ニュースレターNo.54/2013年7月発行
第36回ICANN報告会レポート
ICANN北京会議の開催を受けて、会議での議論の内容を日本のみなさまにお伝えする報告会を、JPNICとIAjapanの共催で以下の概要にて開催しました。
開催概要
日時: | 2013年5月23日(木) 13:30~16:30 |
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会場: | シスコシステムズ合同会社 東京本社会議室(21F) |
主催: |
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) 一般財団法人インターネット協会(IAjapan) |
プログラム(講師敬称略)
1. ICANN 北京会議概要報告
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
奥谷 泉
2. ICANN 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
株式会社日本レジストリサービス
堀田 博文
3. ICANN 政府諮問委員会(GAC)報告
総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課
中西 悦子
4. ICANN GNSO レジストリ部会及び新TLD 申請者グループ
(NTAG)の最新動向/ 新gTLD プログラムの最新動向
株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
遠藤 淳
5. ICANN GNSO 知的財産部会(IPC)の最新動向/
新gTLD の商標保護策に関する動向
株式会社ブライツコンサルティング
村上 嘉隆
6. WHOIS に関する動向
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
前村 昌紀
新gTLD関連の動向に関する報告
北京会議の全体概要を含め、新gTLD関連の話題のうち、北京会議報告の部分で既にご紹介したものは省きますが、JPRSの遠藤氏からはレジストリ部会内でのNTAG設立や、新gTLD関連の契約などについてご紹介いただきました。
また、ブライツコンサルティングの村上氏からはIPCの動向と、TMCHおよびURS(Uniform Rapid Suspension)※の状況について報告いただきました。TMCHについては仕組みとその長所や短所、URSについてはサービスプロバイダーが2組織選定され、2013年7月のダーバン会議にてURSのデモが開催される予定であることなどが紹介されました。
ccNSOの動向、WHOISの動向に関する報告
JPRSの堀田氏からはIDN ccTLDの動向として、現在の暫定的なものではない恒久的なルール作りの議論が収束しccNSO評議委員会で承認されたことや地理的領域の話題、異なる文字であってもある文化や言語圏では意味的に同じと見なされる、「Variant(異体字)」と呼ばれる文字の扱いに関して検討する、IDN Variant TLDプログラムなどについてお話しいただきました。
WHOISに関する検討状況については、JPNICの前村より主にgTLDディレクトリサービス専門家作業部会での議論について報告しました。WHOISに関しては、最近また議論が活発になってきており、上述の作業部会だけでなく、堀田氏よりccNSO、村上氏よりIPCと、ccNSOやGNSOでもそれぞれ情報共有および議論がなされたとの報告がありました。
質疑応答セッション
質疑応答ではいつもとはやや趣向を変えて、発表者の方々と参加者が対面する形の、パネルディスカッション風のレイアウトとしました。はじめに、奥谷から現在ICANNが行っている意見募集などを紹介した後、各発表者か意見を述べ、参加者から意見や質問を受け付けましたが、これまでにも増して活発な質疑応答となりました。
まず、会場からは、ICANNの意見募集でコメントする人が固定化していることや日本からの意見が少ないという意見がありました。それに対して、コメントにはICANNのポリシーや諸課題に精通する必要があり障壁が高いことや、レジストラ関係者などによる業務の一環として以外のコメントが少なくなりがちであること、そもそもICANNがどのぐらい意見を反映しているのか不透明だなどとの意見が寄せられました。また、政府はGAC助言のように積極的にICANNに関わっているが、他のさまざまなステークホルダーからの関与も増やすべきではないかとの発言もありました。
WHOISについては、なぜ今議論になっているのかという質問があり、それに対しては前村から、「WHOISは昔から議論が続いているが、ステークホルダーが多岐にわたるため解決が難しい問題。ただ、新gTLDが利用開始されるとTLDが大幅に増えるため、その前に解決しようという意識が高まっている」という回答がありました。
今回の第36回ICANN報告会も含め、これまでに開催した報告会の発表資料と動画は、JPNIC Webサイトにて公開しています。
https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/
次回第47回ICANN会議は、2013年7月14日(日)~18日(木)に南アフリカ共和国のダーバンにて開催される予定です。
ダーバン会議では、新gTLDにおけるTMCHなどの商標権保護や国際機関などの名称保護に関する話題のほか、WHOISについても引き続き議論が行われる予定です。また、設立から10周年を迎えるccNSOでは、IDN ccPDPの検討が完了したため、ccNSOメンバーおよびICANN理事会での決定に進むものと思われます。
(JPNIC インターネット推進部 山崎信)
- ※ Uniform Rapid Suspension(URS)
- 新gTLDの追加に伴いTMCHとともに導入される商標保護の仕組みで、商標を侵害するドメイン名登録があった場合、申請によりドメイン名の利用差し止めを求めることができます。統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP)による申立と違い、ドメイン名の移転や取り消しは求められませんが、より簡便かつ安価な手続きであることが特徴です。