾のTWNIC (Taiwan Network Information Center)と韓国のKISA (Korea Information Security Agency:韓国情報保護振興院))とともに、ディプロイメント戦略の方に出席しました。
このカンファレンスのプログラムや発表資料は、本イベントのWebサイト、http://ipv6event2012.vn/でご覧になることができます。ベンダーやオペレーターからの発表も多数あり、APNICにおけるIPv4アドレス在庫枯渇も過ぎ、2012年6月6日のWorld IPv6 Launchを直前に控えるという時期を受けて、旺盛にIPv6対応の必要性を説くもの、自社ソリューションの有用性を訴えるものが多かったです。詳細はWebサイトの発表資料をご覧いただくことにして、本稿では、ベトナムにおけるIPv6対応の現況と、2日目のディプロイメント戦略セッションで行われた台湾と韓国、そして筆者が発表した日本からの、各NIRによる報告を簡単にご紹介します。
ナショナルIPv6タスクフォース
VNNICによる“IPv6 Deployment in Vietnam”という発表によると、2009年1月のMIC決定により、国家規模のIPv6タスクフォースの設立が決まりました。
活動の四つの柱として、
- 国家アクションプランの作成
- ナショナルIPv6ネットワークの構築
- 基幹DNSとIXなどに対するIPv6対応
- トレーニング
を配しています。アクションプランは3フェーズに分かれて おり、
- [2011~2012年] 準備フェーズ
- [2013~2015年] 実装フェーズ
- [2016~2019年] 達成フェーズ
としています。ナショナルIPv6ネットワークは、基幹DNSとIXにおけるIPv6対応とともに、海外とのIPv6による接続とトンネルブローカーを有するもので、国内のユーザーとISPがIPv6対応を行う場合の便宜を図るものとなっています。
各NIRによる発表
TWNICからは“Taiwan Government's Initiative to Deploy IPv6”と題して、政府機関のインターネットサービスをIPv6化する計画に関して発表がありました。政府機関に的を絞ったものではありますが、5,556件とされるサービスに対して、調査、手順の設定、実施、レビューという要領が明確化され、レビューにおいては徹底的に数値化されているのが印象的でした。
KISAからは、“IPv6 Experiences in Korea”と題して、KISAのIPv6に対する取り組みの紹介がなされました。6NGIX (IPv6のIX)、6KANET(公共セクター向けIPv6網)などのIPv6接続性の提供や、コンサルティングサービス、会期初日である2012年5月31日(木)に韓国独自のIPv6 Dayを実施する、大手事業者との協力で比較的小規模な実験サービスを進めるなど、実際に事業者がIPv6対応を進める上での支援を地道に行っている様子がうかがえました。
筆者からは、“The endeavor on the preparation for IPv6 in Japan and lessons learned”と題して、日本におけるIPv4アドレス在庫枯渇対応とIPv6推進の状況を発表しました。早期から各団体がそれぞれの立場で対応に着手していたこと、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースによって、情報提供や普及啓発に焦点を定めて、多数の業界団体が一堂に会して活動していることが、日本の活動の特徴だと思います。
このイベントの参加人数は300人にも上り、休憩時間になると、スポンサーがブースを構えるホワイエが参加者で一杯。大変な熱気で、国家的IPv6イベントとしても大成功だったと言っていいでしょう。
VNNICでは、事務局長以下APNICカンファレンスなどで活動を共にする皆さんが、このイベントの企画と運営に大忙しでした。普段から笑顔が印象的な彼らですが、このイベントでも、APNICやNIR関係者を招いた歓迎会、会期中のディナーと、そのホスピタリティが素晴らしく発揮されていました。これに加え登壇者は、2日目の日程終了後、世界遺産にも名を連ねるハロン湾へのツアーにも招待されていたのですが、筆者は帰国を急ぐ必要があり、参加できず残念でした。
(JPNIC インターネット推進部 前村昌紀)