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ニュースレターNo.52/2012年11月発行

APNIC34カンファレンス報告
全体およびアドレスポリシー動向報告

APNIC34カンファレンス(以下、APNIC34)が2012年8月21日(火)から31日(金)に行われ、開催地はカンボジア・プノンペンでした。これまでにベトナムやタイでの開催はありましたが、カンボジアでの開催は初めてです。

会場ホテル周辺は、つい最近まで従業員以外は入れないエリアだったそうです。そんな背景もあるため、このエリアの様子をプノンペン全体に当てはまるものとして一般化できませんが、会場周辺の基本的なインフラはよく整備されている印象を受けました。

カンファレンス会場は、向かいが遊園地の観覧車、マルチカラーの電光掲示板、金色のマーライオン噴水、中に入ると1階はカジノ、天井は赤いシャンデリアと、内外ともにきらきらしており、到着日はやや落ち着かない気分でしたが、ミーティングの開催には支障はなく、最終日のAPNIC総会中に数分停電があったことを除くと、基本的に運営が円滑なカンファレンスだったと思います。

APNIC34の構成・特徴

従来のAPNICカンファレンスと同じく、基本構成は各種チュートリアルやトレーニング、The Asia Pacific OperatorS Forum(APOPS)、特定の時事テーマを扱うセッション、Policy SIG、APNIC総会などでした。

今回の特徴としては、これまでよりもワークショップに力を入れており、新たな試みとして、本カンファレンスセッションの前週からBGPルーティングやセキュリティ等に関する5日間のワークショップを実施していたことが印象的でした。

また、「IPv6」という切り口では、IPv6 Technical Track、IPv6 Plenaryセッション、APIPv6 TFなどのセッションが設置されました。このうちIPv6Plenaryでは、LTEをIPv6に対応したケースがVerizon Wireless社の方から紹介され、参加者の関心を集めていたようです。

そして、RPKIについても、ルーティングセキュリティに対応する技術として、チュートリアルやAPOPSでの発表、BoFの開催等、APNIC地域としては、これまでよりも多くの情報が発信されていたように思います。

アドレスポリシーの分野においては、今回はARIN地域とのIPv4アドレスの移転が認められてから初めてのミーティングであり、

  • APNICでは移転に関する新たな対応をいくつか発表したこと
  • 現在のポリシー策定プロセスを在庫枯渇後も継続する必要性に疑問が投げかけられたこと
  • アドレスポリシーSIGではJPOPM22での議論を発端に行われた提案・発表が2点あったこと

などが特徴として挙げられます。

画面:オープニングセレモニーの様子
● オープニングセレモニーの様子

IPv4アドレスの移転に関する動向

ARIN地域との移転が可能となった後の初のカンファレンスとして、APNICより移転に関する発表が数点行われていました。

  1. 他のRIR地域との移転手続きの紹介

    移転元は移転元を管理しているRIR、移転先は移転先を管理しているRIRに申請を行います。詳細はAPNIC Servicesセッションでの発表資料※1でご確認ください。

    なお、移転時の審議が、ARIN地域は2年分の需要までを確認して承認するのに対し、現在APNIC地域では1年分までの承認となっていますが、これは日本からの提案prop-104により改定され、今後ARINと同じ基準になることが予測されます。

  2. 移転手数料の課金開始

    APNICは、移転申請に対する課金を2012年8月31日(金)より開始しました。移転申請1件に対して、移転サイズをAPNIC会費に換算した場合の20%に当たる金額が課金されます。詳細はAPNIC総会での“APNIC EC Report”発表資料※2でご確認ください。

  3. ブローカーリスティングサービスの提供決定

    ブローカーのリストを公開するリスティングサービスを正式に開始することを決定したとの発表がありました。後日公開されたWebサイトには4社(2012年10月5日現在)が掲載されています。

    ・Registered IPv4 brokers
    http://www.apnic.net/services/become-a-member/manage-your-membership/transfer-resources/transfer-facilitators

    また、ブローカーも少なくとも2社がカンファレンスに参加し、参加者との情報交換を行っていたようです。

APNIC34での決定事項

アドレスポリシーに関わる決定事項としては、2点の提案(prop-101、prop-104) がコンセンサスを得られた結果となりました。いずれの提案もIPアドレスの分配基準の緩和につながるものです。

prop-103は結果としては提案者により取り下げとなり、決議はされませんでしたが、現在のポリシー策定プロセスを継続する必要性について疑問を投げかけ、メーリングリストでも活発な議論が行われました。フォーラムとして検討が必要な課題であることから、特定の提案に対してという形ではありませんが、現在もメーリングリストで議論が続けられています。

また、今回はNRO NC、Policy SIG Co-Chairという二つのポジションに対する選挙が実施されました。Policy SIG Co-Chair選挙では、ソフトバンクBB株式会社の山西正人氏が再選されたことで、今後も国内のアドレスフォーラムであるJPOPFとAPNICのアドレスポリシーフォーラムとの連携が期待できそうです。

●アドレスポリシー提案
http://conference.apnic.net/34/policy/

<コンセンサスの得られたアドレスポリシー提案>
prop-101: IPv6 PIアドレス割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃
prop-104: 移転時の審議承認期間の明確化

<提案者により取り下げとなったアドレスポリシー提案>
prop-103: IPアドレスポリシーの最終提案

●選挙
NRO NC:Naresh Ajiwani氏 [再選]
http://conference.apnic.net/34/elections#/

Policy SIG Co-Chair:山西正人氏 [再選]
http://conference.apnic.net/34/policy#election/

画面:● アドレスポリシーSIGにおける議論の様子
● アドレスポリシーSIGにおける議論の様子

その他アドレス管理に関わる動向

  1. 返却されたIPv4アドレスの分配基準見直しの必要性

    Informationalな日本からの発表として「返却されたIPv4アドレスを今とは違う基準で再配分するべきか」をテーマに国内で実施したアンケート結果を紹介し、現状の分配基準を見直す必要性について問題提起が行われました。

    APNIC地域全体でのアンケート実施の呼びかけを行いましたので、おそらくこの結果も含めて2012年11月19日(月)開催予定の第23回JPNICオープンポリシーミーティング(JPOPM)で報告を行う予定です。

  2. IANA返却在庫からのIPv4アドレス再分配に関する意見募集

    2012年5月のグローバルポリシーの施行に伴う対応として、IANAに返却されたIPv4アドレスを各RIRにどういうレンジで再分配するか、コミュニティへ意見募集を9月に予定しているとの発表がIANAスタッフよりありました。

カンファレンスを振り返って

今回検討の必要性が確認された「アドレスポリシーの分野で今後議論すべきテーマ」については、APNICフォーラムの中でもさまざまな考え方があるという印象です。IPv4アドレスについては、「これ以上議論するのは建設的ではない」との見解の人、「くず(Scrap)の取り合いはやめろ」と発言する人もいれば、「引き続きIPv4アドレスに関する議論も必要」との意見の人も確認されています。

このように意見が分かれている状況ではありますが、IPv4・IPv6ともにアドレスポリシーとして議論すべき課題自体が少なくなってきていることは、おそらくどちらの立場の人もあまり異論はないだろうと想像されます。これからは、提案の性質も抜本から見直すよりもチューニングのような位置づけのものが多くなってくるような気がします。

実際、今回コンセンサスが得られた提案は、どちらも特定の申請に対する基準の一部の変更に当たるものでした。

またAPNIC34では、開催地の影響もあるのか、南アジアからの参加者が積極的に表に出てきていた印象を受けました。選挙の候補者を見てもそうですし、セッションのモデレータを務めていた方もいて、これまでとは違う顔をちらほら壇上で見かけることができました。

カンファレンスでの発表内容や議論を詳しく知りたい方は、カンファレンスのWebサイト※3をご覧ください。今回からはFacebookやTwitterを通じて写真も紹介されるなど、より臨場感のある情報発信が確認できるようになっています。


次回、APNIC35カンファレンスは、APRICOT2013との併催として、2013年2月25日(月)~3月1日(金)にシンガポールで開催されます※4。また、まだ少し先ですが2015年は福岡での開催が発表されています。

画面:APNIC34の会場となったNagaWorld Hotel & Entertainment Complex
● APNIC34の会場となったNagaWorld Hotel & Entertainment Complex

(JPNIC IP事業部 奥谷泉)


※1 APNIC 34 Conference
APNIC Services
http://conference.apnic.net/34/program/apnic-services/
※2 APNIC 34 Conference
Apnic Member Meeting
http://conference.apnic.net/34/program/amm/
※3 APNIC 34 Conference
http://conference.apnic.net/34/
※4 APNIC 35 Conference
http://conference.apnic.net/35/

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