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ニュースレターNo.54/2013年7月発行

ICANN北京会議および第36回ICANN報告会レポート

2013年4月7日(日)から11日(木)に、中国の北京で第46回ICANN会議が開催され、本会議の報告会を5月23日(木)にシスコシステムズ合同会社東京本社会議室にて、JPNICと一般財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催にて開催しました。本稿では、北京会議の概要を中心に、報告会の様子を併せてご紹介します。

ICANN北京会議報告

第46回ICANNミーティングは、CNNICなどのローカルホストにより中国の北京にて開催され、会議の参加者は約2,600名と過去最多でした。ホスト国である中国からの参加者は発表によると700名と大変多く、ローカルホストの貢献が大きかったと言えそうです。

またオープニングセレモニーにて、ICANN、CNNIC両者の幹部が前に出て地球を模した巨大な球体を囲む一幕とともに、ICANNがアジアで初となる「Engagement Center」と呼ばれるローカルオフィスを設立することが発表されました。オフィスはCNNICのホストにより、北京に設立されるとのことです。

ICANN北京会議での主な議論・動向

申請に対する初回審査結果の発表や、商標データベースの運用が開始されたタイミングということもあり、セッションも計6テーマ設けられるなど、北京会議でも新gTLDが最も注目されるトピックだったと思います。

特筆点としては、申請者向け契約や2013年版レジストラ認定契約(RAA)など、新gTLD関連契約の施行が、一部ステークホルダーからの強い懸念により延期になったこと、また後述する政府諮問委員会(GAC)からの勧告が、北京会議会期中に発表されたことが挙げられます。

また新gTLD以外にも、WHOISやDNS、IPv6に関するセッションも一定数開催されており、新gTLD関連ほど注目されてはいませんが、重要な情報が共有されていました。

ICANN本部機能の地域化に向けた戦略

2012年9月のFadi Chehadé氏によるCEO着任後、ICANNは米国中心から地域に根ざした存在へと変わろうとしつつあります。前回のトロント会議後、「ハブ(Hub)」と呼ばれるICANNの本部機能を持つ拠点を、現在のロサンゼルスオフィスのほか、トルコのイスタンブールとシンガポールに設置し、地域ごとに担当させることが発表されました。また、これらの三つのハブに加え、主要な地域・都市でのローカルオフィスの設立も進められ、南米のウルグアイや北京にEngagement Centerが予定されているほか、東京オフィスの設立も検討されているそうです。

新gTLDに関する主な動向

今回は、商標保護データベースTMCH(Trademark Clearinghouse)と、新gTLDレジストリ向けの契約およびレジストラ認定契約の改定において、一部のステークホルダーが自分たちの意見や権利が考慮されていないと懸念をいだいたことから、大きな議論を呼びました。

TMCHは2013年3月26日(火)より登録が開始されたものの、保護対象基準や商標権身体に対する申立期間などが、引き続き課題として検討が続いています。一方、新gTLD関連の契約については、北京会議での意見も考慮した最終的な改定案が、ICANNのWebサイトで公示されました。

Proposed Final New gTLD Registry Agreement
http://www.icann.org/en/news/announcements/announcement-29apr13-en.htm

Proposed Final 2013 RAA
http://www.icann.org/en/news/announcements/announcement-22apr13-en.htm

レジストリ契約については、改定プロセスの明文化や守秘義務の追記、レジストリ自身が利用するドメイン名に関して予約基準の明確化(100を上限)などが反映されました。RAAについては、本会議での議論結果の反映も含めて、2009年版からの改定点が以下の発表資料にまとめられています。

Proposed 2013 Registrar Accreditation Agreement - Webinar, 6 May 2013
http://www.icann.org/en/about/learning/webinars/proposed-raa-06may13-en.pdf

次に、申請に対する初期審査結果が以下のURLにて公表されました。本稿執筆時点では約300件が審査完了、2013年8月までにすべての審査を終えるとのことです。

New gTLD Current Application Status
https://gtldresult.icann.org/application-result/applicationstatus/viewstatus/

また、申請文字列が発表されたことを受けて、GACから「GAC助言」が公開されました。公共性や消費者保護の視点で課題をまとめたもので、ICANNとしてどう対応していくのか回答が求められています。詳しい内容については、後半の第36回ICANN報告会レポートでの総務省の中西氏による報告部分をご覧ください。

その他の新gTLDに関する新たな問題としては、申請で“Car”と“Cars”等、同一名詞の単数/複数形を異なるドメイン名とすることが判明し、GNSOの一部メンバーが消費者が混乱すると強い懸念を表明しました。これはGAC助言でも触れられ、またCEOのChehade氏も問題視しているとのことで、今後何らかの対応が取られそうです。

最後に新gTLD全体のスケジュールですが、導入開始に至るまで今後は以下のプロセスが予定されています。

  • 2013年6月~ 新gTLD委任にあたっての事前試験:Pre-delegation Testingr
  • 2013年6月中旬~ 新gTLDレジストリ契約の標準契約書提示
  • 2013年9月~ 競合する文字列の処理
  • 2013年10月~ 申請の最終審査
写真:北京会議オープニングセレモニー
●北京会議オープニングセレモニーの様子

新gTLD以外の動向

1. WHOIS

WHOISの目的や在り方自体を見直す検討が続いており、信頼性向上につながる十分な情報収集および公開と、プライバシー尊重とのバランスが大きな焦点になっています。検討の結果によっては、登録代行(プロキシサービス)の廃止等、ドメイン名登録時にユーザーが提供する情報が現行のものから大きく変わる可能性もあります。

2. DNS技術

DNSSECのワークショップは、IETFの立場でのSteve Crocker氏など充実した講師陣と、実践的かつ多岐にわたる内容が印象的でした。動画と資料も公開されていますので、興味のある方はご覧になってみてください。

DNSSEC Workshop
http://beijing46.icann.org/node/37125/

3. IPアドレス関連

ASO Workshopでは、ITU(国際電気通信連合)で以下のトピックスへの対応を検討する動きがあり、既存の運用やアドレス管理を疑問視する声が一部の政府関係者から上がっていることが紹介されました。

  • Issue1: スパム対応
  • Issue2: IPv4アドレスに関する国際ポリシー
    (a)利用されていないレガシーIPv4アドレス
    (b)IPv4アドレスの地域間移転
  • Issue3: インターネットの普及に関する側面

(JPNIC インターネット推進部/IP事業部 奥谷泉)


※ Trademark Clearinghouse(TMCH)
2013年4月以降に順次追加される予定のgTLD(分野別トップレベルドメイン)、いわゆる「新gTLD」の導入に伴いICANNにより実施される商標保護のための仕組みで、事前に自らが持つ商標を、新gTLDのレジストリや新gTLDを取り扱うレジストラが共通して参照するデータベースに登録しておくことで、他者による意図しないドメイン名登録から商標の保護を図ります。

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